王と聖装士と
前回の話
ローグ達は無事に聖王国マ二・パティリへと辿り着く。闘技場の様な城門を抜け、剣聖レインとの出会いをした。
皆で談笑をしていると、王からの招集に聖装士であるリーザとシンディーは王の元へと向かうのだった。
「おー、遅かったな。早く座ってくれ」
「待たせてすまんなギル。王もご謙遜で何よりだ」
呼び出された部屋へと足を踏み入れたシンディーとリーザ。
この部屋は謁見とは違い、密談などを行うために用意された部屋である。その為、余分な調度品などは無く、中央に大きな円卓が一つ。
今日はただの報告会であるために四人の給仕が部屋の隅で待機しているが、本来なら関係者以外は立ち入り禁止だ。
黒髪に控えめに整えられた髭を生やした王、グリモエル・デウスと立派な鬣を彷彿させる聖装士、獣王ギル一声かけると二人もすぐに椅子へと腰を落とす。
「では、みな集まったようなので始めるとするかね」
王の発した声に表情を引き締め、みなが視線を中央へと向ける。
別段緊張しているわけでもなく、与えられた役割をこなす様に淡々とした口調で報公会が始まった。
「ではまずは獣の国から報告を頼むよ」
今回の視察には聖装士自らが赴き、見聞きしてきた事の報告会である。
獣の国、首都ベスティアには獣王ギルこと、ライル・ギル。
技の国、首都テクノリアには剣聖レインこと、リーザ・レイン。
商の国、首都ティーグには魔王リュールこと、シンディー・リュール。
魔の国、首都マギアークにはシンディーの管理下の為、不要との判断だった。
そして聖王国、マ二・パティリは王家のお膝下であるため、こちらには王自らが視察を済ませている。
「じゃ~俺からだな。 母国を悪くいいのは気が引けるんだが、情けなかったぜ。最近は愛玩の獣人も増えてきはぶりがいいんだろうな。仕事は良くても戦闘は話にならねーよ」
獣の国、首都ベスティアでは獣人の男達の大抵が〝ワーカーズ〟という労働派遣を中心とした仕事で賃金を得るのが普通だ。そしてその一方で、女性の獣人は疲れて帰ってきた男達を少しでも癒すために夜の店で働くことが主となっている。
「そうか・・・」と、王が呟くと、「次は私ね」とリーザが口を開き始めた。
「テクノリアは面白い国ではあったけど、やはり戦闘向きって感じではなかったっわ。・・・ただ気になる事が一つあったのよ」
リーザの言葉に三人が怪訝な顔を作り、リーザへと視線を向ける。
「気になる事とは何だね?」
「何人か不自然な回路を持った人たちを見かけたわ」
「「「不自然な回路?」」」
「ええ、うまく言えないのだけど、魔素が無理やり流れているように見えたわ。変な言い方になっちゃうけど、魔素が嫌がっているようにも見えたわ」
リーザの目だからこそ見えた光景であり、その眼の存在を知っている三人は上手く理解できない事を悟った。
「ではレイン嬢、もし何か分かったら教えて欲しい。他の者も出来るだけ協力する様お願いしたい」
王の言葉に皆が頷きで返すと、今度は一斉にシンディーへと視線が集まった。王もギルも口に出してはいないが、オンディーヌから連絡を受けているのだから気になってしょうがなかった。
「あー私か。先行して情報は上げているはずだから簡単に言うが、王の指示通り危険指定魔法を使ったうえで私の完敗だ」
シンディーの言葉で報告が間違いではなかった事を確認した王だったが、隣に腰を掛けている獣人だけは納得がいかなかったようだ。
「なぁリュール、冗談はよせよ。いくらお前が手を抜いたって負けるってのは言いすぎだろ?」
この中で事実を目撃したのはシンディー只一人。
シンディーの実力を知っている人間がいきなりこんな事を聞いたら疑問に思うのも当然。
「それなんだが・・・リュール嬢、今一度確認するが本当にその男は四大精霊を引き連れ、更に回路を六ケ所も保有しているのかね?」
「あぁ間違いないだろう。アウラに関しては直接見た訳ではないが、それはつまり〝奴に手加減された状態で私が負けた〟と言うに等しいからな」
初めてローグと会った時、あの時はアウラは現れなかった。そして大会の時には姿を見ないまま決着がついていた。
この言葉に本人を見たリーザでさえも開いた口が塞がらなかった。
その場の全員が黙り込み、考えているようなそぶりを見せ始めると唐突にギルが口を開く。
「・・・なら簡単じゃねーか。俺とそいつで闘ってみればいい。そうすればハッキリするだろうさ。聞いた話じゃここに連れてきているんだろ?」
それを聞くなりシンディーの顔が予想通りと言わんばかりにしかめっ面を作る。
元々、獣人は好戦的な種族である。シンディーも強くなる過程が好きではあるのだが、獣王ギルはそれの比ではない。目や頭の回路を持たずに聖装士になった唯一の男は伊達じゃない。
「そうくるとは思ってはいたがな・・・。せめてそれは本人に確認してくれ」
溜息を吐きながらも近くの給仕にローグの居場所伝え、こちらに来るようにと指示を出しておくことにするのだった。
***
~~~ローグ point of view~~~
「失礼します。ローグ・ミストリアと申します」
内心冷や汗まみれになりながら室内を見渡す。
中央の円卓にはさっきまで談笑をしていた二人が手を振りながらこちらを見ているが、その先に見える男性二人の内、鬣の様な男が好戦的な視線を送ってくるのだ。半ば無理やりに連れてこられた上に、あんな目で見られたんじゃたまったもんじゃない。
「ローグ、寛いでいたところすまんな。そこの男がお前に相談があるそうだ」
シンディーが顎で好戦的な男を指し示し、なんとなく察してしまった現実を脳内で拒否しながらも視線を向ける。
だが好戦的な目つきの男よりも先に、隣に座っていた黒髪の中年が席を立った。
「失礼、まずは先に挨拶をさせてもらえるかな。 私は聖王国の王を務めているグリモエル・デウスと言う。人前に出る機会があまりないので覚えてもらえると嬉しいよ」
この場にいるのだから偉い人なのだとは思っていたけど・・・王だったんだ。
すると今度は隣の男も立ち上がった。
「俺は聖装士のライル・ギルだ。つーか、んなとこに立ってないで座りな。大丈夫だ、取って食ったりしねーから安心しな」
どう見ても取って食われそうとは口が裂けても言えず、一礼した後におずおずと椅子に腰を掛ける。
「お前の話はさっきリュールからも聞いた。・・・聞いたんだが、やっぱりこの目で見ないと信じられないって話になってな、リュールとは殺ったんだろ? なら俺もおまけだと思って一つ頼むよ」
頼みこむ様に言ってはいるが、さっきから目がぎらついているギルに何と返すべきか迷ってしまうが、これだけは言わせて欲しい。
──そんなおまけいらないよ!!
と、口に出せればどれだけ楽になれるのだろうか。
深いため息が自然と溢れていた。今もまだ続いている獰猛で好戦的な目つきは聖装士だからとか俺の強さを見たいとかそんなんじゃない。あの目は壊れないおもちゃを見つけた目だ。
だけどシンディーと闘って、メアリーに心配されるようになって、アイラの仇が取れて、少しだけ意識が変わってきている。
──俺はどこに立っているんだ?と。
シンディーと闘った時、あれは実質負けたと思っている。
だってアイラの助けがあって初めて届いただけであって、普通なら最後の魔法で死んでいただろう。
だから少しだけ気になってしまった。
もう一つは続きみたいになってしまうが〝人を殺さない〟為に力加減を覚えた方がいいと感じている。
回路が増えてからちゃんと戦ったのはアウラとシンディーだけ。俺の中では力加減が1と100みたいな感じになっている事にも気付いた。
メアリーには悪いが、あの時は1だった。
それではいつか力が拮抗した際に、誤って殺してしまいそうな気がする。
今回はシンディーが何とかするという交渉をしたわけだけど、これからもそうなるとは限らないのだから、力加減を覚えなくてはいけないと感じている。
そして相手はシンディーに続いて世界最強の一角であるならば〝殺すこと〟は無いだろうと思ってしまった自分がいた。
「・・・分かりました」
──悪いけど試させてもらおう。
その言葉を待ってましたと言わんばかりに円卓に手を着き、威勢よく立ち上がると歓喜一色に顔を染め上げていた。
「おぉー!やってくれるか! じゃあ明日の陽が昇る頃に始めようじゃないか!」
少しだけ高揚している自分を不思議に思いながらも頷くと、グリモエル王も立ち上がり視線を向け、なぜかこちらも歓喜に顔を染め上げていた。
「では私は城前の闘技場を使えるように手配しておこう。多少兵や騎士団が見学することになるとは思うがそこは大目に見てくれ。──おい、誰か来てくれ!急遽準備してもらいたい事がある!」
獣王ギルがご機嫌な顔を隠すことなくはしゃぎ、王も満更でもない顔をしながら飛び寄ってきた給仕に伝えている。
俺としては試せればよかったんだけど・・・
王よ、なぜそこで給仕に酒の準備を頼んでいるんだ。
なに席の準備をしっかりしとけって・・・
──どういう事?
何が起きるのか不安になりシンディーを見ると「ヤレヤレ・・」みたいな感じになってるけど、口元笑ってるよね?
気になった方、面白いと思った方、読んであげたんだからねっ!と思った方。
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作者が喜んで自室で狂喜乱舞します。
*注:スリーサイズなどにはお答えいたしかねます。(作者:♂)




