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血色の世界  作者:
35/44

31話 レイダ

 食事をしてからは休憩として、噴水の傍のベンチに座っていた。

 なんかここって恋人多くないか?

 皆、手を繋いだりして楽しそうだし。


「何を見てるのよ」


 レイダが何故か睨んでくる。

 ……何のことだろう?


「あの女の人は確かに綺麗よ? スタイルも女の私から見てもなかなかよ? でもそんな見ちゃダメ。彼氏さんもいるんだし」


「お前何言ってんの?」


「……女の人に見とれてたんでしょ?」


「はあ? レイダは俺をなんだと思ってるんだよ」


「……そうね。そうよね。セレメはただの鍛練馬鹿だわ。女の子とかそんなの全く興味ないのよね」


「全くではないけどな」


「え……」


 そんな意外だ、みたいな顔されても困る。

 レイダの言っていた人を見てもなんとも思わなかったから否定できないけどさ。


「じゃあ私はどう? 身近な女の子よ?」


「……忘れてた」


「セレメの物忘れは頭おかしいわよね。で、何を忘れてたの?」


「レイダが女の子ってこと」


「……ああそう。ちょっと女としての自信なくすわね、これ。」


 申し訳ない。

 でもレイダは女の子らしくないから忘れてしまうよ。

 ロキと同じ感じで接してしまうし。

 メーナは何故か女の子って感じがするよな。

 なんでだろう。

 まあいいか。

 こんなこと魔人とはあんまり関係ないし。


「ねぇ、セレメ。私が女の子ってこと忘れないでね」


「……出来るだけ努力する」


「それ忘れそうね。セレメの脳筋さには呆れるわ」


 酷い。

 それだけはレイダに言われたくなかったぞ。

 レイダも俺と似たり寄ったりじゃないか。


「さーて、お散歩再開しましょうか!」


 レイダは勢いよく立ち上がり振り返って俺を見る。

 俺も立ち上がってレイダの隣に立つ。

 次はどこに行こうか。


「帰るときのルートの確認しておくか」


「そうね。じゃあ行きましょう! まずは北方面から!」


「え? ちょっと! えええー」


 なんで手を繋ぐ?

 困惑しながらも俺はレイダに引かれて歩き出す。


「子供じゃないんだから手とか繋ぐなよ」


「子供じゃなくても手くらい繋ぐでしょ? それにカモフラージュよ。恋人っぽく見えるんじゃない?」


 やけに嬉しそうなレイダが笑って俺に言う。

 カモフラージュならいいかな。

 昔のレイダがこんなことするとは思えないけど。

 でも俺に好いてないよな?

 そういうの困る。

 こんなことされたせいで俺が勝手にそう思ってるだけか?

 考えすぎか?

 考えすぎだろうな。

 さっさと忘れてしまおうか。



 ルート確認のあと宿屋に帰ってきた。

 ロキが宿屋の前で誰かと別れて手を振っている姿が見える。

 友達だろうか?

 ロキのことだしすぐに人と仲良くなれるんだろう。

 いいなー。


「あっ! セレメとレイダ! 二人ともお帰……り?」


 ロキが固まった。

 おい。大丈夫か?

 ロキの頭をべしべし叩いてみる。

 反応がない。

 死んでないよな?


「……せ、セレメとレイダって、恋人だったのか?」


 震えた声で俺とレイダの間を指さす。

 手を繋いでるからか?


「違うに決まってるだろう。な? レイダ」


「そそそ、そうね! ただのカミョフラージュよ!」


 レイダが変だ。

 カモフラージュって言えてない。

 これは困ったな。

 さっさと手を放して距離を置くべきだ。


「中はいるぞ」


 そう言ってから俺は宿屋の中に入ろうとする。


「私はもう少し外にいるわ。先に中に行ってて」 


「了解」


 横目でレイダを見る。

 嬉しそうに俺が握っていたほうの手を見ていた。

 ……。


「あれ絶対セレメに惚れてるよな。付き合わないのか?」


 俺についてきたロキが聞いてくるが答えは決まってる。


「付き合うとか無理だから。俺が何者か知ってんだろ。俺は誰とも結ばれるべきじゃない。そういうのは無しだ」


「……でもそれだとレイダが可哀そうだろ」


「もし俺が過ちを犯してしまったらどうする? 俺でも制御出来ているとはいいがたいんだ。一度、人を殺しかけた。だから無理。最悪の存在である悪夢と深い関係にあった人として世界に名が刻まれるとか俺のほうが耐えられないから」


「殺しかけた? それ初耳なんだけど」


「相手は族長だ。正体を知られたときに()りそうになった。完全に無意識だ。それだけ恐ろしいんだよ。この血は」


「……わかった。僕もいつでもセレメを止められるように注意しておくから」


「ん。ありがとな」


 ロキがいれば少しは安心かな。

 ロキといるときだけ、だけど。



 宿屋の部屋に戻ってきて本を読む。

 最近読んでいるのは勇者と仲が良かった悪夢の話だ。

 始まりの話と呼んでいた『悪夢の始まり』と、二人の義賊の話と呼んでいた『聖樹の誕生』。

 あとは仲がいいとは言わないけど、悪夢をきっかけに魔人を救おうとしてくれた優しい勇者の話。

 まあ優しい勇者は教会に処刑された勇者でもあって、本の題名は『罪の情』っていうんだけど。

 魔人に友好的な勇者であるサーデルも気を付けなければ彼の二の舞となるだろう。

 サーデルもそれはわかってると思うけどな。


「それ読んでて面白いか?」


 いつの間にか起きてそばにいたコリアスが聞いてくる。

 面白い?

 どうだろう。

 たぶん面白いのかな。

 何度も読んでいるし、もっと読んでいたいし。


「コリアスも読むか?」


「読まねぇよ。本は苦手だ」


 だろうな。

 コリアスが本を読んでる姿なんて想像できない。

 コリアスのことは気にせずに本を読み続けよう。



 しばらくしてレイダが戻って来て、それと同時にコリアスとメーナが外へ出て行った。

 ルートの確認をしてくるんだろうな。


「セレメ。将来結婚とかって考えてる? それともアキさんみたいに魔人の子供を育てる? コリアスさんみたいに救出班でずっと活躍する?」


 レイダが静かで落ち着いた声音で聞いてきた。

 今日のレイダは妙に俺に話しかけてくるな。

 嫌ではないから答えるけども。


「たぶんコリアスと同じ感じになると思うな。魔人の子供を育てるのもいいかも知れないけど結婚はない」


「なんとなくそうだと思ったわ。だってセレメだもの。誰かに告白されたらどうする? 例えば……ロキとか」


「は?」


 ロキに告白されんの? 男なのに?

 でもありえるのか?

 これも断るしかないだろうけど、ロキは俺の正体知ってるから悪夢と深い関係になるってことがどういうことかも理解していることになる。

 それだと断りずらいのかな?

 でもロキとは友達でいたいな。

 だったら諦めてもらうしかない。

 さて。どうやって諦めて貰おうか。


「待って待って! セレメはなんで真剣に考えてるんだ!? 告白とかありえないからな!」


「そうなのか? レイダが言うからてっきりそうなのかと」


「ないから! っていうかなんで考えたんだ? すぐ断れよ!」


「どうやってロキを諦めさせようかと思ってな」


「なんかふられたんだけど。いやふってくれたほうが嬉しいけどさ」


「じゃあセレメ。ロキは男だからそうかもしれないけど、女のメーナや私だったらどうするの?」


 レイダの問いにもすぐに答えておこう。


「それも諦めさせるだろうな。今後お前らとそういう関係になることは絶対にない」


「そう、なのね」


 レイダがわかりやすく視線を下に向けて落ち込んでる。

 悪いとは思うもののどれが正しい事なのか、わからない。

 俺はこれが正しいと思っている。


「セレメの気持ちは誰にも傾いてないのか? 魔人とか悪夢とかそういうの抜きにして」


 ロキが珍しく真面目な顔をしている。

 悪夢というのを抜きで、か。

 どうなんだろう。


「たぶんそういうの抜きでも特に何もないかな。皆は友達で仲間だ。それ以上でもそれ以下でもない。そんな感じ」


「あの子可愛いなとかそういうのないのか?」


「んー。……アキはたまに可愛い」


「セレメ……」


 ロキ。なんだその哀れみの目。

 いやだって本当にたまにだけど可愛くなる時があるんだよ。

 例えばちっこくて攻撃力のないふわふわした魔物とか見てる時のアキとか。

 その魔物を触ろうとして逃げられて悲しそうにするアキとか。


「レイダ。どんまい!」


「うるさいわ、ロキ。殴るわよ?」


「落ち着けって! すぐ拳を向けてくるのやめよう! レイダだけじゃなくセレメもだけどさあ!」


「いいじゃない。これも鍛練でしょう?」


「そうかも知れないけど、ここ狭いんだよな!」


 もの壊したら怒られるぞ。

 大人しく本でも読んでればいいのに。

 ちょっと心配になりながらも本に目を戻す。

 本気で鍛練している訳じゃなさそうなので、ものを壊したりはしないだろう。



~~~~



 馬車組が到着してもう一度転移魔法陣の先の部屋に集まり作戦を確認する。

 俺たちは救出対象を教会の地下から連れ出すチームが無事に救出対象を連れ出せたら対象とそのチームの護衛をする。

 それまでは影の中で待機だ。

 もし連れ出すことに失敗したのなら教会の中から外に溢れ出すくらいの闇の霧を放出。

 闇の霧が消える前に俺たちも教会の中に突入して対象を発見すればすぐに救出し他の者は霧が消える直前に教会から出る。

 救出対象を保護した者を見つけたら全力で逃げる。

 もちろん対象を守りながらだ。

 それからは潜入班が用意した馬車と一緒に村へ向かうことになる。

 この通りに物事が進めばいいんだけど想定外のことも普通に起こるだろう。

 そういう気持ちでいて警戒しておけばもしもの時も対応できるかな。




 作戦の確認をしたあと。

 宿屋に帰ろうとしたときアキに見つかって抱きしめられた。

 アキは馬車組だったから遅れて到着だ。

 

「セレメ! 会いたかった!」


「アキ。俺に構ってる余裕あんの? 言っとくが今夜作戦開始だぞ」


 馬車組の到着が少し遅れてしまってる。

 だから急いで準備をしなければならない。

 今から逃げるルートを複数覚えて、作戦をチーム内でも確認して、何か足りない物を買ったり、お金が必要なら何かを売ったり。

 俺は馬車組がくる数日間でもうやったけどアキは違う。


「雨ので遅れたせいで切羽詰まってるんだ。一緒に行くか? 手伝ってくれたほうが早く終わる」


「今は知らない人ってことになってるんだ。出来ないって」


「わかってる。でも……」


 どうしてそこまで俺と一緒にいたいのか?

 もうちょっと離れて見ていて欲しいんだよなぁ。

 アキが絶望しそうだから強くは言えないけどさ。

 アキって家族に執着している気がする。

 なんとなくそう思っているだけだから、なんでアキがそうなってるのかとか、よくわかんないけど。


「アキ! 宿屋に戻ろう」


 アキとチームを組んでいる女性がアキを連れ戻しに来た。

 アキは悲しそうにしていたけど救出対象の命が今夜にかかっているからか、すぐに俺から離れていく。

 俺も宿屋に戻ろうか。

次話は9月11日投稿予定です。


登場人物たちちょこっと紹介

実はレイダちゃん、おしゃれとか大好きで、隠れてお化粧してたりもする女の子なんだよ!

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