30話 教会
サーデルたちは三日間、村に滞在した後、帰っていった。
誰にも言わずに魔人に会いに来たらしいんだけど怒られないだろうか?
サーデルたちは危機感がないのかアホなのか、国から抜け出した言い訳を考えていなかった。
だから俺はサーデルたちに女神から神託があったってことにしたらどうだ、と言っといた。
サーデルたちは女神を恨んだりしていないのでバチが当たりそうとか言っていたけど、女神がそんな心が狭いわけがない。後で謝れば大丈夫って説得すると女神を言い訳にすると決めたようだ。
このくらいの嫌がらせはいいだろう。
女神も俺に嫌がらせしてくるし。
あとはサーデルがもたらした情報の事実確認が済んだので救出班を送り込むそうだ。
急がないと救出が出来ない任務らしい。
魔人を生んだのにそれを隠していた夫婦とその子供が救出対象だ。
三人も助け出さなければならない。
だから今回は参加する人数は多い。
それと魔人に有利な夜に作戦は決行されるそうだ。
もちろん俺も参加する。
ロキたちも参加するって言っていた。
救出任務は初となるから俺は基本的にサポートに回ることになる。
失敗しないよう、足を引っ張らないよう頑張ろう。
〜〜〜〜
今回は人数が多いので別れて人間の国に向かう。
俺はやはりというかレイダとロキとメーナと一緒だ。
チームワークがいいから失敗せずに作戦を実行しやすいだろう。
経験はコリアスが補ってくれる。
あとはアキだが、今回は別チームだ。
昔から組んでいる人たちと一緒に行動するだろう。
アキが俺に近寄る前に仲間の人がアキを連れて行った。
アキは凄く悲しんでたけどね。
理由は……まあわかる。
うん。何度もあったしな。
俺たちのチームは馬車がない。
歩いていくことになる。
歩くというより走って、たまに影移動しながらだけど。
前は人間の国から村まで三週間かかったけど影移動なしだったから時間がかかったんだ。
戦闘を回避しながら影移動をしていけば馬車より早いはず。
荷物はあまり持っていけないけどそれは仕方ない。
俺には空間収納があるから問題ないけども。
馬車組もいるからそんなに大きな荷物でなければ一緒に積んでくれるだろう。
「今回も誰もが欠けずに戻って来ましょう。またこの村に」
レイダが凛とした佇まいでいう。
俺が関わってない時のアキに似ているな。
レイダはアキに憧れているからアキの真似をしているんだろう。
真似し過ぎるとぶん殴られるけど。
「おう! 皆で頑張ろう!」
ロキが拳を突きあげて元気に笑う。
俺も一緒に拳をあげる。
メーナも楽しそうに俺たちに続いている。
レイダも少し恥ずかしそうだけど拳をあげていた。
やっぱり皆と一緒にいるのっていいな。
これから危険なところに行くから気を引き締めないといけないけど。
〜〜〜〜
旅人として人間の国に入ることに成功した。
他のチームはどうかわからないけど。
今回は前回来た時に使った宿屋ではなく別のところを使う。
そこも魔人関係の人が経営しているんだ。
魔人の人数が多いから別れて泊まらないといけない。
宿屋につけば地下室の転移の魔法陣で部屋に飛ばされる。
そこは沢山の人がボロい椅子に腰掛けていた。
俺たちよりも先についていた救出班と潜入班だろう。
コリアスが今回の救出班と潜入班の班長たちに報告しに行っている。
前回はコリアスが班長みたいな感じだったけど、今回は俺たちのチームのリーダーという立場になっている。
コリアスの報告が終わり椅子に座って待っていると班長の二人が手を叩いて注目を集めた。
「諸君にはこれから黒い血の少女とその家族の救出をしてもらうことになる。彼らは今、教会の地下牢に囚われ五日後には火あぶりの刑となる。そうなる前に教会へ侵入し、彼らを助ける。決行は我々が有利な夜の時間だ」
「馬車組の到着までそれぞれ教会の場所やその周辺で情報収集をお願いします。いくつか脱出ルートを決めておくのもいいでしょう」
他にも少女とその家族についての情報を聞いた後、解散となった。
もとの宿屋に帰ってくる。
「とりあえず自由行動だな。いつでもいいが教会あたりをブラついて土地勘をつけとけよ」
コリアスはそう言ってから宿屋の部屋のベッドに寝転がる。
コリアスは寝てしまうみたいだ。
俺はどうしよう?
先に教会あたりを見ておくか?
それとも別のことするか?
「セレメ。良ければ私と教会周辺を見に行かない?」
レイダが俺を誘ってくる。
じゃあ一緒に見に行くか。
断る理由もないしな。
出かける準備をしていざ出ようとしたとき異変に気がついた。
ロキがいなくて、メーナは裁縫を始めている。
「あれ? メーナとロキは一緒に行かないのか」
「まあいいじゃない。たまには私たちだけでも」
レイダがドアに向かいながら言っている。
まあたまにならいいか。
いつも四人で行動しなくてもいい。
四人でよく行動していたからそれが当たり前になっていたけどな。
レイダと宿屋を出てから聞いた情報の教会にやってくる。
サーデルに連れて行かれた教会とは別の教会だ。
この地下に今も救出対象の少女と少女のご両親が囚われているんだよな。
「見て! 噴水よ!」
レイダが珍しくはしゃいで噴水まで走っていく。
綺麗だな。
人間の教会の近くには勇者の像が置かれているようで、ここのは勇者ヨーコの像だった。
像の下の台に名前が書いてある。
彼女は魔王を倒した人物だ。
ただ噴水の上に置くのはどうかと思う。
ずっとびしょ濡れで可哀想なんだが。
「ヨーコって魔王を倒した勇者だったわよね?」
「そうだ」
「かっこいい。でもセレメだって負けてないわよ!」
当時の彼女や魔王の力をしらないからどれほど強いかわからない。
でもそう簡単には負けないと思う。
「そうだな。俺の努力は並みじゃないからな」
「……まあそうね」
なんか間があったんだが?
何か言いたいことがあるならいってほしいんだけど。
「それよりこれからどうするの? 私はこの辺を歩ければ何処を行ってもいいんだけど」
何事もなかったかのように話を続けるレイダ。
突っ込まないほうがいいのかな。
それよりこれからどうしようか。
とりあえず教会の周りを一周してみようか?
そう提案するとレイダもそうしようと言ってくれる。
一周してみると冒険者関係の建物が多いことがわかった。
ここの教会は街の門から一番近いところにあるから、やってきた冒険者が来やすいんだろう。
冒険者は魔物を専門的に狩る人たちだ。
ギルドに登録すれば依頼を受けて、それを達成すれば金がもらえる。
まあギルドに登録するには血が必要だから魔人は無理だけど。
ギルドは魔物に詳しいし、魔物の血では誤魔化せない。
過去に登録しようとして捕まった魔人が何人かいたらしい。
これは厳しいな。
冒険者が多いのなら救出対象を守りながら逃げるなんて大変だ。
冒険者は魔物を狩るから戦える。
魔人が現れたと知られたら死を覚悟すべきか。
出来るだけ見つからないように行動しないと。
「人間の装備ってどんなのかしら。ちょっと入ってみない?」
防具屋と武器屋をみていうレイダの目はとてもキラキラしている。
俺も興味あるし寄ってみようか。
まずは防具屋に入ってみた。
皮製から金属製まで様々だな。
「防具って高いわ。でも私のやつより守ってくれそうね」
確かに強そうな魔物の皮を使っているみたいだし高い。
でも薄くて動きやすそうでもある。
いいな、これ。
「全身金属の鎧があるわよ。重そうね」
「重そうだけどかっこいいよな。着たいとは思わないけどさ」
「見てるぶんにはいいわ」
いろいろ見ていたけど俺たちの手に届く防具は、今持っている皮鎧より弱そうなものしかなかった。
魔人は貧乏だから仕方ない。
自力で素材を集めて作るしかない。
次に武器屋に来た。
「な、なんか変わってるわね」
レイダが逃げ腰になりながら言っている。
確かに変わっている店内だな。
暗いし肌寒いしなんか、不気味だ。
「この鎌とか死神の持っているものみたいだわ。呪われそう」
確かに。
何かの爪みたいでいつのまにか首に刃が当てられてたみたいなことがありそう。
というかこの鎌、自力で動き出しそう。
「悪夢とかが持ったら似合いそうね」
「俺もたまに鎌を扱うんだが、俺には似合うか?」
「うーん……。ちょっと似合うかも? 無表情で淡々と魔物とか殺戮してそう」
おい、レイダ。
お前の俺へのイメージってそんななの?
殺戮ってそれ魔物じゃなく人間だったら完全に悪夢じゃん。
似合わないって言って欲しかった……。
まあ日頃の俺の行いのせいだろう。
「でも不思議な形の武器ばかりね」
そうだな。
鎌もそうだが、なんかぐにゃぐにゃ曲がった……剣みたいな何かとか、もう用途すらわからない黒い物体とか。
知らないものばかりでちょっと楽しいけど…………なんで壁が黒塗りで棚の上に動物の骸骨が並んでいるのか。
不思議だ。
普通の剣もあるみたいだけど隅っこの方にあるし。
変なお店があるもんだ。
結局何も買わずに店から出てきた。
次はどこに行こう?
教会から村に帰れるルートを確認しておこうか?
「なんかお腹空いたわ」
「じゃあ先に飯にするか」
一周回ったときに見つけた店に入ってみることにした。
次話は9月3日投稿予定です。
次話予告はない。
何故ならば書き溜めがなくなってしまったからだ!
夏休みに放出しすぎましたかね……。
毎日投稿出来る人凄すぎです。




