第130話
魔導機械ではっちゃけます。
見る見るうちに置かれたパーツの山が崩され、その横に形を成していく魔導機械。スポットライトを浴びてきらりと光るその姿は手元の設計図と寸分の狂いもない。
「キュルッ?(なんでだっちゃ?)」
「ほら、あそこの隅を見てみろ」
指さす先はシャッター横、少し薄暗い灯りがともっているところだ。時たま赤い火が上がっている。
「キュッ? キュルキュル~?(え? 炉が出来てるぅ~?)」
「あそこで微調整してるんだ。さっきからな」
「キュルキュイ~?(よくわかったっちゃね~?)」
オレだって最初はわからなかったんだ。時々ゴーレムが走ってくな~、くらいに思ってたんだが。
土台部分、つまり駆動部とか支柱の接合部分なんかは特に問題なかったみたいだ。作業が持ち手のグリップや座席部分に入ったら頻繁に走り出したんだよゴーレムが。しかもその手にはパーツが握られててさ。
それで興味が湧いて見ていたら、パーツを組込みかけてたゴーレムが頭を振って、下のゴーレムにパーツを放り投げた。受け取ったゴーレムがダッシュ一番、シャッター横へ走り込み、そこにいたゴーレムにパーツを手渡してた。
受け取ったゴーレムが炉の前に陣取り、何回かひねくりまわして炉へぶち込み、引っ張り出してハンマーでトンカントンカン。
何処が変わったのかよくわからんが、それを待っていたゴーレムに放り投げ、受け取ったゴーレムがこれまたダッシュで戻って上へ投げ上げると、組込んで終わり。
さっきからこれを繰り返してんだよね。
で、だよ?
いや、その炉の前のゴーレムがさ……プププッ!
頭にねじり鉢巻きしてるんだよっ! 五分刈り頭の真っ四角なところに!
でもって無表情のまま、ハンマー使ってんだよ!
いったい何なのここ、オレを笑い死にさせたいのかよ!
「キュルルル~~(一体何がそんなにウケたんだっちゃ~~)」
床で腹を抱えているオレをデスクから見下ろして、オーリィが呆れてる。
何とでも言え、この笑いをこらえるのは無理だ!
『マスター? ドウシタンデスカマスター!』
ミストラルの声が上ずってる。画面のフィギュアもアワアワと両手を振り回して(?)謎のアピール中。
オレは何とか笑いを収めた。
「だ、大丈夫、だ。ちょっ、と、くくっ、笑い、の、ツボに、入って……」
『ツボ? トハナンデショウカ?』
フィギュアが首をかしげる。そのしぐさなんなのさ。オレをドハマリさせたいのかよ。
「ああ、深く考えなくて、良い、よ。フウ、スーハー。それより、できたかな?」
『ハイ、完成シマシタ。ドウゾオイデクダサイマセ。』
その言葉とともに部屋の奥、オレの真後ろの床に穴が開いてカプセル式のパイプ?がせりあがってきた。
「キュ~?(これなんだっちゃ?)」
『下ヘ行クタメノ「シューター」デス。』
シューター? あ、昇降機だな。それはいいけど。
「速度制限かかってるのか? いきなりズドン!は嫌だぞ」
『モチロンデス。ドウゾマスター。』
恐る恐る踏み込むと入り口が閉まり、そのまま床が下へ沈み込んでいく。速度は毎秒1.5メートルくらい、まあまあの速さだな。
少し安心していると、移動が止まる。フシュー、と空気が抜ける音で全面の透明ドアが開くと、そこは上で見ていた一番下の階だった。
目の前には、オレとミストラルで練り上げた作品がある。スクーターと、キックボードだ。
自転車にしようかと思ったんだが、あれは乗る人間によってスピードが違う。街中では危険なものになる可能性があるので、今回はスクーターにした。
どちらも女性が乗って安全なように工夫している。当然、速度は出ない。当たり前だろ、この世界の公道で時速40キロ、秒速11メートルなんて動く凶器以外の何物でもないじゃないか。
その代わり、荷台がついている。スクーターは前後に、キックボードは足元に、それぞれ籠が付けてある。買い物の品を入れたり、小さなお子さんだと乗せることも可能だ。
それにスクーターは跨ぐのではなく両足揃えて乗るタイプ。スカートでも安心設計。
キックボードは立ったままなので乗るのは簡単、視界は良好、風を切って進む爽快仕様。ついついスピードが出てしまうかもしれないと、制限をつけてある。
どちらも魔石を使っているから空気を汚さなくて済むし、時々魔力を充填するだけで使える優れもの。
「なあ、こういうタイプの乗り物って古代文明にあったのか?」
『似タモノハアリマシタ。タダ、地面デハナク空中ヲ行クモノデスガ。』
ああなるほど。スカイクリッパーみたいなものか。ったく、どんだけ時代を先取りしてたんだよ。
『今出来タモノモ飛翔タイプニ変更デキマスガ、イカガイタシマスカ?』
なるほど、ここの施設を残しておいた意味が分かるような気がする。
「そうか……いや、今はいいよ。必要となったらまた頼むな」
『ハイッ、オ任クダサイマセ!』
そのまま『ストレージ』に収めようとして……ふと思いついた。
「試乗ってできるのか、これ?」
『ハイ、可能デス。ドウゾ。』
言われてキックボードに足を乗せ、振り向く。
「お前らも乗るか? 籠の中だけどな」
足元にいるゴーレム達に問いかけると、一瞬、ビクゥッとなり、そして。
わらわらと乗り込んできた。
「お、おい、オレの足場は確保してくれよなっ。それと2回、いや、3回に分けてくれ! 重過ぎるぅっ!」
流石にゴーレム30人分は無理だ! う、動かんっっ!
『アナタタチ、何ヲシテイルノデスカッ! マスターヲ困ラセルトハ!』
ミストラルの一喝でゴーレム達が整列し、その場は収まった。が、
『『『『ッ・・・!』』』』
ゴーレムたちのはしゃぎ方がすごかった。
声は出さないけど、手を振ったりバンザイしたり頭でリズムをとったりと、全身で喜びを表してるんだよ。場内を1周して次のゴーレム達を乗せ、また1周する。その間も前の奴らは手をつないで踊り出すし、次の奴らは飛んだり跳ねたりして待ちきれない様子だし。
そうやってとにかく全員を乗せて回り、試乗を終わらせたんだ。
「スクーターはちょっと小さいから、もう少し大きいものを造ったらまた乗ろうな。今度は全員で、さ?」
『ストレージ』に収めながらそう言うと、全員が頷き、親指を立ててくる。オレも同じように返したよ。いいものができた。グィード爺さんにも見せたいな。
そこから再びシューターに乗り込み、上にある部屋へ戻った。
『マスターハ不思議デスネ。ワタクシ達ニモ気ヲ使ッテ下サルナンテ』
ぽつり、とミストラルがこぼした。
「大袈裟だな。自分たちが造ったモノの性能を確かめるのも仕事のひとつだろ? それが楽しいならもっといいことじゃないか」
ミストラルに笑いかける。と言っても、モニター画面へ向けてだが。
「帝国の問題が片付いたら、ここの道具を有効に安全に使えるよう、考えてみる。また待ってもらうことになるけど、今までよりはずっと短くなるはずだ。頼めるか?」
『ハイ! マスターノゴ命令ナラバオ待チシマス!』
フィギュアもコクコクと頷いている、が。あまり高速で動かすんじゃない。首が取れないかと心配になってくる。
「あ、ああ、よろしくな。あと、何か足りないものはあるか?」
軽い気持ちで訊いたんだが。
フィギュアが何だかもじもじしている。そしてオレに両手を差し出してきた。
『アノ、デシタラ魔虹石、イタダケマスカ?』
魔虹石? それって、確かゴラン山脈と……爺さんのいる施設で採れる石だよな。どんな鉱石なんだか見当もつかない。
「えーと、すまん。魔虹石ってのを知らないんだが、それが必要なのか?」
『ハイ。ワタクシタチ魔導機ノ動力源ナノデス。』
え、そりゃ大変だ。
「じゃあ、早いところ集めないといけないな……あ~、そういえばこれは代用できるか?」
『ストレージ』から出したのは雷光石だ。これ、巨人族の長テクルグが『感謝の徴』として半ば押し付けるようにしてきたものだ。使い道がわからずに入れておいたんだが。
「南にある…マルタ・ストルス大陸の物なんだが、どうだ?」
『南?…………アア、廃棄大陸……ッ!』
おいでいただき、ありがとうございます。




