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【完結】乙女ゲームの事務員に転生したら、麗しの公爵様に捕まりました  作者: 水瀬みずか


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3/10

第3話 偶然はモブ事務員による必然の出会い

 あれから3日が経った。

例の屋上での件は、どうやらセドリック様の中だけに収まっているらしく、学院内に妙な噂は広まっていないようだ。

色気だけの男かと思いきや、実は良い人なのかもしれない。


そして、今日は第2のイベント。

近衛隊長補佐カイン・フォン・ヴァルターとレイアちゃんの出会い。

ゲームのシナリオでは、レイアちゃんが書類を抱えて歩いていると、角でカインにぶつかって書類を散らばらせてしまう。

そこで、クールなカインが無言で書類を拾うのを手伝う——というぶっきらぼうな接触が、彼女の心に静かに刺さるというものだった。

問題は、今日のカインの行動ルートが変わっていること。


原因は先週の剣術訓練でのちょっとした怪我。

療養のため、いつもとは別の経路を使っているのを私は把握している。


つまり、普通に歩いていたら二人はすれ違わない。

「これは、迂回させるしかない!」

私は道具箱を持ち、いつものカインの迂回ルートの途中、西回廊の分岐点に向かった。


分岐点の片方の廊下に「清掃中・通行止め」の立て札を立ててバケツを置き、モップを立てかける。


完璧!

迂回させるためだけに廊下を封鎖した。

実際には清掃など一切しないが、雰囲気は完璧である。

時刻を確認すれば、あと5分。

私はそっと柱の影に退避した。

カインらしき足音が近づいてくる。

立て札を見て、少し眉を動かして——迂回を選んだ。


そして、その30秒後にレイアちゃん。

こちらも立て札を見て、首を傾げながら——迂回を選ぶ。

角の向こうで「あっ」という声と書類の落ちる音。

私は影の中で目を閉じ、そっと唇の端を持ち上げた。


「……随分と手が込んでますね。」

「ひっ!?」

今度は柱の反対側の影から声がした。

壁に凭れるようにして腕を組んでいるのは、またしてもセドリック様だ。

その表情はまた例の楽しそうな色で彩られている。


「なぜ、ここにいらっしゃるんですか!」

「散歩ですよ。ところでヨウさん、さっきの立て札、モップのバケツは空っぽでしたね。」

「……清掃前の確認です。」

「ほう。」


しばらく沈黙が続いた。

角の向こうでは、レイアちゃんとカインが書類を拾い合っている気配がする。

「……怪我はないか」というカインの声が聞こえた。

よしっ!!


「貴方は何をしているんですか、本当に。」

セドリック様の声には、今度は純粋な興味の色があった。

私は答えなかったが、多分この人には何となくバレている。


「事務員の、仕事です。」

「そうですか。」


彼は静かに笑った。

廊下に差し込む西日の中で、その笑顔が——どうしてか——息を呑むほど綺麗だった。

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