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第133話

 遅くなりました~!

 

 要するにだな。


 古代王朝にはいくつもの氏族があって、その時々に力を持った氏族が「我こそ最強!」と名乗りを上げ、王朝時代を築くんだが、他の氏族からの侵攻を受けてあっけなく滅びる、という繰り返しなんだそうだ。そりゃそうだ、同等の力を持った集団がいくつもあるんだったら、争いも熾烈になるわな。


「キュルキュルルル~(やっぱヒト族は馬鹿っちゃね~)」

 オーリィ。オレもヒト族なんだが?

「キュルル~ィ…(まぁだヒト族って思ってるっちゃ~、この生き物は…)」

 どーゆー意味だ、それ!


「キュルルル~~(ヒト族の歴史なんて聞きたくないから寝るっちゃよ~~)」

 あ、こら逃げるな、卑怯者!


 オレの制止もむなしく、オーリィはさっさと影へと入り込む。あンの野郎、今度起きてきたら説教かましちゃる!


   『・・・ボス・・・続キ、イイッスカ?』


「あ、ああ、悪かった。頼む」

   『ヘイ、デハ。』


 そんな中、ミネルヴァ氏族は一風変わった性癖を持っていたらしい。政争にはかかわらず、自らの研究に力を注いでいたようだ。その研究というのが属性魔法と錬金術魔法の統合なんだとか。


「属性魔法はわかるが、錬金術魔法とは何ぞい?」

 爺さんが奇妙な顔をして訊いてくる。


   『アア、今ノ時代ニハナイッスヨ。ミネルヴァノ秘匿魔法

   ダッタラシイッス。』


 属性魔法とは火、水、風、地、光、闇の魔法を表すが、突き詰めて言えば自然現象。錬金術魔法は魔力でもって自然環境では起こらない現象を生み出すものだ。


 例えば熟成するのに100年かかる木の実を一瞬でその状態にするとか、金属と木の葉を混ぜ合わせて全然別のものに変えるとかな。


「つまり……ミネルヴァ氏族は新しい魔法を生み出そうとしていたんじゃな?」


   『ソウイウ事ッス。ソシテ、駄目ニナッタモノヲソノママニ自分達ノ

   傍ジャナイトコロヘ送リ出シテタンスヨ。ゴミハ要ラナイッテネ。』


「それが南の……マルタ・ストルス大陸だったってわけか」


   『ソウデサァ。ツイデニ「廃棄大陸」ッテ名称ニ変エテルンス。』


 なんだそれは。横暴としか言いようがないやり方だ。


   『魔力ト魔法ノ残滓ガ残ッテルト、ソノ地ハ循環ガ狂ウンデサ。

   魔力暴走デ、森林地帯ダッタトコロガ砂漠ニ変ワッチマッタ。』


 元の世界で言うと、原子力発電の廃棄物件みたいなものか。


   『ソレモ結構ナ年数デッセ。カレコレ240年クライ。』


「なっ!」

「そこまで! 氏族の悲願だったのか」


   『ソンナ長イコトヤラレタラ、土地ガ荒レルノモ

   無理ナイッショ?』


「確かに、な……」


   『ソノコトガ世界ノ根幹ヲナス存在ノ逆鱗ニ触レタンデサ。』


「世界の根幹をなす存在って……ひょっとして……?」

 あり得ないかなと思いながらカトーサンに訊いたら。


   『ソノ言イ方ダト、ボスハゴ存ジデスカイ? 聖獣デアル

   ジェイルニークス様デサァ。』


 何とまあすんなりと答えが出てきた。っていうか、あいつかぁ!

「ジェイルが怒ったぁ? あの、能天気お気楽鳥が?」


   『ボ、ボ、ボス! ソ、ソンナ呼ビ名ジャネェデスヨ!

   空駆ケル焔ノ不死鳥、ジェイルニークス様デスゼ!?』


「いんや、あの極楽異世界鳳凰に、その称号はもったいない! お気楽鳥で十分だ!」

「ほぉう、ケインがそう言うとはの。あの大陸で出会うたかの?」


「あれ、オレ爺さんに言ってなかったっけ? こっちの大陸へ戻るために『(ゲート)』魔法を覚えたって」

「それは聞いたがの、誰とは言うておらんぞ」


「そうだった、かな。『(ゲート)』魔法は『虚空(ヴォイド)』の下位魔法になるんだけど、実はその魔法が入ったマギボードを探してくれたのがジェイルニークスなんだ」


「な、な、なんじゃとおぉぉっ!!」


   『・・・ボス・・・大物ダトハ思ッテイヤシタガ、聖獣様

   ヲコキ使ッテイタトハ。言葉ヲ忘レチマイソウデスゼ。』


 なんだか散々な言われようだな、オレ。


 まあ、いくらお気楽鳥だとしても、それは許せんよな。むしろ……


「そんなに長いことよく我慢してられたな、ジェイルニークス」

 そっちの方が驚きだぜ。


「いや、そうではないかもしれんぞ」

 爺さんが額にしわ寄せてるな。あれ、なんか都合の悪いことを言い出す前兆だ。


「聖獣様の感覚は儂らとは大きく違う。ヒト族では240年を長くとらえるが、聖獣様だとどうなのか。案外、森が消えたことで事態を把握したと考えるべきじゃなかろうか」

「あ、そっちの方があり得そうだ」

 そうか、時間のとらえ方が違えばそうなるよな。


「それよりもあいつはマルタ・ストルス大陸の聖獣だろ。よその大陸への干渉はしないんじゃないか?」


   『ア、アイツッテ・・・ボス、サスガニソレハ・・・』


 カトーサン、あいつはそんなもんだぞ?

「大丈夫だ、そんなことで怒りゃしないよ、ジェイルニークスは」


「ほっほっほ。カトーサンよ、こ奴にそんな気遣いは無用じゃ。どうやら親しく付き合うているらしいからのう、ほんに規格外の奴じゃて」


   『デスヨネェ。聖獣様ヲ相手ニ、アイツ呼バワリスルナンテ。』


 なんだか爺さんとカトーサンの同調が高い。しかもオレを貶す方面で!

 グィード爺さん、その言い方やめぃ! いくらオレが規格外だからって……あれ? てことはオレ自身ももう認めてるってこと?


「いやいやいや、諦めたら最後だと思うぞオレは!」

「いい加減に人外だと認めんかい。思い切りの悪い奴じゃなお前さんは」

 もっともそれで生き延びてきたんじゃろうがな、そんなことを小声で付け加えていた。


 あれだな、「西の森」を突っ切ったことを指したんだろう。うん、あれはオレもよくやったと思うよ。ナイフ1本持たされずに森を突っ切るなんて、誰も思ってもみなかったろうしな。それに首都での2年間もあるし。


「それでジェイルニークスが怒ったのか……」

「自らが見守る大陸を荒らされたんじゃ、怒るのも無理はなかろうよ」


 成程ね。ゴミ放置の結果が砂漠化したんだな。まるで元の世界でよく起こった森林破壊の話じゃないか。しかも魔力暴走って……ミネルヴァ王家は何してくれちゃってるのかなぁ!?




「ジェイルニークスが怒ったって言ったけど、実際には何をやったんだ?」

 そう聞くと、


   『エットデスネ、ソノ当時ミネルヴァ氏族、イヤ王家ハ中央島ニ

   移リ住ンデタンス。ソコデゴーレムノ馬鹿力デモッテ、スッゲェ

   宮殿ヲ建テテヤシタガ、焔ノ不死鳥様は一息ノ焔で、ソコヲ半壊

   サセタンッスヨ。』


 そりゃまた豪快な。やることがワイルドだ。


   『城ソノモノハ結界デ覆ワレテタンッスガ、不死鳥様ノ焔ハ何テ

   事ナク貫イテ粉々ノザンガイノミガ残ッテイタソウッス。』


 その上に降り立った焔の不死鳥ジェイルニークスが叫んだそうだ。


 『妾の大陸を壊したものは、即刻この場へ雁首揃えて出て参れ! 出て来ずば、この地を同じように破壊し尽してくれる!!』


「……それだけ聞くとどっちが悪役かわからんな」


 もう笑うしかない状況だ。でも、それほど腹が立ったんだろうと理解できる。なにせ、あの大陸の北側半分が砂漠化してるからな。あそこがかつて肥沃な森林地帯だったなんて信じられそうもない。


「そうなるだけの毒素を流し込んだ、って事か」


   『ソッス。タダノ属性魔法ダケナラソコマデ酷クナラナカッタ

   ンデヤスガ、錬金術魔法ナンテ秘匿サレテタ魔法ガ混ジッテル

   モンデ、元々アッタ土地ノ魔力ガ受入レナカッタンデヤス。


   ソノ結果・・・』


「溜まりに溜まった魔力が暴走して森林が消えた。そういう事じゃな」


   『ソウナンッス。デモ、ソレカラモミネルヴァ王家ハ廃棄し続ケ

   テヤス。

   二度目ノ暴走ヲ起コス前ニ、ジェイルニークス様ガ来ラレタンデ。』


「まぁだ続けてたのかよ、廃棄を」

 あきれてものが言えないな。

「それで城を半壊させられて反省はしたんじゃろ?」


   『ナライインデスガ・・・』



 ミネルヴァ王家、どうやらそれで懲りなかったらしい。


 例の魔導機械工場で造った軍隊特化型のゴーレム達を特攻させたという。

 それをあのお気楽鳥は、翼の一振りで空高く吹き飛ばし、落ちてくるところを焔のブレスで消滅させたという。


 ミネルヴァ王家のお歴々にとって、自分たちが造った製造物に自信満々だったんだろうけど、あっけなく消されたんだな。 


   『長老ハガックリ肩ヲ落トシテ項垂レ、若イモンハ愕然トシタ後、

   ジェイルニークス様ニ斬リカカロウトシテ周リニ押サエコマレテイタ

   ソウデ。ソレヲジェイルニークス様ハ冷ヤカニ見下ロシテカラ、』


『自らが住まう地でなく、よそを荒らしておいて知らぬ顔とは。おまけに抗議すれば妾に武器を向ける。そなたらはこの世にとって害悪じゃ。妾の獄炎で魂まで浄めてくれよう!』


 『ソウ言ッテ大キク翼を広ゲラレ・・・』


 そこまで語って、カトーサンは言葉を途切れさせる。おい、最後のクライマックス、どうしたんだ!






 盛り上がったところで切れてます。

ストレスフルかもしれませんが、ご容赦のほどを。

それでも来ていただいてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] いや~、これはジェイルがキレるのも至極当然ですな。むしろ他の聖獣に事情説明→結託して人族完全滅亡コースは勘弁してくれただけ有情でしょ。
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