第125話
帝国の闇の部分です。
「よし、ここがさっき大きな魔力の発生を感知した場所だ!」
前に見たことのある魔力探知機をかざしている男の後ろからぞろぞろと制服組が現れる。
ん? 3人が一組、なのかな? 制服の色が違うぞ。
一番後ろから来た男が偉そうに声をかけた。こいつ、いかにも支配階級という匂いを振りまいている。
「入り口の施設が稼働したのか?」
「いやわからん。すでに魔力は消えているし、反応そのものがない」
「なにっ? ということは壊れているのか?」
「それも判断できないな」
探知機を持つ男に偉そうな男が鼻を鳴らす。どうやらチームは一丸、ではなさそうだ。
「まあいい。お前ら、『魔力集中』3倍で、塊にしてぶつけろ」
「はっ!」
(『魔力集中』? どうやって集めるのやら、実際を見れるとは儲けものだな)
(キュルキュイ……(このヒトお気楽すぎるだっちゃ……))
オーリィのぼやきをよそに、オレは目を凝らして見つめる。
3人が石を中央にする形で陣形を組み、手のひらを突き出して集中し始める。すると、手のひらが徐々に光りだし、やがてお互いが引き合うように中央へと動き出した。フヨフヨと頼りない動きであったものがやがて中央で固まり、ぎらつく光を纏う球となる。
「行けっ!」
リーダーの号令とともに、球が石の表面ではじけ飛んだ! が。
「う、動かない、だと!」
石の表面には何ひとつ変化がなく、傷もなかった。
「馬鹿なっ! どういうことだ!」
「わ、わか、り……ませ、ん……」
リーダーの怒号が響く中、『魔力集中』の3人は座り込んで息を弾ませるばかりだ。かろうじて一人が声を出す。
「手を、抜いては、おりま、せん……われわ、れは、全力で、集中、しました…」
「じゃあ、なぜ開かないんだ! あっちの魔石採取所はうまくいったんだぞ!」
「だから……わからない、としか」
「くそぉっ! 場所はここで合っているのに、なぜっ! あそこの魔石はもうすぐ掘り尽くされそうだというのに! 一刻も早く新しい採取所を見つけねばならんのだ!」
威厳も何もなく、リーダー(?)は地団駄を踏んでいる。探知器を持った男たちは何も言わず、その様子を冷ややかに見つめているだけだ。
「お前らっ、魔法省ではトップクラスだとか抜かしていたが、この有様はなんだ! 扉も開けられないポンコツめら!」
「……」
「せっかくワシが出張ってやったというのに、結果も出せないとは! ふん、これが魔法省の現状とはなっ。皇帝に進言せねばなるまいよ」
「…………」
「そもそも、ここがそうだという確固たるものはないんじゃないか? お前ら魔法省が勝手に作った地点に違いない! おおそうだ、これも皇帝に伝えねば!」
「…………」
「何も言い返せないようだな! ははっ、化けの皮がはがれて悔しいか、うん?」
「閣下」
それまで黙って聞いていた男が手に持った何かを差し出して声をかける。
「これが何かわかりますか?」
縦長の黒っぽい石に似たそれ。男はリーダー(?)の正面へまっすぐに立てる。
「それは……魔法省の中で使われている通信器具だろう? そんなものを見せてどうすると……っ! まさかそれでっ!」
「ええ、今までの会話すべて中央統合庁へ行ってますよ、サリモニア子爵」
「!!」
「不思議に思わなかったんですか、ここへの出張命令に? 今まで内勤しかしなかった子爵様が、いきなり古代遺跡の捜索隊に加わるなんて無茶、誰が聞いてもおかしいと思うはずなんですがねぇ」
「そ、それは、ワシが有能だから、選ばれたのだと!」
「へえ、自分で自分を有能だと褒めちゃうんですか?
…………………………馬鹿かあんた」
おちゃらかした口調から一気にトーンが下がる。と同時に、男の体から殺気が漏れ出してきた。
「ひっ、な、何を」
「じつは内務省で使途不明金が出てきたんすよ。元をたどるとそれが資料管理課、あんたがいるセクションからだと判明しましてね、調査してたんですよ秘密裏に」
「ち、調査……?」
「ええそうですよ。面白いことに、別々のところで散見された使途不明金が、全部最終的にひとつに集まりましてね……サリモニア子爵。あんたのとこへ」
「くっっ……」
「あんた、最近羽振りがいいですな。その恰好いくらですか? 部局長を接待した店が超有名なの知ってますよね? その資金源はどこですかい?」
「わ、ワシの資産から出ているんだ、詮索されるいわれはないっ!」
「……あんたんとこの執事、ガヴィエルだったっけ。彼がすべて話してくれたよ」
「!?」
「もっと上の地位を望んでるんだって? 局長クラスの。はっ、馬鹿言ってるんじゃねぇよ。能力のない奴が就けるかってんだ」
「儂を侮辱するのかっ、たかが研究員が! 皇帝陛下にその無礼を伝えさせてもらうぞ!」
「ああ、そんなのはいいから。これから直接聞いてもらうよ」
そう言って黒い板……オレに言わせるとスマホだな……をちょんちょんと突いて子爵に見えるように突き出す。
「な、なんの真似……っ」
『我が忠臣たるナシジェル・ロクディ・サリモニア子爵』
「そ、そのお声はっ!!」
途端に顔色を変えて平伏するリーダー(?)。てことは。
『余の期待に応え、多大なる資金を集めてくれたこと、礼を言う』
「は、はっ、お言葉ありがたくっ! 陛下のためならこのナシジェル、万難を排してでもご期待に添いましょうっ!」
『うむ、その忠義うれしく思う。早速に次の仕事を伝えよう』
「はっ!」
『その身、帝国に捧げるがよい』
「……は?」
『資金調達はそなたの尽力によって、目標額に達した。故に、次なる仕事……罪人として罪を償うがよい』
「こ、皇帝陛下っ! そ、それは、わたくしめに、死ね、と?」
『そなたの罪は帝国の法に則って裁かれる。それが死罪にまで結びつくかどうか、余にはわからぬが。判事長にでも訴えるがよかろう』
「陛下っ! 陛下のお為にわたくしはっ、わたくしは資金を集めましたのにっ」
『法を曲げてまで集めよとそなたに命じたことはないがな?』
「そんなっ!」
『余も忠臣を失いたくはないが、罪を犯しているものを庇う事は許されまい。誠に心痛むが』
「…っ!」
『それにしても部下に法を犯すものがいたとは、不覚であった。これから更に身を慎まなくてはなるまい。グラドール、あとの処置をそなたに任せる。後々の憂いなきように計らえ。良いな』
「陛下の仰せのままに」
これは板を構えている男が発したものだ。こいつグラドールっていうのか。
「へ、陛下っ、お慈悲を、お慈悲をおぉぉっ!」
サリ、なんだっけ子爵が泣き喚いたが、通信は切れたようだ。
板をしまい込み、グラドールが宣言する。
「以上、聞いての通りだ。ナシジェル・ロクディ・サリモニア子爵殿、公金横領、公文書偽造等の罪名で捕らえる。これ以降、異議申し立てや抗議は判事長あてにしていただきたい。受け入れられるといいですな子爵殿。おい、お連れしろ」
「「「はっ」」」
指示に従い、後ろの3人が前に出るが、その前に子爵が跳ね起きる。凄いなあの反射神経、這いつくばった状態から一気に立ち上がったよ。
「み、認めんっ! 陛下が儂を見捨てるなどと認めぬぞっ! 今から直接陛下に伺ってくるっ!!」
言うが早いか、ポケットから小さな紙を出して唱える。その体を光が覆い、何らかの効果を与えたようだ。
そのまま子爵はやぶの中へ飛び込み、走っていく。草を分けていくざわざわ音と何やら喚いている声が遠ざかるが、男たちに慌てた様子がない。
「ふん、『身体強化』の魔法陣の護符を持っていたのか。それでああも強気でいたんだな」
子爵が捨てていった紙切れを拾い上げ鼻を鳴らすグラドール。
「チーフ、どうしますか」
「ん、もう少ししてから後を追え。見てるだけでいいさ、どうせ……」
言葉半ばに、子爵が走り去った方向で悲鳴があがった。同時に魔獣の雄叫びが悲鳴を消し去る勢いで響き渡る。
「やっぱりな。あのお馬鹿貴族、『魔獣除け』を持たずにここまで来てるとはな」
くっくっく、と抑えきれない笑みをこぼす。
「行け。魔獣の邪魔はするなよ? で、何かしるしを持って来い。服でも飾りでもいい、あのお馬鹿貴族と特定できるナニカをな」
「「「了解!」」」
3人が茂みに割って入るころ、『魔力集中』を行った者たちが立ち上がっていた。
「チーフすみません。開けることができませんでした」
3人が頭を下げるのに、軽く手を振る。
「いいや、これも想定内だ。なにせ相手は古代遺跡だし、俺たちの魔力で開くと考える方がイカレてるんだよ」
「ですが、前のところでは成功しましたよね?」
「あそこはボロボロになってたからな、壊れていたのかもしれん。さあ撤収するぞ、先行チームと合流して帰還する!」
「「「「「「了解!」」」」」」
隊列を組んで茂みへと入っていく一番後ろにつきながら、グラドールがふと振り返る。
「しっかし、何で開かねぇんだここの扉は。カルトの森も駄目だったし……誰かマティス様の先回りをしている、なんて事、無いよな?」
一瞬固まったよオレ。次の言葉が聞こえるまで。
「いや、それはないな。あの方の知識は我らが計ることなど無理。そのような手合いが何人も居てたまるものか。考えすぎだ……だが、それでも嫌な予感がするぜ」
首を振り、気を取り直してグラドールはその場から立ち去った。
コロナの予防接種で熱が出ちゃいました!
何度測っても38度台から下がりません。今までなんともなかったのにぃ~~
頭がグァングァンして寝ていてもつらいです。
更新が大幅に遅れましたが、それでも来ていただいた皆様に感謝です!




