第107話
古代魔法の入手、出来ますかね~?
謎に包まれたマギボード、登場!
『おお、「熱地獄」をふさいでくれたのだな。すまん、うっかりしておったわ。あそこを開けっぱなしにしているとどうも儂以外の生き物にはきついようでの』
石の顔がぐるりと回り、オレに謝罪を伝えてくる。
「うっかりで片付けてくれるなよ。オレはともかく、子供たちは危なかったんだぞ? そういうことは早く言ってくれ」
ふたりとも今は落ち着いて眠っているが、半分気絶みたいなもんだ。洞穴からここまで、怒涛の連続だったからな。大人でもつらいってのに良く持ちこたえたと思うよ。
それにしてもどうして聖獣って奴はこうも無神経なんだ? まあ、自分自身が頑丈だから解らないのかもしれないな。
『うむ。これからは気を付けよう。儂もこの世界の一部ゆえ、な』
「頼むぜ」
そこまで話すと、再び石の顔がジェイルニークスに向き直る。
『……話が途切れたが、ジェイル。お主、幾つマギボードを消し飛ばしたのか、答えておらんのだが?』
どういう仕組みかは分からないが、「動かざる者」ゴルディマーラは複数のマギボードが消滅した事を知っているようだ。
『……ええと……そう……まあ……あの、え~……』
珍しい、あの異世界鳳凰が口ごもってる!
その様子を見て、長いため息をついたゴルディマーラ。
『お主、相変わらずじゃのう』
『…………そうは言うても、のう。仕方がなかったんじゃぞえ? あの時のわらわにどうしろというのじゃ…………』
おい、今度はいじけだしたぞ。
『最初に言うておるだろう。あれをここで保管するのは危険だと』
『じゃが、ここならば誰も手出しできぬ! わらわですら手こずる場所はここしかないと、お主にもわかっておったろうに』
『わかるが故に躊躇ったのだ。他からの侵入は防げるであろう。だが、時流の流れの中でアレが消滅する意味を解っておるのか?』
『う……』
『通常なら問題など起こらぬが、あそこは特殊であるぞ? 下手に扱えば現世にどのような影響があるやら、儂にも予測できぬところだと、あれほど釘を刺したというのに』
『わ、解っておる、忘れてはおらぬのじゃ。それでも、どうしても力加減が難しゅうてのう』
何やらグチグチとごねるジェイルニークスと渋い顔のゴルディマーラ。
『お主の置かれた状況には同情するがの。自業自得、ではあるな』
『なっ……!』
『知らぬとは言わせぬぞ。儂は何度も忠告した筈。アレに関わるなと』
『…………』
『道を選ぶのはお主じゃ、選んだからには全うせねば、な』
『ヌシは相変わらずの立ち位置じゃわいの』
『それが儂の役目でもある』
聖獣としての役割に関わる事なのだろう。何もしていないように見える聖獣たちにも制約があるとは知らなかったな。
いささか、いや、相当話しかけにくい状況だが、是非とも確認しないと。
「あー、ジェイルニークス? 久しぶりだな」
『お? おお! ケインではないか! おお、この匂い~。やはりいいのう……え? なにゆえここにケインが居るんじゃ?』
「ん? 居ちゃいけないのか?」
『ここは隠された地ぞ。表の地からここへ通じる道は全部塞いでおるのに。ケインは如何にしてここへ到達したんじゃ?』
「そう言われてもなあ。洞穴へ流れ込んだマグマ……永劫の焔の流れから逃げようとして選んだ「穴」がここに通じていただけなんだが」
『穴? 穴とは、いったい何があったんじゃぞえ?』
訳が分からないと首をひねるジェイルニークスだが、オレにだってわからない。と、
『ジェイル、それこそが現世への影響なのだ』
ゴルディマーラが割り込んできた。
『この大陸のあちこちで、異変が起こっておる。火山が噴火したり川の流れが変わったりと。この男と巨人族の子らがここまで来てしもうたのも、そのひとつ。今はもう治まってきておるが、今回はちとやりすぎではないか?』
「じゃあ、あの洞穴がダンジョン化したのも、変な転移点が出来たのもジェイルニークスの所為だったのか?」
『すべてとは言わんがな。少なくとも、お主たちがここへ移動してきた異変は、間違いなくジェイルの失敗にあるであろうな』
「へえ~、そうなんだ……」
『そ、そんな言い方は酷くないかえ、ゴルディ? ケインも同調せずと』
「だけど実際はそうなんだろ? わざとじゃないにしても、大陸に居るみんなに迷惑を掛けたのは本当なんだから、そこは認めるべきじゃないか?」
『う……た、確かにそうじゃわいな。わらわがやったことではあるのじゃえ』
しょぼんとうなだれる異世界鳳凰。そうそう、少しは反省してもらわなきゃな。
『ほうぉ、これはこれは』
後ろで笑いをこらえた声が聞こえる。
『ワシがいくら言ってもこのような反応はせぬのに、お主の一言でしおたれるとは。うわさに聞く魔獣使いのようだの。面白いものを見せてもらった』
なんだ、そのはちゃめちゃ発言は。オレがいつ魔獣使いになったってんだ。じろりと石の顔を見上げれば、片眉をあげてウインクしやがった。石のくせに表情豊かな奴だな。
気を取り直してもう一度異世界鳳凰に聞く。
「で、どうなんだ、ジェイルニークス。『虚空』のマギボードは見つかったのか?」
『おお。ちと手こずったが、見つけたぞえ。ヌシもわらわの願いを成し遂げたようだしの、約束じゃ、受け取るが良いわえ』
そう言って翼の先端を俺に向ける。そこからきらきらと輝く光が生まれ、オレの方へと飛んでくる。
「おっとと。え、何コレ」
両手に余るほどの大きさの……水晶珠、かな? でも、中は濃い紫色の雲のような霧のようなものがもやもやとしていて曇っている。時々稲妻のような光が横切り、余計におどろおどろしい雰囲気だ。呪いの珠と言われると思いっきり頷いてしまいそうだな。
『これ、何をそう胡散臭げに見とるんじゃ。さっさと開けるがよい』
「開け方なんて知らないぞ。どうすりゃいいんだ?」
『ヌシの魔力をそこに流し込めばええ』
魔力、かぁ。オレはそれがいまいちわからないんだよなぁ。
ま、やってみるか。オーリィと繋がった時みたいな感覚で手のひらから珠へと魔力を流す。
と。
「お?」
珠の中の雲と稲妻がストップモーションとなった。
「おお?」
次にそれが珠ごとぎゅっと縮まって。
「え? うわ眩し!」
ぱあっと光を放っていく。思わす目をつぶってしまったが、手の中の重量がガクンと増えた。
「な、急に重くなった、ぞ? て、これ、板?」
まじまじと見降ろした手の中にあるのは、水晶珠ではなく1枚の板状のモノ。
全体が濃い紫色でど真ん中に金色の稲妻マークが浮かび上がっている。更に、板の端々から小さな火花が飛び散って物騒な事このうえもない。こんなの、どうすりゃいいんだ?
眺めていると、その形状が何かに似ている気がした。そうだ、パソコンのモニター画面だ。ならばやることはひとつ。真ん中の稲妻マークに右手を置くと、紫色の表面が透き通り、そこに複雑な魔法陣が浮かび上がってきた。
「……」
相変わらず文字は読めない。だが、INT(知性)さんのおかげでそれが『虚空』の魔法陣だと理解できた。
どこでもない、世界の狭間へと続く虚無の空間。ここへ放り込まれたものは、有機物無機物関係なしにすべて分解されて跡形もなくなる。その時に生み出される力はこの世界へと還元され、根源となる。いわば世界の生命力をあげる貴重な方法ではあるが、魔力の消費も構築も複雑なのに現状では使えない魔法だ。
「…………」
理解できたとみなしたのか、画面から『虚空』の魔法陣が消え、新たにふたつの魔法陣が浮かぶ。これは『門』と『空間転送』だな。なぜこれが同時にあるんだ?
よく見ればふたつの魔法陣はよく似ている。
(違っているのは……ここか)
『門』は双方向に移動可能で、『空間転送』は一方通行だ。それは設定ポイントを置くか置かないか、その1点だが……そのポイント設定部分が赤く点滅している。
(ここもトラップが仕掛けてあるのか。ここをこうして、こっちを繋げて。あとは、この部分を削除すれば……うん、魔力消費もかなり減ったな)
『空間転送』にはそれが無かったから解読し易かったのかもしれない。
いずれにしても、最初に跳ぶときに必要なのはイメージだ。到達する地点のイメージをどれだけきちんと描けるかにかかっている。
そして、『門』は1回跳べば、その地点を設定ポイントとして登録できる。大体10か所ほどを記録できるようだ。
そろそろこの編も終わりに近づきました。
だいぶ苦労しましたが、うまく収まりそうです。
読んでくださり、感謝です。




