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第128話

 ちょっと屁理屈っぽい章になりました。

あくまで、自分の考える理屈です。他意はありませんので……

『門番』にしろ『水分補給魔導機』にしろ、古代文明では疑似人格を持った魔導機が当然だったんだろうか。


 ……ならばなぜ名前がない? 


 ヒト族にもいろいろあるけれど、魔導機の作成に関わるヒトなら、大なり小なり発想力は持っていたはずだ。


 だが悲しいかな、発想がよくてもあまりに奇抜で絵空事になりやすい。魔導機の疑似人格は、ヒトのイメージしたものを分析検討して奇抜な部分を排除もしくは修正し、現実へ近づけるような補佐を行うためにつけられたと考えられる。


 それだけヒトに密着する魔導機なのに、機械番号や「工具」とは。

 しかもこの「工具」、感情表現出来るんだぞ?


 今まで凄く発達した超文明だと思っていたけど……古代文明、どこか歪んでいるような気がする。


   『・・・ター? マスター、大丈夫デスカ?』


 ミストラルの呼びかけにハッとする。


「あ。すまん、ちょっと考えごとに気を取られちまった。それでミストラル。このタイプのサンプルも当然、あるんだよな?」

 その問いに元気よく答えが返る。


   『ハイ、勿論デス! タダ系統立テテハアリマスガ数ガ多イタメ、

   選定ガ困難ダト思イマスガ』


「そうだろうな。だったら一番シンプルなものを幾つか見せてくれ」


   『了解イタシマシタ!』


 声が響くと作業用のモニター画面に6つのサンプルが浮かび上がった。


 思った通りだ、これは……軍隊特化、都市攻撃特化の魔導機だ。


 どのサンプルも手に武器や盾を持ち、足回りはキャタピラーかクローラー。そして両肩にあるのはミサイルもしくはレーザー発射機だろう。凶悪な奴は全身にトゲをはやしている。あのまま街に突っ込んでみろ、城壁どころじゃない、建物がすべて中にいる人間もろとも崩壊していくだろう。人的被害が半端ないタイプだ。


「キュウゥ~~(おっかない機械ばっかりだっちゃ~~)」

「確かに、な。これが見つからなくてよかったよ」

「キュッ!(そうだっちゃ!)」


   『マスター、先程オッシャッテイタ敵性勢力ノ事デショウカ?』


「ああそうだ。ガルマン帝国っていう戦争大好きな国でさ、アブナイモノばかりを造っているようだ。ここの魔導機があそこに渡ったら目も当てられないことになってたな~」

オレの言葉にフィギュアが項垂れる。え、今の言葉のどこに反応したの!?


   『・・・マダソノヨウナ情勢ガ続イテイルノデスネ。

   ヤハリワタクシハ造ラレルベキデハナカッタト、言ウコト

   デショウカ・・・』


 お、おいおい、なんか物騒な言葉を吐いてるぞ!

「何言ってんだお前は」


   『最後ニココヘ来ラレタヒトガソウ言ワレタノデス。


   ”対立していた部族を制圧するために造られたものを残すことに

   いささか不安を覚える。もしまた同じ事を求められたなら、即座

   に機能を停止せよ”


   ソノヨウニ命令サレマシタ。』


 フィギュアはうなだれたままその場でうずくまり、膝を抱え込んで震えている。


 なんちゅう鬼畜なことを言ってるんだ、ここの造営者は!

 いやまあ、それは置いておくにしてもだ。ミストラルを落ち込んだままにしちゃいけないな。


「だから、それを求めさせないようにここを個人認証にしたんだよ」

 フィギュアが顔を上げてオレを見詰める。


   『・・・エ、ソウ、ナンデスカ? マスター。』


「そうさ。帝国が見つけたらかなりの確率で造らせたと思うぜ、こいつらを」

 画面に映る様々なパーツに手を振る。

 フィギュアがそれぞれのパーツに手をやり、なでている。そうだな、ミストラルにしてみれば自分の分身みたいなものだろう。


「今の時代、これに対抗できるところなんてどこにもないよ。超文明の遺物、オーパーツ、古代文明の奇跡。何とでもいえるけど、これは今の世に出しちゃいけないものだ」

 その言葉に、フィギュアが再び座り込む。本当に感情表現豊かな奴だ。


   『デハ、ヤハリワタクシハイラナイ物、ナノデショウカ・・・?』


 ミストラルの声が小さくなっている。画面のフィギュアも姿が揺らいで見える。


「そんなわけないだろ?」

 オレはモニター画面に笑いかけた。


「確かに最後の武器や防具のパーツは出すべきじゃない。それはわかるな?」


   『・・・ハイ』


「でも、最初に見せてもらったものは、今の時代でも重宝するはずだ。管理はしっかりしないといけないだろうがな」


   『・・・・・・』


「ミストラル。お前がここで造ったものは管理できるんだろ?……分解も、消滅も」

 オレの問いかけに、揺らいでいたフィギュアの姿が元に戻り……そのまま硬直した。


   『! ナ、ナゼゴ存ジナノデスカッ!?』


「キュルッ?(分解? 消滅もできるだっちゃ?)」

「そうでなきゃ、ここの造営者があんなこと言わないよ」


 ここを統轄する者が『即座に機能を停止しろ』とミストラルに言ったなら、それで全てが片付く問題だったんだろう。


「機能停止はわかる。でも、それまでに造られたものは残るよな?」

「キュ~(そうだっちゃ~)」

「なら、機能停止をすることで造られたものまでが影響を受けるんだろうと思ったんだ。違うかな?」


   『・・・ハイ、仰ルトオリデス。』


 ミストラルの声がしおれている。そりゃそうだ、造ったモノがすべて機能停止で消えるんだからな。


「自分の能力がすべて出せないってのは辛いと思う。その気持ちが全部わかるとはとても言えないけど、それでもオレはミストラルにお願いする。武器や防具はお前の中で眠らせておいてくれ」


   『マ、マスター・・・機械ノワタクシニオ願イ、トハ』 


 硬直していたフィギュアが手を頭にのせ、大きく口を開けてこっちを見ている。「ガァーン!」って吹き出しを傍につけたらぴったりだな。


「今、あれが出てくると各国のバランスが狂う。手にしたものが一人勝ちするんだ。それは独裁を生み、世界を腐らせる。……古代王朝のように」


   『ッ!』


「キュルッ?(そう、なんだっちゃ?)」

「正解かどうかはわからない。でも、そういう一面もあったと思うんだ」


 単体民族がすべてを支配し、治めていく。それもひとつの平和な世界だろう。


 でも、それだって永久には続かない。平和に慣れすぎて有難みを忘れてしまうからだ。

 生きることに精一杯の時は気にならない小さな不満が噴き出してきて、縺れ、捩れ、絡み合って……そして最後に、誰も望んでいない結果へと押し流してすべてを駄目にしていってしまう。


 マルタ・ストルス大陸にいた巨人族だって負の感情にとらわれていたじゃないか。


「ヒトに限らず、考えることのできる生き物が持ってる意見はそれぞれだ。決して統一された同じものではないとオレは思う」


   『・・・ナゼ、マスターハソノヨウニ思ワレルノデスカ?』


 遠慮がちにミストラルが聞いてくる。

「だって、その考えに『自分』が入ってくるからさ」


   『「自分」・・・?』


「キュルキュルッ?(自分が入る、ってなんだっちゃ?)」

 フィギュアだけじゃなくオーリィも首をかしげている。そんなに難しいかな?


「目標は同じでも、そこに到達するまでに『自分の欲』が含まれちゃうんだ」


   『欲、デスカ・・・』


「『欲』もしくは『願望』かな。『あるといいな』『こうなってほしい』『いらないから消えて』……大きなものじゃなくて、もっと身近な願いが加わるんだ」


 例えば『平和』。世界平和とまではいかないけれど、誰だって戦争は嫌だろう? それが隣で起こったら『やめてくれ!』って思うだろ?


 でも、その『戦争』が遠くだったら? そしたら、『自分に関わりないならそれでいいや』って思うはずだ。『平和』の規模が小さくなって周辺だけが平和なら、と考える。それは『自分の欲』『願望』が入っちゃったからなんだ。


「キュルルッ!(なるほどだっちゃ!)」

 フィギュアも大きくうなずいた。


   『ソウイウ・・・意味ナノデスネ・・・』


「問題の素…『戦争』との距離によって『願望』は違う。だから同じ考え方はないんだ」 


   『・・・・・・』


「そうかといって全く正反対なものも少ないはずさ。よく似た考えの者が集まって一つの国を造り上げる。それはそれで間違っちゃいない。でも」


   『?』


「『欲』は……膨張する。それこそ限りなく」

 そう。これが一番の問題なんだ。






更新が遅くなりました! 読み直してたら時間が……^^;

それでも来てくださった方に感謝申し上げます。

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