第126話
ニアミス、無事に逃れました~。
去っていく背中にオレは『鑑定』『看破』をかける。今、魔力感知器は働いていないからな。
名前 グラドール・ブリオン
職業 魔道具製作省 第2部隊長 (タケル・マティスの私的秘書)
POW 375
STR 226
VIT 189
DEF 361
MGP 116
MGR 109
INT 292
LUK 78
EXP 112
スキル 隠ぺい 忍び足 聞き耳 暗殺 回復(小)(中)
短剣術 抜刀術 鞭術 暗器術 体術 捕縛術
※ 注意事項…魔道具製作省筆頭チーフタケル・マティス
に心服中(すでに洗脳の域)
なんだなんだこのスキル一覧~~っ!
完っ全にアサシン一直線のスキルばっかり! しかも、あのタケル・マティスに心服してるなんてまさに狂信者でしかない。なんつー危ない奴なんだ。
個人情報だからと思って今までは『鑑定』『看破』をあまり使ってなかったけど、これから出会うガルマン帝国の人間に対しては遠慮する方が危ないな。
自分の身の安全を図るために、使いまくろう。
『索敵』と『マップ』を駆使してオレは彼らが移動する様を見続ける。先行する光点は子爵を追いかけた者たち。その点は灰色となった点を囲んでいる。
「あのでっぷり子爵、死んでるな」
「キュルッ?(そうなんだっちゃ?)」
「ああ。さっきの咆哮聞いたろ? あれはこの辺じゃ珍しい凶暴なオーガグリズリーだ。あいつに出会ったらまず助からん、とまで言われている」
魔獣としても上位で、森の中を異常な速度で走り抜ける。風魔法でも使っているのではないかと疑われているのだが、いかんせん生きたまま捕まることがないので調べようがない。
手が4本あり、その指すべてに長く伸びた爪がある。普段は手の中に隠しておき、獲物を見つけると驚異の速さで追いつき、その凶悪な爪を見せつけて殴り倒すのだ。そして生きたまま、その内臓を食い荒らすらしい。
「キュキュ~~!(それはすごいっちゃ~~!)」
「この話も、偶然通りがかった冒険者が伝えてくれたんだ」
その冒険者は『隠密』が得意だったらしい。仕事を完了させて早く戻ろうと森を突っ切ったら、オーガグリズリーの食事中に遭遇したんだとか。
「角が立派なフォレストディアーだったんだけど、まだもがいているのを押さえつけて、腹を裂いて食べていたんだって」
「キュ~~ィィ……(聞きたくないっちゃよ~~……)」
オレも見たくないな、そんな光景。
そう思いながら『マップ』を見ていると、灰色の点を囲んでいた光点が後発組と合流して『索敵』の範囲外へと移動していった。特定できるナニカを持って行ったとみるべきだろうな。
いや~こんなところで帝国の派閥争いを見るなんて。
何やってんだ帝国は。
「やっぱ腐っていたか。権力ってのは毒だね、もう」
「キュル……キュ~(ヒト族って……わからない争いするんだっちゃ~)」
「それには同意する」
本当に、権力を手にして何が面白いんだろうかね。オレにはわからん世界だ。
とと、そう言ってる間に光点が『索敵』の範囲から完全にいなくなったな。これで魔法を使っても大丈夫だろう。
オレは『陰伏』を解除して『門番』の前に行くと、もう一度『門』を使って打ち込んだ。
『登録サレタ個人ヲ認証シマシタ。オ帰リナサイマセ、マスター!
入場ナサイマスカ?』
「あ、ああ、開けてくれ」
『了解シマシタ。施錠ヲ解除シ、入口ヲ開放シマス。
オ入リクダサイマセ。』
「……わかった」
なんだか『門番』の対応がいやに熱をもって聞こえるんだが。気のせいか?
「キュルルキュルル~♪(ま~た機械をたらし込んだっちゃ~♪)」
「どこがだよ」
「キュルルル~~♪(本人が一番わかってないっちゃ~~♪)」
「……」
何だろ、この理不尽感。オレ、笑われるようなことしたかぁ?
もやもやする気持ちを抱えながら門をくぐり、短い傾斜のある廊下をたどる。その先にあるのは、見覚えのある機械。
「カルトの森の魔器開発研究所とほぼ同じだな」
「キュキュ?(あの時のショーコーキだっちゃ?)」
「そうだな。やはり施設は地下に作られているんだろう」
それだけ大規模なものかもしれない。何を見ても驚くまい、とオレは自分に言い聞かせた。
小部屋に入り、ボタン操作をする。
ゴウゥゥ~~ンン…………
聞き覚えのある音と浮遊感とともに、オレは地下へと潜っていく。
「キュウキュ…(こっちの方が深いだっちゃ…)」
「わかるのか?」
「キュルキュルキュル~?(土魔法ほどはっきりわかんないけどそれでもね~?)」
闇魔法ってそんなこともわかるのか。驚きだよ。
昇降機の作動時間は確かに長かった。揺れもなかったんだけど、オレは周りから土の圧力(?)みたいなものを感じていた。
シュウゥゥ~~…………
「やっと着いたか」
「キュルキュ~(長かった~だっちゃ~)」
オーリィと顔を見合わせて思わず言い合う。乗り心地はいいけど、狭い箱に入ったまま、てのはどうしても閉塞感があるんだよな。
昇降機から出るとそこはもう行き止まりで目の前には腰の高さの手すりがある。
「え?」
視線を横に走らせると、ヒトが二人並んで歩ける広さの通路が左右に伸びていた。片側が壁、反対側が手すりとなっているそれはフロアー全体を一周しており、規模が違いすぎるけれどまるで。
「体育館、か、ここ?」
「キュルッ?(タイイーク、カン?)」
「元の世界で運動するための施設だよ。にしてもここ……何もないな」
がらんとした空間がやけに寒々しい。手すりからのぞき込めば、下の床までかなりの距離がある。これだけの空間がなぜあるのだろう。
考えこんでいるオレにオーリィの声が届く。
「キュルルッ!(あっちにドアがあるっちゃ!)」
ついでに左の耳が引っ張られる。つられて目をやると、角を曲がった付近にドアらしき切れ目が見えた。
「あそこならなんかわかるかもな」
通路を歩いてドアに近づいたが取っ手が見当たらない。ええいままよ、と手をかざす。
シュルルル・・・
軽く滑る音がしてドアが開いた。
「これも感知式か」
中に入ると右側に大きなデスクと椅子がある。デスクの前は壁。
(これじゃ何も見えないけどな……?)
不審に思いながらも椅子に腰を下ろす。
すると、目の前のデスク中央がカパッと開いて立ち上がる。24インチサイズの大きなモニター画面だ。
そこに数字が表示される。
「NO.1から20、ね……何も説明がないん」
『音声登録完了イタシマシタ。疑問ガアレバ、オ答エシマス』
「うおっ、びっくりしたぁ!」
「キュッ!(ビックリ!だっちゃ!)」
突然の声にオレもオーリィもひっくり返るほど驚いた。見ると、画面の隅に小さなフィギュアが出てきている。性別は……わからんな。それがペコッと頭を下げる。
『失礼イタシマシタ。ワタクシ、西域地方ニオケル魔導機械工場ノ
内部機構を統轄スル、魔導機作成工具SRT341MTLト申シ
マス。魔導機作成ノタメノオ手伝イヲスルタメニ配備サレマシタ。
ナンナリトオ申シ付ケクダサイ。』
「へえ、お手伝い、か。じゃ教えてくれ。魔導機の作成ってどうやるんだ?」
『オ答エシマス。
ソノ画面ニ表示サレテイルNO.1カラNO.20ニハ、魔導機ノ
部品ガ納メラレテイマス。ソレラノ形状、特性、使用方法等ノ情報
ヲワタクシカラオ伝エシ、作成目的ニ適合スルヨウ調整スルノガ、
ワタクシ魔導機作成工具SRT341MTLノ役目デス。』
「な~るほど。つまりあんた……」
『魔導機作成工具SRT341MTLトオ呼ビクダサイ。』
「魔、導機作成……?」
『長ケレバ「工具」デ結構デス。』
「工具って……ほかにないのか、呼び名」
『アリマセン。』
絶句した。あの「カトーサン」の話の通りなら、敬語交じりで話せるって、上級魔導機に違いないだろ? それを「工具」って……。
オレはしばし考えこみ、
「決めた。あんたの名前は『ミストラル』だ」
ミス(M)ト(T)ラル(L)。こじつけに近いがな(笑)
…………「カトーサン」と同じつけ方だって? それで悪いか?
オレに名づけのセンスなんてあるかよっ。
おいでくださって有難うございます。




