第129話
いよいよ物づくりです。
ケインはその方面の才能……無さそうですが?
『戦争を終わらせたい』そう思って集まっていた意思が、終了した時点で目標を失い、ばらける。そしてそこに、『自分の欲』が入ってくる。
『元の生活に戻したい』ならいいけど、『やり返したい』『同じ思いをさせたい』なんて後ろ向きの『願望』を持つ奴だって必ずいる。いや、前向き後ろ向きの思いを同時に抱えてるのがヒトだから、簡単に割り切れないんだよな。
「権力の『欲』に憑かれると国の最上位を目指し、その地位を得たならさらに周辺への支配を広げていく。
知識の『欲』に憑かれればとことん解明して危ないモノまで見つけてしまう。
富の『欲』なら金をひたすらため込んでいって国の財政を危うくさせてしまうかもしれない。『欲』は歯止めが利きにくいし、調整が難しいんだ」
とくに知識の『欲』は難しいというより無理だ。何故なら権力者がそれを助長させる場合があるから。
しかもそれを国のため、平和のためと言い換えて正当化する。自分の征服欲を満足させるだけなのに、だ。まあ、この辺はオレの偏見も入ってるかもしれないが。
それでも、ここの施設は残された。自爆せよ、というきつい命令付ではあるが、そこに研究者の隠された愛情があるとオレは思いたい。
誰が自分の造ったモノを簡単に壊せるかよ! そんな命令を出せるのは、研究者の努力を何とも考えていない上層部、すなわち国のトップたる王家もしくは統轄者だ。
古代王朝って、オレの思ってたようなきれいなものではないようだ。いやまあ、政治の中心はどうしたって清濁併せ呑まないとやっていけないんだろうけどなぁ。
「ミストラル。キミはいらない子なんかじゃない。ちゃんと必要とされる、大事な存在だ。自分で機能停止なんてするなよ?」
『・・・ハイッ、ハイ・・・マスター・・・ッ』
え、あれ? 泣いてるんかい、ミストラル?
画面のフィギュアったら、白いハンカチを出して鼻をかんでいるよ!?
「キュルルキュルル~♪(相変わらず機械たらしだっちゃ~♪)」
相変わらずってどういう意味だ、オーリィ!
確かに戦争ってのはいろんな意味で発展を促し、社会を進化させるのは間違いない。でも、ここの神ってそういう事嫌ってなかったかい?
ここへ召喚された時も道具なんかは一切持ち込めなかったからなぁ。
ならば、なぜそういう物を開発させたんだ?
…………………ん?
ひょっとして、とオレは思った。神の誤算、ってやつなんじゃなかろうか。
開発させて、戦争して。古代王朝一色になった時、「これはヤバい」と気づいたけれど後の祭りだった、とか。このまま進めばかなり進化した文明になってしまう、と焦ってしまった。実際凄く完成されたものだったようだしな。
どうする、と思っているうちに……古代王朝はナニカをやらかした。今までの流れから考えて、生命、それも「魂」関連のナニカ。それだけは許せない神がキレて古代王朝に見切りをつけた……これが真相! とは思わないが、近いのではないだろうか。
なんにせよ、ガルマン帝国にここが使えなくなった、それが一番だな。
『マスター、コレカラワタクシハドウシタライインデショウカ?』
ふ、と、思考の渦の中から戻ると、ミストラルの声が聞こえた。
そんな、幼児が迷ったような声で訊くなよミストラル。やめろフィギュア。その釣り縄と足元の台を消せ!
「とりあえず、今のところはそのまま静かにしていてくれ……とは言え、長い間稼働していないんだ、何か作ってみるか? 確認の意味で」
『ッ! ナ、ナニヲ造リマショウカッ!?』
軽く言ったつもりなんだが、凄い食いつきだな、ミストラル。
画面のフィギュアなんか、待ちきれなくてジャンプしてるぞ、おい。
「じゃあ、最初のNO.20までのツールを使ってみよう」
『ハイッ!』
一転してフィギュアが走り出し、そのまま画面から消える。と、作業用の画面にフィギュアが現れ、何やらやっさもっさと引っ張り出してくる。白い大きな紙か、それ?
あ、なるほど。それに設計図を描けってことだな。フィギュアが大きくうなずいてるから正解か。
「キュキュル……(やる気満々だっちゃ、この機械……)」
呆れたオーリィにナッツを渡しながら、オレはミストラルが設計用の画面を立ち上げるのを見ていた。
危ないものを造る気はないから……自転車とかスクーターボードかな。自転車も前か後ろを二輪にして荷物が入るようにして。速度も時速20キロを超えない安全設計で行けば大丈夫だろう。
ミストラルの必死とも思える気合に引きずられ、オレも画面の設計図を食い入るように見つめる。
「キュルルル~~(このヒトも夢中だっちゃ~~)」
肩でドン引きするオーリィをよそに、俺とミストラルは設計図を見ながら細かいところを詰める。これ、DIYというよりプラモデルをいじっているようだ。昔を思い出して楽しい。
ああだこうだと意見を出し合い、完成した設計図をまじまじと見つめる。うん、オレにしてはまともに出来てるな。
『マスター、コレカラ組立テニ入リマス。』
「おう、期待してるぞ」
『……! ハイッ、オ任セクダサイマセッ!』
画面のフィギュアが力こぶを見せてくる。うん、かわいいけど、やめような?
「キュルキュルル……(もうアチシ知~らないっちゃ……)」
なんか遠い目でつぶやくオーリィ。失礼な、オレとミストラルの合作に目をむくがいい!
「見てろ、凄いもん造ってやる!」
「キュウキュ…(目つきがアブナイだっちゃ…)」
肩でドン引きしているオーリィを捕まえてこまごまとした説明をしていると。
シュー……カチン……
聞きなれない音が響く。どこかと探していたが見つからず、ふと目を前に向けると。
「おお、窓だったのか!」
前面の、壁だと思っていた部分が真ん中から割れて両側に引っ込み、大きな窓になった。近づいてみると二重ガラスになっていて、かなり頑丈そうだ。
続いて、だだっ広いだけの下の空間に灯りが付き、それが特定の位置を明るく浮き出す。
それは通路の真下にあるシャッターが下りた入り口だ。
ガコン キキキキキ…………
今まさにそこが開きだしていた。
半分ほど開いたところで、奥から何かがわらわらと飛び出してくる。
「うぇっ? な、なんだありゃ?」
『大丈夫デスマスター。アレハ作成ヲ手伝ウゴーレム達デス。』
よくよく見れば、確かにゴーレムだった。
マルタ・ストルス大陸で会った巨人族と同じ肌で、身長が小人族くらいしかない。
彼らはそれぞれが何かのパーツを持って出てくると床にそれを置き、またシャッターの奥へと走り込んでいく。巨人族の剛力と小人族の敏捷さを併せ持ったような感じだ。
総勢30名ほどが何回か往復して持ち出したパーツの山がふたつ、目の前にできている。それを囲んだゴーレム達。灯りが集中すると一斉に山に取り付き、組立を始めた。
「おお~、凄い連携だな!」
「キュキュ~~!!(見かけによらず早いっちゃ~~!!)」
本当に素早い。ゴーレムがペアで動いている。ひとりがパーツを押さえ、もうひとりがパーツをナットでキュッと締める。そしてすぐに次のパーツを取りに走る流れが誰も同じで美しい。
順に組み立てて高くなってくると、ペアごとに肩車で作業を続ける。やがて下のゴーレム同士が手を伸ばし肩を組んでスクラムを造り、その上を別のゴーレムが移動しながらまたスクラムを組んで、高いところの作業をするゴーレム達を支えるようになった。
なんだこれ、器械体操の作業員て。
完成品が楽しみだけど、ゴーレム達のスクラムも見ていると飽きないな。
体調を崩して更新が遅れました!
実は今日も監視付きでPC使ってます^^;
更新が終わったら即、ベッドへ直行予定……(とほほ)
それでも来てくださった方、待っていてくださった方に
感謝、感謝です!




