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血色の世界  作者: 蛹
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14話 血の色

 モルゼットの話がよくわからない。

 いや、理解出来るけどそれだとこう言っているようなものなんだ。

 火も水も土も闇も光もそれ以外の魔法も扱える。

 俺が今まで学んだなかで血の色を見れば使える魔法の種類がわかるというのが常識だ。

 それが悪夢にも当てはまるならレジェンドドラゴンのようにさまざまな魔法が扱えることになる。

 聞いて見るか。


「レジェンドドラゴンの血の色も見た目は黒いのか?」


「そうだ。レジェンドドラゴンというとガブロドラにはもう会ったのか?」


「ガブロドラ?」


 聞いたことがあるようなないような?

 多分あのレジェンドドラゴンがガブロドラって名前だった気がする。

 それも言って見て確認すればいいか。


「龍の英雄、世界樹の守護者のドラゴンであってる?」


「そうだ」


「それだったら会ったことある」


「そうか。彼は女神を崇拝しているから発言には気をつけろ。同類である私たちと話すことが好きだからまた会うことになるだろう。ここにも来るくらいだ」


 ここにも来るのか……。

 世界樹の守護はいいのか?

 そう思ったものの俺には関係ない事なので聞く気も失せてしまった。

 俺の目的に関係しなければどうでもいい。

 俺は悪夢を殺す。

 でも最優先は黒い血の汚名返上だ。


「しばらくここで暮らすなら、食べ物の調達をしよう。それから色々と悪夢のことを教える」



 それから一週間、モルゼットと一緒に魔物を狩ったり、釣りをしたり、森で植物を取ったりと、いろいろなことをやって覚えた。

 食べられるキノコや植物を覚えることに一番時間がかかったな。

 黒い血が魔族の国からも追い出されて森で生活することになったら役に立つと、必死で自らを暗示にかけて覚えることには成功した。

 そうでもしないと俺は永遠に覚えることが出来なかっただろう。


 今日も食料調達だ。

 でも今日からモルゼットと手分けして調達することになっている。

 俺は森。モルゼットは海。

 明日は俺が海でモルゼットが森になる。


「では昼になったら帰ってくるように」


「わかってるって」


「何かあったら連絡をくれ」


「あいよ」


 連絡と言うのは魔法道具のことではない。

 疾走祭の景品の魔法道具は家に置いてきたし。

 モルゼットの連絡というのは悪夢の力の一つのことだ。

 俺が予想した通り、悪夢は全ての属性の魔法が扱えるらしい。

 まったく気が付かなかった。

 でもモルゼットの説明で納得したこともある。

 いくら魔法を使っても貧血にならない理由だ。

 血の中に魔法を扱うのに必要な魔素っていうものがあるらしい。

 その魔素にはそれぞれの魔法の属性が当てはまるようで。黒い魔素なら黒い血で闇の魔法が扱える。

 青い魔素なら青い血で水の魔法が扱えるんだと。

 普通は一種類の魔素が体内にあるんだけど、俺の中には様々な魔素が存在してしまってる。

 だから闇の魔法だけ使っても黒い魔素しか消費されずに他の魔素が残っている状態だ。

 魔素が残っているから貧血のような症状は起きない。

 いろいろな魔法を同時に使えば貧血みたいになるらしいけど。

 らしいってのは俺はまだやったことないからだ。

 連絡手段以外の魔法は教わってないから他の属性の魔法の使い方がわからない。

 闇の魔法の使い方とまた勝手が違うんだ。


 連絡の魔法は闇と光と風の魔法の合わせ技なんだってさ。

 なんでその三つで連絡の魔法になるのかさっぱりわからないけどそれも後で教えてくれるだろう。

 使うだけなら意外と簡単だったし。


「グェエエ!」


 木の上から鳥が降ってきたので仕留める。

 闇の魔法ブラックリボンで絞殺だ。

 今日の昼か夕飯の食材になるだろう。

 背負っている籠にいれて森を探索していく。

 キノコや野草も毒がないか確認しながら袋に入れた。

 毒があるのは大体カラフルな色をしている。

 それ以外にも紛らわしい毒持ちがいるけど食べても苦しむだけだ。

 試しに食べてみたけど悪夢な俺は死ねなかった。

 モルゼットが言うには俺が食べたキノコは一般人が即死する毒だったらしいけど。

 流石は悪夢ということか。


 他にも崖の上から飛び降りたり、剣を自らに刺したり、首吊りしたりしてみたけど、どれも死には至らなかった。

 やっぱり自殺は無理だな。

 今振り掛けると一般人には絶対真似してほしくないことばかりをやっていた。

 今更だけどさ。


 今日食べる分の食料を集めたのでモルゼットの家に帰ってきた。

 太陽が真上にあるから丁度昼だな。

 先に昼食の支度でもしておこうか。

 そう考えて鳥を解体しているとモルゼットが帰ってきた。


「先に帰ってたか」


 モルゼットが感心したようにいう。

 俺一人で食料調達させるのが少し不安だったらしい。

 最初の物覚えの悪さを見たせいで、そう思わせてしまったんだろうな。


「作りながらやるか」


 モルゼットが独り言のように呟いてから俺の側にある鍋の取っ手を掴んだ。


「セレメ。この中に今から水を入れる。真似しろ」


 真似、ね。

 真似は得意だけどコツを教えてほしいかな。

 まあ、まずは見てみようか。


 モルゼットが鍋の上に手を翳(かざ)して何も言わずに水を入れた。

 なにがなんやら。


「コツはイメージだ」


 連絡魔法のときも聞きました。

 それで連絡できてる俺も俺だけどさ。

 連絡魔法のときは連絡したい相手のことを強くイメージして伝えたいことを念じたら出来た。

 結構簡単に。

 闇魔法で魔法を作っていた感覚が活かせている気がする。

 今回も頑張ろうか。

 水をイメージする。

 雨とか井戸の中とか海とか。

 海はダメか。

 塩水になってしまいそうだ。

 川をイメージしよう。

 そのままの状態で鍋に手を翳し鍋の中に水が溜まるよう念じる。

 念じる。念じ続ける。


「頑張って水を出してくれ。私は別のことをしている。どうしても駄目なら私がまた見本を見せよう」


 どうして俺の周りにはちゃんと教えてくれる人がいないのか。

 真似しろっていうばかりだ。

 やるけどさ!



「まだ出来てないのか? 連絡は簡単に出来ただろう。連絡より簡単な筈だぞ」


 モルゼットに言われてしまう。

 モルゼットはもう魚と鳥を捌き終わり、キノコや野草も洗って切り終わっていた。

 どんだけ時間が経ってるんだよ。


「もう一度見せるぞ? こうだ。いいな?」


 今度はモルゼットの魔法をイメージしながらやってみる。

 全然出来ない。

 魔力が動く様子も減る様子もないし。


「おかしいな。水魔法を扱うのが苦手なのか?」


 モルゼットも困惑している。

 とりあえず先に昼食だ。

 鍋に野草と魚を入れて鳥は焼く。

 火の魔法を使おうともしてみたけど出来なかった。

 何がいけないのか?

 出来上がった料理を二人で食べながら理由を考える。

 全くわからなかったけど。


「一通りの魔法を使ってみよう。まずは風だ」


 外に出て風を吹かす。

 これは簡単に出来てしまった。

 次に土は駄目で、光は使えた。

 珍しい属性の雷とか氷とか草花を操るとかも試したけど全く出来ない。

 風と光しか扱えなかった。


「なるほどな。ではこうしよう」


 モルゼットは解決案を思いついたらしい。

 俺は全然わからないけど。


「セレメ。今度はかなり難しい魔法を教える。見ていろ」


 モルゼットが何もない空中に黒い穴を作った。

 そして側にあった大きな流木を穴の中に入れる。


「これは空間収納と言ってカバンや籠にがなくてもここに入れれば持ち運び可能にする魔法だ。悪夢の使える属性をすべて使っているといっても過言ではないほどの難易度だ」


「俺はまだ水や火も出せないのにそんなの出来るわけないだろ」


「意外と出来るかもしれないぞ。カバンの口を開けるイメージでやってみろ」


 やってみた結果。

 出来てしまった。

 自分でも驚いた。

 なんで出来たの?


「やはりな。連絡の魔法は風と闇と光を使っていた。だから風と光は使えたんだろう。闇と合わせて別の属性を使うとセレメの場合は他の属性も扱えるようになるんじゃないか? 変ではあるが実際出来てしまったしな」


 モルゼットが言っている。

 うーん。

 納得は出来ないけど納得するしかないか。

 試しに水の魔法を使って水を出してみたら出たし、モルゼットの言った通りなんだろう。

 他にもモルゼットに悪夢ならではの魔法を教わった。

 その量は膨大ではあったけど黒い血の為に使えるものばかりだったから全て覚えることに成功することになる。

 

次話は7月21日投稿予定です

次話予告、空飛ぶセレメ

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