第110話
なんか危ない集団が出てきます。
いろいろきな臭いにおいも……?
前に会ったあの男、タケル・マティス。
魔道具制作省のチーフと名乗った、見た目爽やか系イケメン優男。
けど、その内実は真逆で、オレをガルマン帝国に勧誘すると言っておきながら、拒絶すれば排除にかかる。しかも古代魔法の『空間転送』で、オレを宇宙空間へと吹っ飛ばしやがった。
オーリィが命懸けで助けてくれなかったら、オレはあのまま死んでいただろう。
しかもあいつ、転生者だ。どの時代か特定はできないが、オレとそう大きくズレてはいないだろう。あの言動からしてもっと若い、そう、高校生くらいなのかもしれない。
召喚と言い、転生者と言い、ここの管理者は仕事してるのか、おい!
ずぇったい、抗議しちゃる!!
…………逢えたらな。
(とと、現実逃避してる場合じゃないな)
脇道にそれた思考を打ち切り、オレはそいつらを観察する。
先頭を切って進んで来る奴は手元の何かを注視している。時折それで前方をなでるように振り回しては確認し、また同じ動作を繰り返しつつこっちへ向かってきた。
ちょうどオレが最初に『門』をつなげたところまできて足を止める。
「おかしい。反応が消えた」
「消えた? それは何らかの術式が消滅したって事か?」
「そうだ。だが、それにしても最初の反応がデカい。通常の術式なんてものじゃない。筆頭チーフのアレに、いや、アレより大きかった」
そう語った男の声に感情が見え隠れする。あれは、恐怖か? 畏怖か?
「そんな馬鹿な! チーフの術式を真似ることなど不可能に近いんだぞ!」
後ろの男が反発する。
「分かってる。それはもう嫌って程にな。だが、この探知機の数値はごまかしようがないんだ」
後ろの男に手の中の物を差し出す男と、それを覗き込む男たち。
オレも傍に寄ってみたが、まさしく探知機だな。ガイガーカウンターのハンドヘルド版に近い形状をしている。これだけでも、転生知識を持ってるってわかるよな。
「……この数値は、そうだな。確かに大きすぎる」
「ちょっと前にやった、アレの時、俺たちの仲間6人で魔力供給したんだが……それよりも大きいと思う」
「だが、それほどの大きさなら、まだ残っているはずだ。まったくないのか?」
追いついてきた男が声を上げる。
「ああ、きれいさっぱり消えたんだ。こんな事ってありうるのか?」
「無いとは言い切れんが、な」
「機械の誤作動じゃないのかぁ、それ?」
一番後ろから軽い口調が飛び出す。
「誤作動にしてもこの数値はなぁ……」
「だけど現実には何もないんだろ? なら誤作動ってのが可能性高くないかな」
「それはそうなんだが」
「ここってチーフが指定してきた場所から離れてるんだろ? なら、何もなかった場所じゃないのかなぁ。それこそ魔獣が居たのかも」
「魔獣か! そうだな、その可能性もあるな」
「誤作動よりも魔獣の方があり得そうだ。だとすると、ここを離れないと危険だ。行くぞ!」
「「「「「了解!」」」」」
隊列を組みなおし、腰の剣に手をやりながら男たちは離れていく。その一番後ろの男にオレは『鑑定』を使った。先頭の男が探知機をしまったのを確認してるから、だけどね。
移動する集団の後ろからオレもついていく。いや、何もする気はないよ? こいつらがあの男の配下であってもね。
ただ、オレはこの男に興味を持った。あいつの配下のくせに言動がおかしい。今も小さな声で呟いている。
「まったく、何を考えてるのか知らね~けど、だんだん物騒になってきたよチーフ。ヤバくなる前に逃げ出せっかな~」
こいつ、忠誠を誓ってるんじゃないのか? ガルマン帝国ってどうなってるんだ。
『鑑定』で見えたこいつの名はフリント・ヴァッセル。地方の男爵家の三男で、初歩の錬金術師となっている。剣技や体術も鍛えているが、もっとすごいのは固有スキルに「直感」てのを持っていること。自分や周りに危険な兆候があると「虫の知らせ」で感じ取り、回避にかかるというものらしい。
いわばLUK(幸運)の上位互換だと思えば納得できるな。
スキル「直感」によって、この男はチーフの危うさを感じ取っているようだ。狂う、まではいかないにしても、いささか常軌を逸してきているんじゃないだろうか。
最初に会った時のあいつは普通に見えた。
けれど、あの瞳の奥にあったほの暗い闇が気にかかる。自分の現状に不満を持ちながら解消する方法を見いだせず、見当違いの劣等感を肥大化させている、そんな感じだ。
(あいつ、周りを巻き込んで自爆しそうだな)
今までいろいろあったんだろうが、撒き散らすなよな怒りを。八つ当たりされる方が迷惑だ。
これ以上ついて言っても仕方がなさそうだ。戻るか。
(こうなったら一度ガルマン帝国を見とく必要があるかも、だな)
そんな事を考えながら来た道を戻る。最初についた場所まで来て『陰伏』を解除した。
「さて、と。何かあるかな」
ぐるりと辺りを一瞥するが、特に引っ掛かる物は見当たらない。
さっきの連中も探していたが。
「まさか、同じ遺跡を探していたんじゃあるまいな?」
「キュルッ? キュルキュル~(そうだと思うっちゃ? この辺だって言われてたっちゃ~)」
「そう言えばそんな事言ってたよな……」
じゃあ、あいつ、古代文明の地図みたいなもの、持ってるんだろうか。
いや、具体的なものは持ってないんだろう。でなきゃ「この辺」なんてあいまいな言い方しないから。
「オレが見つけられるかと言うと、疑問だよな~」
もう一度ぐるっと見渡してみる。何の変哲もない林の中だ。
「あるとしたら、この石かな」
『門』で出てきた最初の場所、その脇にあった背丈ほどの岩が気になった。
だってさ、普通、終着点についたらその目の前に門なり標識なりがなきゃおかしいだろ。ならば、この岩にその機能がある筈だ。
オレはじっくりとその岩を観察し、ぐるりと回り、あちこちを叩いて音を確認して……う~ん、分からん。
「『鑑定』。それと『看破』」
やっぱこれが頼りだよな。さてどうなった?
アグリール地方 カルトの森(現在の地名)
アグリールカルト平原(古代王朝時代)
魔器開発研究所前 門柱&門番
魔力認識機能付き
※ 登録された魔力の持ち主以外は敵と認識して攻撃します。
その場合は研究所内にも警報通知が流れて、内部の防衛機構が
稼働、攻撃態勢に入ります。ご注意ください。
うはぁ、どうしろってんだよこんなの!
古代王朝の魔力なんて誰が覚えてるってんだ!
……あ、閃いた。
オレは石の前で『門』の術式魔力を提示した。そしたら。
ヴオォォォーンンン・・・
地鳴りのような音が石の内部から巻き起こり、次いで前面で光の点滅が始まった。
『魔力ノ認識ヲ行ッタ結果、登録者ト判明シマシタ。
施錠ヲ解除シ、入口ヲ開放シマス』
機械音声が流れた後、石が真ん中から縦に割れ、中へと進む通路が現れた。
柔らかな光が入り口付近を照らしている。
「キュキュ!(凄いだっちゃ!)」
「あははっ、思った通りだ」
何だかワクワクしてきたな。古代文明の遺跡なんて誰も知らないだろうから、探索に力が入りそうだ。
こうしてみると、あの光点の近くには必ず何かがありそうだ。ガルマン帝国、というよりあいつに気づかれる前に何とかしておくべきだな。
更新が遅くなり。お待たせしちゃいました。
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