元勇者、食料を用意する
状況が分からずに困るので整理しよう。
家に知らない男現る。村助けてと言って倒れる。食料確保に俺出かける。リース残る(ここ重要)。五分程食料確保。俺帰る。家帰宅。リース泣き跡あり。男性泣き崩れてる。粥まだ残ってる。てか食べた形跡なし。
うん、よく考えたらリースが泣いていたならこの男が全面的に悪いに決まっている。まぁ衣服などの防衛目的の魔法が発動した形跡はないから肉体的に何かした訳ではなさそうだ。
リースの来ている衣服やローブにはリースに害を与える奴に状態異常の魔法やこの前の主ならギリギリ耐えられる威力の魔法をわんさか仕込んである。ちなみに杖には魔力を流すと中級の魔法で攻撃しつつ居場所が俺に分かるようになっているので直ぐに俺が駆け付ける事ができる。
なのでこの5分間で俺はいつ合図があっても良いようにスキルで身体強化を掛けながら食材を集めていた。
慌てているリースは俺と視線が合うとほっとしたようで泣き崩れている男性をぺちぺち叩きながら「ご飯……食べて?」と言う。
男性は立ち上がると涙ながら頷き、涙ながらミルク粥をバクバクと食べ進め、途中でむせた。まぁあれだけ勢い良く食べてたら詰まるな。
キッチンの冷蔵庫から水を取り出しコップに注ぐと男の目の前に置く。今なおむせていた男性はそれを一気に飲み干してまたバクバクと食べ進める。
(体調良くしておいて正解だったな……。)
男の暮らしを考えればろくに飯を食べていないだろう。そこに消化に良いとはいえあれだけの量を一気に取れば吐き戻してもおかしくはない。
[翡翠の回剣]で強制的に体調を良くしたからこそ大丈夫なだけだ。まぁ流石に栄養素の補充は[翡翠の回剣]でも出来ないけど…。
そんなことを考えていると男性はミルク粥を綺麗に食べ切り、立ち上がる泣跡があるが気合いに満ちた表情をして俺に向かって頭を下げた。
「どんな事でもします!ご恩は必ず返します!だから、食料を「いや、助けるって言っただろ?良いから早く村の場所教えてくれ。届けられない。」」
男はまだ信じてなかったのか再三の頼みを言ってくるが既に了承はしている。時間も勿体無いし言葉を遮りながらリースを抱き上げ玄関へと向かう。
男は無言で付いてくる。玄関の扉を開け、外に出ると積んでおいた魔獣の山と果物や穀物の山を扉をくぐった男に見せながら収納魔法にしまっていく。
「こんだけあれば足りるだろ?後は薬草とかも多少は分けてやる。だから村の場所早く教えろ。」
「…………え?」
男は先程までの気合いに満ちた表情が消え去り、代わりに間抜けな顔で山を見ていた。




