灰色の血/1話 神託
一人称はセレメくんのものではありません。
読まなくても問題ないので読み飛ばし可です。
今日もいつものように教会の掃除だ。
女神ラシディーリン様が降臨されるかもしれないからちゃんと綺麗にしておかないと。
気合いを入れて掃除を始めてしばらくすると声をかけられた。
「サーデルは偉いですね。隅々まで掃除をして」
僕たち白い血の子供を見守っていた神父様がいう。
「はい。ラシディーリン様が見ていらっしゃるのですから綺麗にしておかなければなりません」
「その心、忘れないで下さいね」
神父様が優しい笑顔を向けてくれる。
僕はもっとやる気になったので別のところも綺麗に掃除していく。
「それはそうと、サーデルは明日、成人の儀を受けるはずですね」
「はい。僕は明日、十五歳になりますので」
「勇者はまだ見つかっていません。もしかしたら貴方が勇者かもしれませんよ?」
「はは。まさか」
そんなわけないだろう、と思う。
だって僕の血は皆の血と比べて白くないんだから。
灰色の血だ。
白に見えるくらい薄いけど灰色だ。
純粋な白ではない僕が勇者なわけない。
掃除をしながら歯を食いしばる。
自分が勇者だと夢を見たことがあるから、自分の血が灰色だと気がついたとき絶望したものだ。
ああ、神よ、夢くらい見させてくださってもいいではないですか。
夜が明けて目が覚めれば、僕はいつものお祈りをする。
自分の部屋で膝をつき、ラシディーリン様に感謝の心を伝える。
今日は成人の儀を受ける日だ。
お祈りが終わったあと、神父様のところへ向かう。
神父様のいる部屋の前。
コンコンとノックをした。
「おはようございます。サーデルです」
すぐに神父様は部屋から出てきてくれた。
僕の成人式はひっそりとと行われる。
僕がそう望んだ。
盛大に祝われても僕は困ってしまう。
教会の祭壇の前で膝をつき、手を合わせて祈る。
神父様と仲のいい友人二人だけが僕を見守ってくれていた。
神父様が儀式の言葉を紡ぐ。
僕はその言葉の意味をしっかりと心に刻み今後も努力していこうと心に誓った。
そんな時。
女性の声が聞こえてきた。
いや、頭の中に響いたと言うべきか。
その声はか細くも存在感のあるとても不思議で綺麗な声だった。
この声を僕は知らない。
けど知っている。
そんな矛盾した感覚が僕を襲う。
『汝は英雄なり。故に人を救う義務あり。国の滅び、人の滅びを阻止せよ。汝は人の英雄、国の守護者と名乗ることを許さん』
「ひとの、えいゆう?」
何を言われたのかわからず僕はそう口にしてしまう。
僕が零した言葉で神父様の目が大きく見開かれた。
『我はルーダ・ラシディーリン。地上にて女神と呼ばれたり』
やはりこの声はラシディーリン様らしい。
ってことは僕が勇者?
『汝、人の英雄、国の守護者、故に世界の英雄を殺せ。それ、汝の定め。汝、勇者と呼ばれる者なり』
英雄、守護者を殺せ?
何を言っているんです?
それになんで僕が勇者なんですか!
神様なら知っているでしょう!
僕の血は灰色だと!
諦めていたことを急にほいと出されても戸惑う。
だから混乱して何かの間違いだとラシディーリン様に言って欲しかった。
『灰色の血、故に汝なり。その血は勇者の証。白に近き色、しかし悪夢と同じ血なり』
……悪夢と同じ血?
ど、どういうことだ?
『いずれわかる』
僕は悪夢なのか?
そう問いかけて見たけどもう声は聞こえない。
心の声が読まれていたけど神様だから当然として、他にも気になることがあった。
英雄を殺せ。
勇者は悪夢を倒す者だ。
だったら悪夢も英雄なのか?
世界の英雄って言ってたっけ。
悪夢が英雄ならなんで人を殺す?
人を殺すことで世界が救われるのか?
わからないことだらけで頭から湯気が出そうだ。
「サーデル。人の英雄と言ったね。君が勇者なのかい?」
神父様が僕と同じように膝をつきそう聞いてくる。
認めたくないけど認めなければならない。
ラシディーリン様のお導きなのだから。
「……どうやらそのようです。神父様」
次話は7月7日投稿予定です。
次話予告、本の中の人
次はセレメくん視点に戻ります




