ShortEpisode1 - スキル周りって
幕間です。前と同じく2話分用意してる感じです。
「さてと。まぁ暇と言えば暇、なんだけれどさ」
「はいはい」
「フレデリカちゃんは結構余裕がありそうだし、私の体力が回復するまでちょっとお話に付き合ってよ」
「良いですよ良いですよ!」
時は少し遡り、私がダキニとの戦闘訓練を行い始めたばかりの時間帯。
まだダキニの動きに適応出来ておらず、組手と言いながらも一方的にボコボコにされていた時のことだ。
システム的に、というか。
ゲーム的にそうなっていた為に不思議には思っていなかった疑問について、ここらで改めて口に出してみようと考えたのだ。
「スキルの進化、それと進化したスキルについて。あれらって明確に上下関係があるんだよね」
「ありますねありますね。【聞き耳】と【地獄耳】みたいに明確に性能に差があるものとかありますからね」
「フレデリカちゃんの【植物操作】も進化して【庭園形成】になったんだっけ?」
「そっちは【尊き身体】みたいに、複数スキルが組み合わさって進化したスキルですね」
そう、一口にスキルの進化と言えど、そこには何種類か存在している。
例に出た【地獄耳】の様に、単純に元となったスキルからそのまま強化する形で進化したモノもあれば。
【庭園形成】、【尊き身体】の様に、前提となるスキルが複数必要となるスキルも存在している事が分かっている。
そして、それらの違いは使い手からすると明確だ。
「どっちも元より性能が良いのは前提として、2つを比べてみると【庭園形成】や【尊き身体】の方が性能自体は良いんだよねぇ」
「確かに確かに。元となるスキルが複数必要になるから、その分だけ性能が上がってるんですかね?」
『ふむ、汝らはその辺りもまだ知らんのか』
と、ここで。
私達の会話を聞いていたらしいダキニが話に参加しに来た。
「ん、ダキニちゃんはその辺り知ってるの?」
『……フレデリカ』
「あはは……無理だと思いますよ」
『はぁ……まぁ、知っておると言えば知っておる。と言うより、この世界に棲むモノ達ならば産まれ落ちた時から本能的に知っておる事柄じゃ』
一息。
『そもそもとして。スキルというのはこの世界における力そのもの。多く持てばその分強く、そして……イヴの様に魂が視える者からは畏怖され、狙われるようになるモノじゃ。そこに進化してるしていないは関係ない』
「うん。確かに進化とか関係なく、強い人とかモンスターの魂は大きく見えるね。食べた時の味も良いし」
『じゃろうな。魂喰いはそうやって強者の魂を喰らい、力に変えるから厄介であり忌み嫌われるモノとして扱われておる。……そして』
ダキニは虚空から扇子を取り出しては青い炎によって燃やし消してを繰り返しながら、私達に向かって話してくれる。
恐らくは口だけを動かしているよりも、何かしら意味が無くとも手を動かしていたいのだろう。
『スキルの進化とは、その力を大きく引き上げるもの。簡単に言えば……そうじゃな、スキル版存在昇華、とでも言えば分かりやすいか?』
「「あぁ~……」」
スキル版の存在昇華。
進化という言葉よりも、既に2度ゲーム内で行い体験している事柄の方が直感的に分かりやすい。
『進化したスキルは、元の性能を引き継ぎながらも次なるステージへと手を掛ける。そして、それに対抗出来るのは同じステージにいるモノだけじゃ』
「はいはい。じゃあデバフとかを付与してくる進化スキルに対抗するには、ちゃんとこっちも進化した耐性系スキルを持ってないといけない訳だ」
『そういう事じゃな。そして、進化に複数のスキルを必要とするモノはその分出力が上がる……訳ではなく、単純に2つが1つ、3つが1つに統合されただけの事。1つ1つの効果の総量自体は変わらず、整理しやすくなっただけじゃ』
「成程成程。単純に自分がどんなスキルを持ってるのかを見やすくするために、統合して数を減らしているだけ……みたいなものですかね?」
「いや、それだけじゃあないね」
フレデリカの疑問を、私が否定する。
ダキニも私が否定した理由が分かっているのか、何も言わずただ頬を緩めていた。
「さっきも言ったけど、スキルが多ければ多い程に私みたいに魂が視えるなら大きく、そして美味しそうに見える訳だ。でも統合されてスキルの量が減るなら?」
「その分だけ魂は小さく見えるけど、その人自身の実力は変わらない……あぁ、成程!」
「そう。魂が視える相手を筆頭に、スキルの数が影響して実力を測る事が出来る類の相手だったら実力を誤認させる事も出来るってワケだね」
KFOというゲームにおいて、今の所相手の実力を測る方法は確立されていない。
私の様な【魂視】のようなスキルや、上位陣と呼ばれるプレイヤー達は何らかの方法を使って相手の実力を測っている様だが、その殆どが相手のスキルの数などを参照しているものなのだろう。
だからこそ、それを誤認させる事が出来るというのは……相手の不意を打つのに役に立つ。
……ダキニちゃんが何も言ってこないって事は、多分私が言ってるのは合ってるし……恐らくはもっと直接的な偽装の方法もある、って事なんだろうな。
進化したスキルは強くなる。スキルによっては他のスキルと統合され、また別のスキルとなる。
それを組み合わせていく事で、スキルの数を減らしながらも自身の実力を上げていく事が出来る。
「結構考える事が多くなっていくねぇ。特に今後は」
「ですねですねぇ。人間側を相手取ると考えると……その辺りの実力誤認系の何かも考えておかないといけませんねぇ……」
『呵呵。その辺りは今後、妾が暇な時に教えてやろう。――さて、そろそろイヴの体力も回復したころじゃろう?続きを始めるぞ』
「うげぇ……頑張りますかぁ……!」
その場から立ち上がり、適当に埃を払った後。
私は軽く構えながらダキニの前へと立つ。
小手先の技術は確かに必要だろう。しかし、必要なのは今ではない。
せめて、ある程度……ワールドボスに一泡吹かせる事が出来るくらいの実力になるまでは目の前の狐に付き合ってもらう事にしよう。





