Episode3 - VS『再誕臓 リアライブ』
一度脈打つと、部屋の壁からどこか緑がかった血のような液体が吹き出し。
二度脈打てば、部屋全体が徐々に縮んでいく。
……あぁ、成程。身体って言ってたもんねぇ。
タネは簡単だ。
この遺跡自体がリアライブ……目の前の心臓の身体であり、ボスであると言うこと。
散々言われていた事で、だからこそ先程から椅子やら拘束やらをほぼノータイムで行えていたのだ。
思えば、リアライブには魂が視えていなかった。否、実際は視えてはいたのだろう。メントゥムと同じで、巨大だったが故に視界に収まっていなかっただけの事。
恐らく、このまま無抵抗に部屋の中に居れば圧し潰されるか……それかリアライズの糧となってしまうかのどちらかになるのだろう。だが、しかし。
私にとって、現在の状況は非常にありがたい。
「御馳走が勝手に運ばれてくるなんて天国じゃんか」
遺跡全体がボスならば。
どこを喰らっても、私の糧となるならば。
私が負ける道理が無くなったのと同じ事だ。
『残り滓共ォッ!』
「ァア!」
「オォォ……」
「あぁ、君達は負けたからここにいた訳だ」
迫ってくる壁の中から飛び出す様に。溜め込んでいた在庫を捨てる様に。
道中でも見た、半分身体が溶けている様に見えるゾンビ達が私に向かって襲い掛かってくる。
当然、その中にはいつの間にかリアライズ本体から放出されたであろうハリガネムシも含まれており、単純に1人で対応するには多すぎる数になっていた。
とは言え、私は別に焦っちゃいない。敵側の動きは普段のしている組手の相手よりも幾分以上にも遅く、本気で避けようとしなくても攻撃の全てを避けられる自信がある。
部屋が迫って来ている事に関しても、身体全身で喰らい続ければ良いだけの事。いざとなれば、口周りのヒットボックスを大きくすれば……喰らう範囲を広げる事だって可能だ。
リアライズ本体に関しても、本体が『産まれ直す』と言っているからなのか……私に対する直接的な攻撃手段を持ち合わせていないようで。こうしている今も、何事かを呟きながら私に延々とハリガネムシを放出し続けている。
……HP減ってるね、【多産】系か。
そして、それを繰り返す度に視界下部に表示されるHPは減っていく。
リアライズが気が付いているかどうかは分からないが……この状況は既に詰みなのだ。
周囲のモンスター、果ては遺跡を喰らえば私は回復しステータスを強化出来、死なずに生き続ける。
それが重なれば重なる程に、リアライズが何を出してこようと何をしてこようと私という存在は手が付けられない状態へ成っていく。
だからこそ、
「早めに終わらせようか。遊んでたらダキニちゃんに怒られちゃうからね」
『なッ……』
強化されたステータスを以て、モンスターの隙間を抜け。
何やら不整脈の様になってしまっているリアライズの元へと辿り着き、手をゆっくりと添える。
温もりは一切ない。寧ろ、死体の様な冷たさを感じるソレ。
「それじゃあまた、来世で頑張っておくれ。――イタダキマス」
『何、を……何をしている我が兵隊達ッ!』
心臓から、背後から、地面から、天井から。
沢山のモンスター達が私をリアライズから引き剥がそうと、脇の下に腕を入れ、足を掴み、頭を殴り、腕に巻き付き、首を絞め意識を落とそうとしたものの。
その全てが私の前では一切障害にはなっていない。
自身の、元々備わっている口はリアライズに口付けをするように、それ以外の4つの口は、首に、腕に、足にそれぞれ作り出し……相手を喰らう。
『消え、消えていく……!?私の、身体の中から何か大切なモノが喰われていく……!?』
口の中に広がるは、濃い血の味。
軟骨の様な硬さに、少しだけ感じるホルモンの様な脂の甘み。所々苦みを感じるのは……恐らく、体内から出てこようとしたハリガネムシすらも喰らってしまったからだろう。
これまで喰らってきたモノよりも美味いとは手放しには言えない。しかしながら、そこらの野良のモンスター達とは比べるまでもなく……美味い。
そう感じるのは、恐らく私が魂喰いという種族だからだろう。
魂の味がサラダにかけるドレッシングの様に、元々の味を補強しているのだ。
「んん~……君が産まれ直してたらどうなってたかは分からないけれど。少なくとも、味はそこまで変わらなかったんじゃあないかなぁ。それでも食べるけどね!私、出来る限り食事は残さないようにしてるんだよ」
『まだ……まだァ!何を勝った気でいるのか!こうなれば無理にでも産まれ直して……!』
「んぐ。でもなぁ。存在昇華した先って結構変わったりするからね。この前私の身内を軽く食べたんだけど、前に食べた時より味が変わってたんだよ。だから君もそうなる可能性……あるよね?」
『【再誕鼓――】』
「――あぁ、ダメダメ。そういうの。喰らうぜ」
『わ、私の……これまで貯めた、蓄えたモノがく、喰われ……!?』
独り言の様に呟いていれば。
何やらリアライズが突然一度大きく脈を打とうとしたのが分かった為に、【ヒットボックス拡張】によって大きくした口の当たり判定を使い、心臓の大部分を一気に喰らった。
ここまでは余裕、それこそ今も私にダメージを与えようとしているモンスター達の攻撃もスキルによってHPを得る事で無視をしていたものの。
ボス本体が何かをしようとするのはやめてもらいたい。下手をすればそれだけで形勢が逆転する可能性だってあるのだから。
肉を喰らい、魂を喰らい、相手の命を喰らう。
私が喰らった所為でスキルの発動が止まったのか、何処か茫然としてしまったリアライズの再起動を待つ事はせず。私は一気に心臓を喰らい進めていく。
抵抗自体はある。だが、それら全てが私の動きを……食事を止められないのならば、それは抵抗ではなく、食事中のテーブルに沿える花の様なもの。アクセントの1つにしかなり得ない。
「ふぅー……うん。御馳走様でした。湿地のボスの方が美味しかったけど、ネズミよりは喰い出があって良かったよ」
そうして心臓を喰らい終わった後には。
もはや脈打つ事がない、一畳程度しか広さのない肉の部屋が遺されていた。
『『再誕臓 リアライブ』が討伐されました』
『MVP選定中……参加プレイヤー数1人。MVPを選出しました』
『MVP:プレイヤー名『イヴ』』
『MVP特典として、スキル取得用の特殊アイテムが付与されました』





