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最強って何がいいんですか?  作者: Ⅾ
最強になった男
11/27

それぞれの想い【2】

 自身が殺した男と自分との違いに迷い、本気を出すことの意味が見いだせないローグ。


 そんな時、メアリーの声が届いた。

 「──ローグ!!死なないで!!」


 こんな声が聞こえたんだと思う。


 好意的な殺しは禁止している大会ではあるけど、聖装士である彼女ならいともたやすく実行しそうでシャレにはなってない言葉だ。そんな他人事みたいな感想しか出てこなかった。


 なんとなくだけど声の主が誰だかは分かった。分かったけど、彼女はなんでこうまでして俺に死んでほしくないのだろうか? まだ二回しか会ってもいないうえに、偶然が重なっただけに過ぎないのに。


 それでも今はありがたい。

アイラが死んで俺の周りから近しい人は消えた。そんな今、自分が死ぬことを悲しむ人がどれだけいるのだろうか。


 心配してくれる人に巡り合えたのは嬉しい。それに、そのせいなのか分からないけど体が軽くなった気がする。



 ──俺はまだ、戦える気がする。


 痛みが体に走るのを無視して体を跳ね上げ、距離を取るも着地の衝撃が体を揺らし、激痛が体を走り抜ける。


 ──もって二回か?


 体の上げる悲鳴が否応なく現状を伝えてくる。手を握ったり開いたりを繰り返しながら感触を確かめるが、刀を振れるのは後二回が限度だろう。

魔法はこの痛みの中で使えるとすれば止まったまま発動させる風塊の壁(ヴェントゥースゼロ)位だろう。

他はとてもじゃないが使える気がしない。痛みがイメージを曇らせ、下手をすれば発動すらできないかもしれないのに、世界最強の魔法使いに挑むなんてそれこそ自殺行為だ。


──ならどうすれば俺は勝てる?


***


 ──思っていたよりもつまらん。


 それが私の正直な感想だ。

 死の雨(ラストスコール)の二段階目は殆ど初見殺しみたいなものだから分かる。


次がいただけない。私の優秀な追跡者(フォルティストラケラ)に対して何故斬りこんだ?あそこは本来なら眼前に来た水を防ぐ場面だろうに。その後、作り上げた時間の中でどう対処するのかが楽しみだったのに。おかげで私が虐めているみたいだ。


 ──実にくだらない。


 さっさと終わりにしてしまおう。こんないじめみたいな事をするために手にした力ではないのだ。王に報告する時は適当に伝えておくとしよう。


 一応は観客席も満席にはなっているし、あれだけ運営にも発破かけてしまったんだ。このまま簡単に勝ってしまってはそれこそ茶番だろう。最後くらいは此処を壊すくらいの勢いでやるか。せっかく使用許可も下りているしな。


 「オンディーヌ、(とど)めだ。力を貸せ」

 「あらあらぁ~、まあ~構わないわよぉ~」

 「行くぞ、──終わる世界(アクワディザスター)


 魔法名を紡ぐと同時に傍にいたオンディーヌを抱きしめる。


 私が聖装士になり、初めて〝魔王〟などと言われ始めた最初の魔法。現在この世界において、初めて第一種危険指定魔法などという法を創らせてしまったオリジナル魔法。


そして私から楽しみや未来を奪った魔法でもある。この魔法を見て全ての人間がひれ伏したのだから。


 イメージは簡単だ。全てが呑み込まれるような渦潮。世界が水で溺れていく行く様を、この世界に生きる全ての物が死に、全ての物が消えて行くイメージ。よく破壊と再生なんて言葉を聞くが、これに再生なんていらない。呑み込み、壊し、奪い、殺す。それがこの魔法の根源だ。


 観客と私達を隔てる壁の近くに水が現れ、それが空へと向かい手を伸ばし始める。上空には水の天井が激しくうごめき、円柱上の水が私達を包み込む。


これが始まりの合図。


本来なら首都位包み込むものではあるが大事なのは見せつける事だ。聖装士と魔王。この二つの名にどういう意味が込められているのか。これはそれを見せつける為の魔法だ。



 「──アウラ!力を貸せ!」


 「やってやろうじゃないか!ローくん!」


「──風塊の壁(ヴェントゥースゼロ)!」



 私の魔法を見てまだ何かするつもりなのか?

 まぁいい。これがこの魔法が終わる頃にはお前はそこに立っていられないだろうしな。


足掻くなら足掻いて見せろ。それが出来たのなら少し位は褒めてやらんでもない。立っていられればだがな。


***


 「オンディーヌ、(とど)めだ。力を貸せ」

 「あらあらぁ~、まあ~構わないわよぉ~」

 「行くぞ、──終わる世界(アクワディザスター)


 ──終わらせる気かよ。


 辺りを包み込む水を見ながらも、血を流したのが功を奏したのか酷く冷静でいられた。だから気付けたのかもしれないが、さっきまでの死の雨(ラストスコール)の様に単純な位置だけを指定して行使する魔法でもなければ、優秀な追跡者(フォルティストラケラ)の様に水と術者本人を糸のような魔素で操るような感じではなかった。まるで水と魔素が溶け込むかのように見えた。


 ──これはやばい・・・


 左目の回路で見えた景色と直感が警鐘を鳴らし、攻勢に出る事をすぐに諦められた。

ただ、防御に回るにしても魔素の量が酷い。俺だって魔法を使っているけど、こんな魔素の量なんて感じたことも無い。

 ならば全力で防ぐしかない。自分の力だけじゃ防ぎきれるかすら怪しすぎる。


 「──アウラ!力を貸せ!」

 「やってやろうじゃないか!」

 「──風塊の壁(ヴェントゥースゼロ)!」


 風の壁がアウラの声と共に圧迫感を増していく。

 これであの魔法は防げるだろう。後はどちらの方が先に体力の限界を迎えるかだけだ。


 ───ジュワァァァァーー!!


 風の壁に吸い込まれるように水がなだれ込み、ぶつかった傍から水が激しい音を上げ蒸発していく。


なんとか耐えられているらしい。それでも全方向からの魔法では逃げる術も立ち向かう術もなく、ただただ次から次に迫ってくる水が蒸気に変わっていくのを見ているしかできなかった。


 それよりも、自分の予想が甘かった。

 蒸気に変わる様を見続けて気付いたが、水が当たれば当たるほどに壁がゆっくりとではあったが薄くなっていた。それと同時に異変も感じ始めた。

 先程から魔素が抜け落ちるように無くなっていく。


 《──アウラ!さっきから体内の魔素が抜けていくんだ!何か分からないか!?》


 普段なら淡く炎の様に揺らいでいた輝きが、みるみる内に小さく、そして弱くなっていく。普段通りに回路を開放しているにも関わらずだ。


 《ローくん!魔素が奪われてるんだよ!》

 《そんなことあるのか!?どうにかならないのか!?》

 《ええっと多分だけど・・・》


 魔王が作り上げた水はオンディーヌと魔王の魔素を混ぜ込んだ水らしく、それに触れる度に俺の魔素も取り込まれているらしい。どんな理由でそんなことが起きているのかはアウラにも詳しくは分からないらしいが、突破口としては水に触れなければいいらしい。



 《──ってことだよ! このままだと時間の問題だよ!?》


 《って言われてもそれだとどうにもできないんじゃないか!?》


 《あっ・・・そうだね。うんうん》


 ──そうだね。 じゃないから! こんなの生身で食らったら死ぬから! ふつーに死ぬから!!


 魔法を解けば水に飲まれてバットエンド。魔法を維持しても壁が全部剥がれたらバットエンド。

 魔王の魔法が先に尽きない限りバットエンド。このままではどちらが先に力尽きるかなんて考える間もなく俺だ。

それもじわじわと自分の命が削られていく感じが心臓に悪すぎる。こっちはただでさえ全身穴だらけだって言うのに。


 ──それなら、俺に出来るのは水が消えるまで耐えきってやることだ!


 諦めは付いた。負けを認める事じゃない。自分の体内にしか魔素がないのなら、一滴も無駄にしないように全て使い切るまで足掻くことを。


 外の景色を眺めるのを止め、目を閉じて自分の内側にだけ神経を向ける。回路なんて言ってはいるが、見たことの無い体の内側。それを頭の中で勝手にイメージし、そこに魔素がないか感覚で探っていく。


豆粒よりも遥かに小さな淡い青緑の粒。それがふつふつと泉から湧き出てくるに思えた。

 それは上半身にはほとんどなかったが、下半身の方にはそれなりに残っているのに気付く。


 その残っていた魔素をゆっくり頭の回路まで、見えない糸で引っ張るようにイメージを重ねていく。後はひたすらに針に糸を通すようなこの作業を終わるまで続けるだけだ。


 《もし魔王の水が消え始めたら教えてくれ。それまでは集中する》

 《オッケー》




 それから永遠とも感じられるほど、ひたすら魔素を頭の回路へと送り続けるも、アウラからの返事は無い。まだ水が攻め続けているってことになるのだが、正直そろそろ限界が近い。下半身に残っていた魔素も殆ど頭の回路まで運んだ。体内に残っているのは本当に少しばかりだ。


 少しだけ頭の中に〝死〟をイメージしてしまう。


 結局死なんてものは死んだ奴にしか分からない事。だからこそイメージしてしまったのかもしれない。アイラが死んだと知った時は夢の中で遠くから見ているような感じだった。だからアイラの言葉は耳に届いても苦しみまでは理解してあげられなかった。辛かっただろう、痛かっただろうといった俺の想像にしか過ぎない。


 ──これで俺が死んだとしたらやっぱり痛いのだろうか? 辛いのだろうか? 後悔とかするのだろうか? それとも死ぬ間際にアイラが迎えに来てくれたりするのだろうか?


 刹那の間にそんな事ばかりが頭をよぎった時、閉じているはずの瞼に景色が映り始める。


 それは薄暗い洞窟にも似た様な部屋。

ぽつんと光るランプが物悲しさを訴えてくるような部屋に、一つの人影があった。

はっきりとは見えなかった人影がこちらへと歩み寄ってくる。

 分かったのは麻の様な布同士を糸で引っ付けただけの、服と呼んでいいか迷ってしまう格好をした人。

髪は膝まであるから、もしかしたら女性なのかもしれない。それが更に近くまで寄ってくると、布の隙間から見える、肌を縫ったような傷跡が全身にくまなく入っていた。それだけで心臓が跳ねあがってしまった。


──まるで生きている人形だ。


粗末な服を身に着け、覗く肌は縫われたように腫れあがっている。少なくてもこんな人間は見たことが無い。そんな状態になるまで傷を負う姿が想像できない。実際にそんなことがあったら普通は死んでしまうはずだ。


 その人形が手の届く距離にまで来たところで立ち止まった。


 歩み寄ってきたときは足元を眺めていたそれが顔を上げたところで、俺は何が起きているか分からなくなった。


 顔を上げた人形。それはどう見てもアイラだった。

青い髪、輪郭、唇、目までも間違いなくアイラだ。違うのは失ってしまった表情。

それにあれほど健康的だった体はガリガリに痩せ細っている。


 《・・・アイラ・・・なのか?》

 《・・・》


 言葉を発しない。ただこちらをずっと見続けているだけ。ただそれだけ。

 嬉しさと悲しさが込み上げ、歩み寄ろうとした。

 そして触れようと手を伸ばすと、アイラは消えてしまった。


 咄嗟に目を開き辺りを見渡すと、だいぶ薄くなった風の壁と、未だになだれ込んでくる水。


死期が近付いている自分を迎えに来てくれたのだろうか?


 《──ローくん!?》


 《どうしたんだ?こっちならそろそろ限界だぞ》


 目を開け、現実を見ても心がそれを拒否していた。会いたい人に夢とは言え、会えたのだから。


アウラの声を聞いて初めて現実に引き戻されたような不快感を抱きながらも返答しておくと──


 《そうじゃなくて! 気付いてないのかい!?》

 《何がだ?》

 《足を見てごらんよ!》


 何をそんなに慌てる事があるのか、分からないまま自分の足へ視線を移す。


すると左足が燃え盛るように〝黄緑色〟になっていた。


 ──これはアイラが回路を使った時の色。


 《・・・そうか。まだ死ぬなって事なのかもしれないな》

 《どういうことだい!?》


 アウラの問いには答えず、再び自分の体の内に集中する。


 ──あぁ、やっぱりある。


 魔素がさっきまでとは比較にならない程に潤沢に存在していた。さっきまで底が見えていたのに。


 理由なんて分からない。しかも、この感じだとアイラの回路が増えた時と違って、アウラでさえ把握できなかった事なんじゃないかと思う。


でも理由なんて正直どうでもよかった。アイラが身近にいる様な、そんな気がしてきたから。まだ死なないで、そんな風に言ってるんじゃないかと思えたから。


 《アウラ、魔王の様子を教えてくれ》

 《なんなんだい一体・・・。ディーちゃん達は・・・なんか膝をついているから、あちらもそろそろ限界かな?》

 《そうか》


 アウラの言葉が正しいのを証明するかのように辺りを包み込んでいた水が徐々に勢いを無くし、引いていく。

 そのおかげで蒸気の量も減り、幾分か空が見えるくらいに水が引いたのを見計り、風塊の壁(ヴェントゥースゼロ)を解除、すぐに上空へと高く飛び上がる。

 上には水で出来た天井が見えたが、そこまでたそり着く前に体の向きを変え、予想通りだと確認できると魔法を唱える。


 「──変革の廃墟(カタストロフルイン)


 唱えた瞬間、大気が押しつぶすかのように地面へと動き始める。

 変革の廃墟(カタストロフルイン)は大気を地面へと叩きつけ、全てを押しつぶす魔法。俺はそれを自分の背中に向け撃った。


 完全に水が引けてしまったらこちらの動きがバレる。膝をついているならそれなりに消耗しているはずだけど、もしまだ俺の知らない魔法を撃たれ、それに対応できなかった場合、同じ轍を踏むことになる。それを避けるならこちらの状況が分かっていない今が奇襲の時。それが一番生き残る可能性は高いはずだ。


 背中を押しつぶすような風を受け、魔王の元へと空から奇襲をかける。予想通り、魔王の近くは水が無い。自分の魔法を自分で受ける様な事はしないとはいえ、これが宙に浮いていたり、地面に潜っている場合なら奇襲が出来なくなるから、確認ができた時は思わず口角が上がってしまった。


 着地直前に変革の廃墟(カタストロフルイン)を解除、それと同時に全身の回路を最大限まで開放。強引に足で着地し、驚愕に染まる魔王を見ながら更に魔法を唱える。


 「──切り裂く風(ウェスティオ)!」

 「──っ!! オンディーヌ!選択の盾(エーレ・クティオ)!」


 俺は刀に風を纏わせ、魔王は自分は自分を中心に水の防壁の様なものを張った。やっぱり膝を着いていたとはいえ、まだまだ余力があったらしい。


 魔王の周りにできた水を断ち切る為に、切り裂く風(ウェスティオ)で纏った刀で抜刀術を放つ。

水が斜めにぱっくりと口を開たのを見ると、驚いたのか、今度は一歩後ずさりながら苦渋に顔を染める魔王。

 それでも斬った先から水が自然に塞がろうとしているのを見て、すぐさま左手で支えていた鞘を掴み抜刀術の二連撃目に入る。

が、あとずさったせいで鞘が届きそうには無かった。

咄嗟に鞘から手を放し、抜刀した体を更に捻り、体を一回転。その間に右手に持っていた刀の向きを変え、刀の背で鞘口を叩く。


──魔王の体目掛け、鞘を飛ばす。


「──ッグ」


 飛んで行った鞘は魔王の喉ぼとけへとぶつかり、苦悶の声をあげながら両膝を地面につけ、両手で喉を抑える魔王。

その痛みが集中力を失わせたのか、魔王を包んでいた水が消え、すぐさま刀を魔王の首筋へと当てた。


 「・・・これで俺の勝ちだ」



 ***




 どうなったのか分からなかった。


 リュール様の魔法が徐々に引いていくと、中心から一気に飛び上がった人影、それが今度は急落下。それを目で追いかけると、既に刀をリュール様の首に突き付けていた。なんでリュール様が喉を抑えてるのかも分からなかった。

 それは私だけじゃなかったのか、周りで見守っていた観客たちも口をあんぐりと開け、誰もが言葉を発せずにいた。

 何と言ってもリュール様が使った終わる世界(アクワディザスター)はこの世界のほとんどの人が知っているといっても過言ではない。

あれを放った瞬間、観客席は阿鼻叫喚の様相を呈した。運営が何とか静めるまでにかなりの時間を要したが、その位にあの魔法は有名だ。


 私が覚えている限りだと、一度どこかの集落が全員盗賊になったなんて話があった。確か騎士団なども出動し鎮圧に向かったが、そこそこ大きな集落だったようで、返り討ちにあってしまったらしい。

そこでグリモエル王の命令で動いたのがリュール様。相手の人数も多く、砦の様を模した集落は周りに人里も無かった為、殲滅が決定。

そしてその砦もろとも、周囲二キロ全てを不毛の土地に変えたのがあの魔法だったはず。

 

 そんな魔法を何でローグ一人の為に使用したのかも分からなかったけど、血の気を引くには充分すぎた。


 そこから生還しただけでも奇跡と言っていい位なのに、さらにリュール様に刀を突き付けていれば誰だって状況を把握するなんてこと出来っこない。


 「──あっ・・・」


 ──思わず声が出てしまったわ。


 刀を納めたローグが何故かリュール様を横抱きにし、会場を後にしようと出口に向かい歩き出していたのだもの、声も出てしまうわ。


 横抱きは〝結婚式〟などでしかしない事をローグは知っているのかしら?


 知っていてしてるのだとしたら・・・・



***



 あのまま去っていくのも気が引けたし、メアリーの時の様に、魔王を医務室へと運ぶために横抱きにして歩き出した。

そんな魔王は喉を抑えたまま顔を真っ赤に染め上げ、口をパクパクと動かしているが何を言っているのかは俺にはわからなかった。

喉に鞘をぶつけたのは魔法を使われると厄介だったからしょうがないとはいえ、何が言いたいのか分からないというのも不便なんだと思わずにはいられなかった。


 そのまま医務室の扉を開け、魔王をベッドに横にさせた後、俺も集中力が切れ始めたのか意識がだんだん遠のいていった。

そりゃ全身穴だらけであれだけ戦えば無理もないかと思い、近くのベッドに横になろうと体を引き摺るようにして動かすと、医務室の扉が勢いよく開かれ咄嗟に顔を向けた。いや向けてしまった。


 「──シンディー姉に何しくさってるですか!!」


 「・・えっ? な・・にか・・した──」


 「問答無用です!!」


 その子供はこちらの話を聞くこともなく両腕の回路をいい具合に輝かせ、奇麗に鳩尾へと拳をめり込ませたところで俺は意識を手放すことになった。


 ──俺、何したの?


 ***




~~~魔王とローグが闘っている頃のとある場所~~~




 まるで牢獄の様な場所。

 そんな言葉が一番しっくりくるだろう部屋の中央には無機質なベッドが一つ。そこに青い髪の女性が寝そべり、それを見守るように三人の人が周りを囲んでいた。


 「この症状は一体なんだか分かるかい?」


 白髪の男が穏やかな声で話しているが、その場にいる二人は顔を曇らせていた。それを見かねたのか銀髪の女性が答える。


 「いいえ、私には想像もできないわ。回路が開いていないのに魔素が漏れ出ているなんて・・・。今は眠っているはずなのよね?」


 「ああ・・・。そのはずだ」


 長い茶髪を後ろに纏め、体中に細かい傷を持つ男も顔を曇らせたまま答えた。それを聞いた白髪の男が諦めた様な溜息を吐きながらも二人に視線を合わせ口を開く。


 「分からないのはしょうがないね。私もこんなことは初めてだし。 でもこのままこの子に何かあっては良くないから、組織内にある魔石を体の近くに置いておこう。 あと、クエの部隊から医師の知識がある者を傍に置いておいてくれないかい?」


 「あークエの奴なら確か明日には此処に戻ってくるだろうから、それまでは俺の部隊から出しておこう。応急処置位なら俺の部隊でも出来るからな」


 「じゃあそれでお願いできるかな? とりあえず様子を見ておいてくれ。もし何かあったら私の部屋に一報を頼むよ」


 それに深く頷いた茶髪の男をその場に残し、他の二人は自分達の部屋に戻る為歩き出す。それを静かに見送った茶髪の男は目の前の青髪の女性を見ながら漏れるように言葉を吐いた。


 「・・・あいつは優しすぎるな。 まっ、俺もその優しさに救われたようなもんだからしょーがねーんだけど・・・」


 感傷に浸っているような顔を作りながら、空も見えないのに天井を眺めるのだった。


皆さま、本日(06.06)になり、接客業以外の方などは休みの方も多いいのでは?と愚考している作者でございます。久々に日付を跨ぐまで書いていましたが、作者、そろそろ歳の関係で夜はきっついっす。


 皆様もあまり無理する事無いよう妄想と現実のはざまを生き抜いていただければ、作者は安心して寝れます。

 作者をいたずらに起こしたい場合、感想や評価などポチポチしまくると作者がナチュラルハイで歌を歌います(最近声が出なくなってきましたが)


 それでは次話ですが06.06の12:00に予約を入れさせていただきますので、寝てもいいよね?

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