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これは非日常も氣龍にとっては日常  作者: 神常神


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15/17

激昂

デルが死ぬ一分ほど前。

ミサは窓の外から男を見つめていた。

彼女の能力(リチュアル)眼圧(スローライフ)

見つめたモノの動作を遅くする能力だった。


「惜しいですっ。もう一歩でした」


小声で愛が言った。


「ええ。でも次で決めてくれるはず」


ミサがそう返したその時、愛がミサの服を引っ張り呟いた。


「やばいです。もう一人いました」

「えっ?」


ミサが横を向くと、自分たちと少し距離を取ったところに、スラッとしたニット帽の男が立っていた。

男は爬虫類のような肌感をしており、顔はトカゲを思わせた。

ミサが身構えた時、男はニット帽を脱いぎ額の三つ目の瞳を(さら)け出した。

その姿に驚いたが、ミサはすでに自分の能力で男の動きを鈍らせることを始めていた。

そんな時だった。

愛が叫んだのは。


「ミサさん!」


その声のおかげか、自分の足の違和感に気付いた彼女は足を見る。

すると着ているズボンごと、くるぶしの付近まで石化していた。


「何これ?石?」


彼女は足を動かそうとするが、筋肉に信号が伝達していないのか、膝あたりまでしか力が入らない。

その様子を見ながら、男はゆっくりと近づき出す。

しかしふと何かを疑問に思ったのか、少し進んで足を止めた。


「君、なぜ俺を見ているのに固まらない?」


どうやらその言葉は、愛に向けられたものだった。

ミサはその言葉を聞き、男の能力が自分と逆の見られて発動するモノだと、瞬時に仮説を立てた。

そしてわざわざニット帽を脱いだことを思い出す。


「愛ちゃん!そいつの目を見ちゃダメ!」


額の目だけなのか。それとも全ての目なのかはわからないため、彼女は目とまでしか言わなかった。


「分かりましたッ」


そう指示は出したものの、ミサは私たち二人だけでは男を倒せないと考えていた。

彼女の能力は完全サポート型。

愛はAIで体は義体。

戦える戦略ではない。

部屋の中を見る。

するとそこにはデルを優しく抱えて座る、ルカの姿が見えた。

何かあったことは明白だった。

ただ彼女はひたすらに生き抜くために、視線を男の足元に集中し時間を稼ぐことにした。


「この感覚。君らのどちらか、能力(リチュアル)を使っているな」


そう言った男は違和感の感じる足を、ゆっくりと動かし出す。

ミサの能力は、対象が自分に近ければ近いほど強くなる。

男は次第に重く鈍くなる足に歩みを止めた。

二人への距離は後10歩ほど。


「近づくほど重くなる。気持ち悪い感覚だ。君、俺と同じような目の能力(リチュアル)だろ。なら、これが見えるか?」


男は足元に小さい何かを置いた。

不意に置かれたそれをミサは見てしまう。

鏡だった。

そして鏡越しに男の顔を見たミサは、足の違和感が上がってくるのを感じ、つい目を閉じてしまう。

その瞬間男の足音が聞こえ、ハッとしてすぐに目を開くと、愛が近づく男に向かって思いっきりタックルしていた。

彼女は愛を止めようと手を伸ばしたが、足のせいで前のめりに倒れてしまう。


「ッ、待って―」


バリンッ!


「愛ちゃんッ」


愛は男ともに部屋の中へ、窓ガラスを破り侵入した。


「ルカさん!ミサさんが!」


愛はそう言うと片方の手、肘から先の形状を変化させて作っていた刃を使い、男を切りつけた。

しかし戦い方など全くの知らない素人の一撃を、男は何なくいなすと、愛を蹴り飛ばした。


「ふう。それが君の能力か?」

「そ、そう、です」


愛はそう答えたが、正確には愛の能力ではない。

形状変化は義体の能力で、それは愛の記憶の中にあるものに姿を変えられた。

実際の愛の能力(リチュアル)は、特定のものに意識を移せるAI(アイ)インストールだった。


「テメェら、絶対許さねぇ」


強い意志を感じる声をルカが発した。

彼は消失の始まったデルの体を少し見つめた後、バチバチと音を鳴らし出した。


「もう見飽きたぜ、それ」

「おい()()()()()気をつけろ。窓の外の女、あいつに見つめられると体の動きが鈍くなるぞ」

「ほう。あの女のせいだったか」


そう言いながら、女を見つめる男の視線の間にルカが立ち塞がる。


「お前の相手は俺だ」

「そう睨むなよ」


大鎌をしまいながら男は嘲笑まじりに言った。

そんな男にもう一人が指示を出す。


「俺はこっちの女の相手をする。あの女の視界に同時に入らないよう、左右に分かれて戦うぞ」

「オオケェ〜」


二人の男はミサの視界に同時に入らないよう、彼女をだいたい真ん中に置き左右に分かれる。


「ミサッ、俺の方はいい。愛ちゃんの方をサポートしてくれ」

「分かった。でも気をつけてっ。あっちの男の目を見ちゃダメ。体が石になる」

「分かった。愛ちゃん、何とかそいつを抑えといてくれ。俺はあいつを殺す」

「はいっ、了解です」


そうは言ったものの愛は、無いはずの心臓の張り裂けそうな感覚を感じていた。


「じゃあ行くぜッ」


ルカが鎌の男に向かって高速で突っ込み、目前で止まった。

しかし勢いを完全に殺したわけではなく、上半身を捻り、加速分の勢いを乗せたパンチを繰り出した。

驚いた表情をした男の顎にそれはヒットする。

バチバチッ。

少しのけぞった男に間髪入れず、短いステップに能力を使い重い膝を喉に打ち込んだ。

すると男は声にならない声を出し、その場に膝を着いて(うずくま)る。

バチバチッ。

その男に対しまた短いステップで能力を使い、サッカボールキックで頭部を蹴り飛ばした。

男は攻撃の痛みと呼吸の出来ない苦しみで、今にも死にそうな顔でルカを見上げている。


「どうした?」


バチバチッ。


「俺の攻撃は効かないんじゃなかったのかッ?」


男の顔面にもう一度サッカーボールキックを見舞う。

男はなんとか片手でガードしたが、脳まで響く衝撃があった。

そしてなんとか距離を取ろうと男は動くが、ルカは張り付いて決して距離を取らせない。

バチバチッ。

男はなりふり構わない大ぶりの拳を放つ。しかしルカは軽くいなすと、また重い膝を鳩尾に食らわせた。

もう男には喋る余裕どころか、呼吸する余裕すらなかった。


「立てよ。蹲ってちゃ、テメェの苦しむ顔が見えないだろ」


バチバチッ。

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