16話 再会
俺の育った村の近くの森の中に着地した。
ここからは歩く。
闇の魔法では空は飛べないからな。
村の皆には闇魔法以外の魔法は見せない予定だから歩く。
森の中で魔物に会うけど適当に狩って、モルゼットがくれた大きな背負う籠に入れていく。
ここの魔物って島の魔物より弱いな。
油断はしないけどそう感じてしまう。
海に身を投げる前はコボルトしか狩ったことなかったからわからなかったけど。
海までの道は魔物を避けていたし。
のんびり村までの道を歩いて、太陽が真上になるころ、やっと森を抜けた。
ゆっくり歩きすぎかな。
いや、ゆっくりの方がいいか。
今までが生き急ぎ過ぎていた気がするんだ。
モルゼットと生活して俺はそう思った。
もっと頑張らないようにしてみよう。
頑張るときは今まで通り頑張るけどな。
普段はもっと力を抜こう。
原っぱをトコトコと進む。
なんか村の前に人と魔物が集まってるな。
魔物の数は五匹?
人間はもっといっぱいいる。
でも魔物の大きさは人間の倍はあるように見える。
あれヤバくね?
実力者が任務に行っていて、誰も戦える人がいなかったらもっと危険な状況だろう。
のんびりしてる場合じゃねぇ!
影移動を使って一気に町まで距離を詰める。
「ロキのバーカ! なんで森の主に戦い挑んでんの!? 勝てるわけないでしょ!」
懐かしい声、レイダの声が聞こえた。
「セレメに追いつくためにはこのくらいしなくちゃ!」
「そうだけど村を危険に晒すようなことセレメならしないわ!」
「ご、ゴメン」
「二人とも! 今は喧嘩してる場合じゃないよ! アキさんたちを援護して!」
ロキとメーナの声も聞こえる。
メーナの言葉が本当ならアキもここにいるのだろう。
影の中から敵である魔物を確認する。
ライオンのような顔と鬣。
でも二足歩行をしていて体はまるで熊だ。
鬣と鼻筋、瞳と爪は青い色をしていて他のところは白い色をしている。
「ハア!」
アキの声が聞こえる。
それと同時に一匹の魔物が吹き飛び黒い鎖に縛られていく。
アキが使った魔法なのだろう。
残念ながらその鎖は一瞬で千切られてしまったが。
「コリアス! 行けるか!?」
「まだタメが必要だ!」
「クソ! 怪我人は下がれ! 邪魔になる! 戦える者は魔物を村に近寄らせるな!」
アキがかっこいいや。
でもかなり厳しそう。
とりあえず魔法で気配を消しながら怪我人をアキたちの後ろに下がらせていく。
アキとメーナと他の人が魔法を使って魔物を足止め。
前衛も同じように足止め、隙があれば攻撃を繰り返していた。
「よし出来た! 行くぞ!」
コリアスが言うと皆が慌てて下がっていく。
コリアスだけは前に進んで禍々しい炎の剣を魔物に切りつけたけど。
あれいいな。
もっと改良したら凄い技になりそう。
ファイアブレードの改良版なんだろうけどもっと改良出来る。
「やったか!?」
コリアスが下がりながら言うけど、魔物は軽く腕を切っただけで、ほとんど無傷といってもいい感じだった。
もっと頑張れよコリアス。
「ウソ、だろ?」
コリアスが見たことないくらい顔面蒼白だ。
アキも唇まで青い。
そんなに強い相手に思えないんだけどな。
皆の顔が絶望に染まっていく。
これ以上そんな顔を見たくなくて、決心した。
正直に言うと、アキたちに会うのが少し怖かった。
勝手に出て行ったこととか怒られる気がして。
だからすぐには手助けしなかったわけだけど、こんな顔をさせるくらいならさっさと助けるべきだった。
気配を消すのをやめて、俺は皆の前に出る。
モルゼットに闇の魔法も教えて貰ったんだ。
一年前より強くなってるはず。
モルゼットが俺に教えた魔法は過去最強の悪夢が使っていたんだ。
『絶望と恐怖』の本に引けを取らない強さになっている……と思いたい。
とりあえず五匹中、四匹をブラックリボンで拘束……できなかったので鎖も使って拘束する。
モルゼットに教えて貰って改良した魔法だから普通に使うよりも強力だ。
右腕を剣のように鋭い刃物の闇魔法で包んで、拘束してない一匹に向かって走る。
そして刃物の腕を使って魔物の首を跳ねた。
青い血が吹き上がる。
あれ?
意外と脆いな。
森の魔物とそう変わらない。
島の魔物の方が強かったぞ。
同じようにあと四匹の魔物も倒していった。
アキたちが苦戦してるようだった魔物がこんなに簡単に……。
モルゼット師匠がどんだけ化け物だったかがよくわかるというものだ。
「せ、セレメ?」
アキの声が聞こえたので、俺はゆっくりと振り返る。
アキが泣きそうな顔になっていた。
やっぱり勝手に出て行ったせいで心配させちゃったね。
「久しぶり。アキ。そして皆」
俺はなんとなく気まずくなりながらも笑ってそういった。
魔物五匹をどうにか村の中に運んで解体しているのを見て現実逃避している俺。
今、アキたちに囲まれているんだ。
勝手に出て行ってしまったし、何を言われることか……。
「セレメ! どれだけ心配したか! いったい今までどこに行ってたんだ!」
アキが涙目のまま俺の両腕を掴んで言っている。
他にも怪我はないかとか、何があっただとかいろいろ聞かれたけどとりあえず黙っておく。
しばらくして落ち着きを取り戻したアキは深く息をついた。
「でもよかった。セレメが帰って来てくれて。本当によかった。」
アキが笑って俺を見つめる。
本当は帰ってくる予定ではなかったので、苦笑いで誤魔化した。
「少し日に焼けたな。どこで何をしていたか聞いてもいいか?」
アキが冷静なままさっきと同じ質問をしてくる。
「ああ、いいよ。でも家に帰ってからがいいかな」
「わかった。皆も家に来てくれ。セレメの話聞きたいだろう?」
「勿論よ!」
レイダが一番に答えた。
あとからロキ、メーダ、コリアスも頷く。
ということで一度、俺が育った家に行くことになった。
アキがお菓子とお茶を出してくれる。
ついでに森で狩った魔物が入ってる籠もアキに渡しておいた。
「セレメ。これ見た目以上にたくさん入れることの出来る高価な魔法道具じゃないか!」
アキが籠をみて驚いている。
普通に使ってて忘れてたけどそりゃ見た目以上にたくさん入ってたら驚くか。
「どこで手に入れたんだ? まさか盗んだんじゃ……」
アキに勘違いされる前に話そう。
そうしよう。
「師匠から貰ったんだ。この一年は師匠の下で暮らしてた。凄い魔法使いだから隠れて暮らしてる。だから場所は言えない」
「師匠? 相当凄い師匠なんだろうな。セレメがあんなに強くなって……」
「師匠に会ったのは偶然だけどな」
「どうしていきなり旅に出てしまったんだ?」
やっぱり聞かれるよな。
ここは全て神サマのせいにしてしまえ。
「それは女神ルーダサマから神託があったから。俺は勇者ではない。でも別の役目を受け持った。内容は言えないけどそういうことだから気にしないでくれ」
「うーん。セレメはそんなに神を信じていなかったのに神託があったのか?」
「それこそ神サマに聞いてくれ」
神サマって便利だな。
神託があったことは本当だし、このくらいいいだろう。
皆、半信半疑だけどな。
「セレメ、強くなりすぎだろ……。僕たちも鍛練していたのに差が開いていく一方だ」
ロキが突っ伏してそういった。
それはその、悪い。
でも強くなりたかったし強い人がいたら鍛えて貰いたくなるだろ?
「セレメ! 鍛練よ! 少しでも早くその強さに追いつくんだから!」
レイダが鼻息を荒くして言う。
うーん。鍛練ねぇ。
「私ももっと頑張る!」
メーダも頑張っちゃうのか。
でもそうだよな。
成人して一年がたってるんだ。
そうだよなぁ。
でも……言ってみるか。
「鍛練もいいけどさ、たまには遊ばない?」
「「「「「は?」」」」」
皆がコイツ何言ってんのって顔してるよ。
やっぱり子供っぽいか。
今更遊ぶのは無理かな。
鍛練だけじゃなくて思い切り遊んどきゃよかった。
「おい。セレメが変なこと言ってやがるぜ」
「どうしたんだセレメ。遊ぼうとしてくれるのは親としては嬉しいが……」
「セレメ、頭ぶつけたんじゃないかな?」
「あのセレメがありえないわよね」
「うん。あの鍛練大好きなセレメくんから遊ぶなんて言葉は出て来ないよ」
コリアス、アキ、ロキ、レイダ、メーダの順に小声で話している皆。
丸聞こえだけどな。
「師匠に言われたんだよ。そんな生き急ぐなって。目的に向かって突っ走るのもいいけど寄り道もしていいってな」
俺に皆の話が聞こえていたことが分かったからか皆がしばらく黙ってしまった。
沈黙を破ったのはアキだ。
「セレメのいう師匠はいい人なんだな」
アキがそういってくれるけど……モルゼットは悪夢で人を虐殺してるからな。
いい人ではあるのかもしれないけど、すっごい悪い人でもある。
悪いほうが有名だし。
「師匠はいい人だけど悪い人だ。俺も似たようなもんだろ」
まだ悪いことはしていないけど悪夢は俺だ。
勇者は俺を殺しにくる。
皆に被害が及ばないように気を付けないと。
「よくわからんが、いつか私もセレメのいう師匠に会いたいな」
アキが言う。
会わせていいんだろうか?
正体さえ言わなければいいのかな。
どうしても会いたいって言い出したら連絡とって聞けばいいし。
「いったいどんな修行したの? セレメくん、アキさんたちより強くなったみたいだし」
メーナが聞くけど魔法を頑張っただけだ。
剣の技術はまだアキとコリアスには及ばないだろう。
「ただ魔法を教えて貰って後は食料調達だけだ」
「私たちにも魔法教えて」
「んー。教えるっていうより見て覚えたから同じようにしてもらうしかないんだけど。あとコツはイメージすることとしか聞いてない。魔法は強いイメージが大事なんだと」
「イメージ?」
「そう。鎖ならただ縛るんじゃなくどこをどうやって縛って拘束するのかっていうのと同時に絶対千切れないってイメージを意識してするといいらしい」
「もっと具体的にしっかり思い浮かべて魔法を発動するんだね? それを瞬時にって難しいと思う」
メーナが眉を寄せて言っている。
俺はモルゼットの魔法を見たからイメージし易いんだよな。
メーダにも見せてみれば少しはイメージし易いかも。
あとで見せてみよう。
「とりあえず鍛練や遊びは後でだな。それより大事なことがある。セレメはこれからどうすんだ? また旅に出んのか?」
コリアスが聞いてきた。
「今のところ旅に出る予定はないよ。アキたちと救出班で黒い血を助けるつもりだ」
「そうか。目的は変わってないのか?」
「……どうだろうな。でもひとつ言えることは俺の手では出来なくなったってこと。誰かの手を借りないと目的は達成されることはないだろう」
俺は今世紀に生まれた悪夢を殺せないから仕方ない。
あともう一つ言っておくか。
「女神サマから聞いたけど、悪夢はもう生まれてるらしいぞ」
「……やっぱりそうなんだろうな。実は人間の国で勇者が見つかったんだ。近いうちに勇者についての情報を収集しに行くことになっている。勇者が魔人の味方になるとは考えにくいから、一応どんだけ強いのかとか調べることにしたらしいぞ」
コリアスの情報にまあそうだろうなと納得してしまう。
俺が悪夢なんだから勇者が現れて当然だ。
でも魔人は人間から悪夢の使いとされているから、勇者が仲間になってくれるというのは考えにくい。
今は敵といっても過言じゃない。
だから調べるのはいいことだ。
「それって俺も参加出来る?」
勇者は悪夢を倒す存在だから知っておきたい。
もし俺が本当の意味で悪夢になってしまったら殺してくれるだろうけど、魔人まで殺されちゃたまんないからな。
出来れば交渉して悪夢だけを狙うように仕向けなくては。
「参加したいなら俺が言っておくぜ。今回の魔物討伐の報告をすればセレメも配属されんだろ」
「でも救出班の訓練にセレメは参加していない。そこはどうするんだ?」
「あー、そこは今年の新入救出班とともにちょこっと参加ってことで出来ねぇか?」
「うーん。族長に相談してみようか。セレメと仕事が出来るとか夢みたいだな!」
コリアスとアキが楽しそうに話をしている。
こうやって一緒にいるとやっぱりここが俺の居場所なんだってわかる。
この関係はいつまで保てるだろうか。
誰かが俺を悪夢だと暴いてしまいそうで、ここにいることが少し怖い。
女神とドラゴン以外は俺が悪夢だとは見抜けないだろうけど、女神が勇者に俺の名前や容姿を言っていたら?
人間の国でそれが広まっていたとしたら?
そしたら情報を収集している黒い血にも俺への疑惑が生まれることだろう。
女神は俺が人を殺すことを望んでいるらしいから、すぐに勇者に俺を殺させるなんてことはしないと思うけど。
「久しぶりにセレメのヘンテコ料理が食べたいな。作ってくれるか? セレメ」
アキが期待に満ちた目を俺に向けて聞いてくる。
なんだか嬉しくなって俺はにやりとしてした。
仕方ないなあ。
「作ってやろう。師匠にも呆れられた食べずらい料理を出してやる」
「それは楽しみだな。というか師匠さんにも出してたのか……」
アキが可笑しそうに笑いながら言っている。
さーて、どんな料理を作ろうか?
アキも驚く料理がいいよな。
勿論、味は美味しくなくちゃいけないけど、食べずらさも大切にしなくては。
食べずらいけど食べてしまうような美味しさ。
そういう料理を作りたい。
最初はアキと長く一緒にご飯食べながら話たかっただけなんだけどね。
コリアスたちも食べたがったので今日の夕飯は沢山作らなければ。
アキとメーナも料理を手伝ってくれるらしい。
二人と料理するのも久々だ。
余計張り切ってしまうよ。
夏休み入って結構ストックが出来ました。
今日から毎日投稿したいと思います。
いつまで毎日投稿出来るかわかりませんが最低でも二週間は投稿しますのでよろしくお願いいたします!




