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元勇者、子育てに奮闘する  作者: カランコロン
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元勇者と少女の説教

玄関の前で倒れていた(倒した)男性は現在ソファーで寝ている。この事自体は然程問題じゃない。よく分からない浮浪者にしか見えない程見すぼらしくても問題じゃない。


それよりももっと重大な問題が発生していた。


「おとーさん、なんで?」


「えっと、いや…、あのですね?」


「言いわけダメ!」


「はい!」


リースの怒りが中々冷めない事だ…。


気を失った男性を雑に扱ったらそれにリースが怒り、「おとーさん、ここ。」って床を指差した。


言われた通りに床に座ると対面にリースが座り、上目遣いでプクーとむくれている。


それからは30分もの間ずっと「なんで?」と聞かれた。流石に理由が他人だから雑に扱っても大丈夫だろう等と思ったからなんて言ったらリースが悲しむのが目に見えている。


言葉を濁しながら必死に言い訳を考えるが思い付かない。何時もなら直ぐにでも思い付きそうだが上手く頭が回らずに取り敢えずヤバイとしか思えない。


もういっそ神頼み(本気で嫌だけどリースの為ならする)でもしようか検討し出した所でソファーの上の男性が身じろぎをした。


「お、リース、起きるみたいだぞ?」


「⁈…………お父さん。」


言われ、男性の身動ぎを見たリースは慌てて俺の背後に隠れる。何とか誤魔化せたけどこれ余り教育に良くないな…今度から絶対にしないようにしよう。


身動ぎをしていた男性はゆっくりと上半身を起こし、辺りを見回す。すると俺と丁度目が合った。


「…………?ここどこだ?オメェさん誰だ?」


「まさかの記憶喪失とか定番は要らないからな?名前とか覚えてるよな?」


出会い頭の一言に不安がよぎる。そんな展開は漫画で十分だ。


頭を振り、目を覚まそうとしている男性は突如目を見開き俺に掴みかかってくる。


「お願いだ!助けて「ひぅ⁉︎」「うちの子泣かすな!」あっべらば⁈」


その剣幕に怯えたリースが悲鳴を上げ、反射的に平手を打ち込む。空中で二回転ぐらいしながら男性はソファーに逆戻り。


「い、いでぇ……。」


「うちの子の三メートル以内に近寄ったら両手両足バラバラに刻んでやる。」


「なんかすげー危ない親だ⁈」


男性は怯えながらソファーの後ろに身を隠し、身体を小さくしていた。だがそんな事はどうでも良い。抱き着いたままのリースを持ち上げて抱き締める。


「大丈夫。大丈夫だからなぁ。」


「…………⁈おとーさん……恥ずかしい。」


抱きしめた時に力が緩み、俺に抱き付こうとしていたリースだが男性を思い出し、頰を赤らめながら俯き拒否を示す。


それでも俺は抱き上げたままの状態で離すつもりはなく、リースもそれが分かっているのかおずおずと片手でちょこっと俺の服を掴んでいた。


「んで、なんか用か?」


そんな俺とリースの心温まる(笠戸心情)この光景を見ていた男性はゆっくりと近寄り、頭を床に擦り付けた。


「お願いだ!食料を分けてくれ!このままじゃ村のみんなが死んじまう!」


「…………。」


「…………。」


言われた内容にちらっとリースを見る。男性の願いを聞いたリースは何処か悲しそうだ。そして俺の視線に気が付くとジーと俺を見る。


この子は分かっている。俺が救う力を持っている事も、それを使うのを嫌がっている事も、目立つのを何よりも嫌がっている事を……。


だから自分の我儘で俺を巻き込みたくないのだろう。お腹が空いているだけなら自分のご飯をあげれば良いし、魔物に襲われていたなら匿って、少なくとも自分が出来る範囲の事はする子だ。


ただ、村の食料なら話は別だ。一人で出来る内容じゃない。だからこの子は俺に委ねているのだろう。


けど一つ勘違いをしている。それは……。


「リース、どうしたい?」


「⁈」


俺がこの子の我儘を聞くことに抵抗が無い事だ。

抱き上げたリースを両手で目線まで持ち上げ、目を逸らさないようにする。


リースはちょっとだけ目が泳いだが直ぐに視線を合わせて来た。


「………た……助けたい……おとーさん………手伝ってください。」


「よし、良くできました!」


そのまま高い高いに移行してぐるぐら回し、ゆっくりと下ろす。


「だ、そうだ。よかったな。」


床にへばり付きながらこっちを見上げている男性は何処か拍子抜けになっていた。



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