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第134話

大遅刻しました~~っ!

 

  『スンマセン、ポス。引キ出セタ情報ハココマデナンス。』


 何とまあ、中途半端な。


「でも、そこでミネルヴァ王家が滅んだわけじゃないよな?」

 思い返してオレは問いかけた。


   『・・・ソォッスネ、アノ王家ガ滅ンダノハソノ20年後

   ダッタト情報ニアルンデ。』


 そうだよな。巨人族の長テクルグが語ってくれた王朝の最期とはずいぶん違っている。あれは確かに巨人族が目撃した風景だとオレは思う。なにせ、臨場感が半端なかったしな。


 なら、どうしてそこでジェイルニークスが矛を収めたんだろう。


「そこ迄怒り心頭だったジェイルニークスがやめる、なんておかしすぎる。原因について何か情報はないのか?」


   『ソッスネ・・・手掛カリッテ程ジャアリヤセンガ、名前ガ

   フタツ残ッテマスナ。』


「名前? それもふたつ?」


   『ヘエ。ドウヤラソレラガ取リ成したヨウナ感ジデ。』


「ほうほう、怒り狂った聖獣様を抑え込んだとな? それはまた珍しい見世物じゃのう、ケイン?」

「爺さん、何が言いたいんだ」

「べーつにぃ。お前さんが何かしたとは言っておらんぞ」

 そんな大昔にオレが何するってんだ! 人外にも程があるぞ!


   『ソノ名前デスガネ・・・』


「おお、なんて名だ?」


   『ミスズ・イツナ。ソレト、カルラ・ノウントラ、デヤス。』


   ……それは……その名前は……!



 どうしてあの『レーション(ベントー)自動作成・販売機』の作成者と原案者が出てくるんだぁ!!


「カルラ・ノウントラ? それはミネルヴァ王朝時代の魔導士ではないか!」

 今度はなぜか爺さんが興奮し始めた。


「爺さん知ってたのか」

「つい最近、ミネルヴァ王朝第34代から第35代の御代に活躍した最高級の魔導士であるという資料が、フォルカイス王国の秘密書庫から見つかったらしい」


「へえ、この時期にか」

「おおよ。どうやらお前さんや勇者殿たちから見放されたという噂を何とかしたいようでのう。しきりに喧伝しておるわ」


 何をいまさらやってんだか、あの王国は。 


「あそこは閉鎖的でのう。各国の支援金は受け取るが、自分からは何も動かん。今回の異世界召喚も自分勝手にやって、挙句に逃げられとるからの」 


 いい笑いものにされとるわな、そう言って口元を吊り上げる。その表情は悪の総元締めに見えてるよ爺さん。


「じゃが、もう一人のミスズ・イツナ……じゃったかの? その名は覚えがないのう」

 あれ、そうなの?


「でもな爺さん。あの自販機、じゃなくてベントー自動作成・販売機にも名前があったんだが」

「何、そうなのか?」

「ああ。『作成者 カルラ・ノウントラ、原案者 ミスズ・イツナ』ってなってたな」


「ほう、そうなると、造ったのはカルラ・ノウントラだが、元々の発想はミスズ・イツナだという事かの」

「そうだろうな」


 ついでに言うと、ミスズ・イツナはオレと同じ世界からの人間じゃないかと思ってる。

 だからこそ、ジェイルニークスが引いたんじゃないかな。なにせあいつは聖獣だ。同じ世界の人間なら、オレと同じような特性を持っていてもおかしくない。


「あいつ、匂いに弱いからな~」


 怒り狂っていても多分、一発でおとなしくなっただろう。くくく、見たかったなぁ。


「何か言ったか、ケイン?」

「ああいや大したことじゃない」


   『ボス、コンナトコロデスカネ?』


 暫く黙っていたカトーサンが聞いてきた。


   『御役御免ナラ、チィーット失礼シテモイイデスカイ? 施設

   管理ノメンテヲ再開シマスンデ。』


「ああ、手を止めさせて悪かった。もういいぞ、始めてくれ」


   『ヘイ、始メヤス! 施設は普通ニ使マスンデ心配イリマセンゼ!』


 元気に応えてカトーサンは沈黙する。中級魔動機にとってメンテナンス作業は重いんだろう、オレたちの話し相手はできないってことかな。


「のうケイン、先ほどの話の中でちとわからん部分があるんじゃが」

 爺さんが聞いてくる。


「ん、どの辺のこと?」

「ミネルヴァ王家がもとはこの大陸におった、というのは衝撃じゃった。じゃが、そのあと、中央島? というところに移った、と言っておったのう。中央島とはどこかの?」


 あ、そうか。そういえばそうだよな。


 オレは『世界地図(ワールドマップ)』を起動させて、爺さんを促す。


「爺さん、この地図を見て何か感じないか?」

「うん? これは世界地図じゃろ? 何を……いや待て。これはなんじゃ?」


 指さしたのは……海。丸く抉られた十文字のど真ん中だ。


「最初見たときは世界の広さに興奮しておって気づかなんだが。自然に空いた穴とは思えんな」

「流石爺さん。そうだよ、そこに中央島があった。ミネルヴァ王家が栄えた土地だったんだ」


 そう言ってオレは巨人族から聞かされたミネルヴァ王朝の最期を、身振り手振りよろしく爺さんに伝えたんだ。

 爺さんは目を細めて、オレの話をじっくり分析しているようだった。 


「そうかの……それは見てみたい風景じゃったのう…………」

「ああ、オレもそう思う」


「ひとつの氏族、偉大なる王朝が滅びゆくさま、か。しかも、神が手を貸しておるとは」

「ああいや爺さん、最後のはオレの早合点かもしれないから確定じゃないから!」

 慌てて訂正しつつも、やりかねないだろうなとオレは考えていた。


「ほっほっほ、そう慌てんでもええわい。冗談じゃ。……そういえばケイン、さっき行った魔導機工場じゃったか? どうであった?」


「うん、行って正解だった。もう少しで水の泡になるところだったけどな」

「お、もしかして帝国と遣り合ったのか?」

「それこそ冗談、勘弁してくれ。あいつらが来る直前にロックしたからな」

「ほぉう?」


「入り口の『門番』さんに個人認証へ切り替えてもらったんだ。オレの提示する魔力でしか開けられないんだよ、今は」


 そこ迄説明すると、爺さんの顔に安堵が浮かんだ。


「なるほど考えたの。ならば大丈夫か」

「あれが帝国にわたってたらと思うとゾッとするよ。絶対に出すなって言ってきたからな」

「お前さんがそこまで言うとはの……相当なものじゃな」


 物騒なんてもんじゃない。最終兵器だな、この世界じゃ。


「見てみたいのう、それを……」


 オレの方をチラチラ見ては独り言のように言うが……あれはわざとだ。わかってるぞ!? 


「見せないよ爺さん。あれは出しちゃいけない代物だ。それともなにか? この大陸を崩壊させたいとでも?」


 見せたら最後、錬金術師の意地をかけて同じようなものを造りかねんしな。


「い、いや、そんなこと、は……せぬ、ぞい?」

 ワタワタして視線をそらしてるところを見ると。


 うん、オレの思っていたとおりだ。爺さん、語尾が疑問形になってる(笑)。

 まあいいや。あそこは誰にも使わせないからな!


「……思うことはあるが今は何も言わない。じゃ、またな爺さん」

「待て待て待て、どこに行くんじゃ! この状態を放り出す気か!」


「そういわれてもなぁ……一応危ないところにはカギをかけたし、対策は取ったし。雷光石じゃない、魔虹石もまだいくつかあるから、他国にある『門番』さんにも分けてこようと思ってるんだが」


「ガルマン帝国には行かんのか?」


「行かない。行ったら即警戒されて監視対象にされた挙句、抹殺されるよオレ。第一、タケル・マティスにとってオレはもう死んでることになってるんだから。顔を出したくない」


 古代魔法『空間転送(トランスファー)』で排除した相手が生きてる、なんて、あいつには考えられないだろう。何を企んでるか知らんが、関わり合いになりたくないね。


「お前さんがそう思っていても、そのうち関わることになるじゃろうの」


 嫌な予想をボソッとつぶやくんじゃない。言葉にしただけでも嫌なんだから。


(まずはウーランダ公国に行って、魔石発掘鉱山を見てみるか。それでもってドワーフの国と魔族の国にある場所も確認しないと、な)


 ウーランダ公国へはゴラン山脈を越えていかなきゃならない。ベイレスト共和国に居たなら街道に沿って北上し、ゴラン山脈の一番低い尾根を伝って北側へと降りていく道がある。けど、今オレはそこからかなり離れている。どうしたものか、ねぇ?





 更新が遅くなり大変失礼しました!

読み返して訂正したり、プロットを組みなおしていたら時間が……!

言い訳でしかないですねスミマセン(土下座)

来てくださった方皆様に感謝を申し上げます。


 長くなりましたが、この章も終わりです。

あと1話、閑話を挟みます。

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