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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第7章 初めてのワールドボス編

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Episode11 - VS『拷掠審獣 メントゥム』4

本日5話更新。

こちら4話目。


 暗く、湿度の高い中を落下していく。

 メントゥムの口の中、跳び込んだ私は既に2分程度落下し続けていた。

 明らかにおかしい。流石に巨体と言えど、口の中に跳び込んで胃袋にも到着せずに2分も経つのは何かが起きているとしか思えない。

……死んだわけじゃない。まだ戦闘状態も続いてるし、デスペナ喰らった訳でもない。デバフでもない訳で。

 落ちていく風を感じながら。

 私は何があっても良い様にと、身体を丸め甲冑の形状を全身を覆う様に……骨で出来たボールの様に変えていく。

 そうして更に落下していく事1分後。

 ようやっと何処かに着地したらしく、私の身体に軽くはない衝撃が走った。


「……ふぅ……ここは……成程?」


 ボール状態を解除して、立ち上がりながら周囲を見渡してみると。

 そこには様々なモノがあった。

 ばらばらとなった木造の家屋や、巨大なモンスターの骨。人の骨や私達が良く探索しに侵入する遺跡の残骸らしきものまでもが散らばっていて。

 地面はピンク色の肉で出来ており、ここがメントゥムの身体の中である事を示している。

 そして、それらは円形の広場を作るように押しのけられており……私はその広場の端に落下してきた様だった。


「何も無いなら食べるだけなんだけどさぁ……無い訳ないよねぇ」


 私の言葉を肯定するかのように、広場の中心近くの地面が盛り上がっていく。

 その数は2つ。

 ある程度の大きさ……私よりも一回り分程度大きくなった後、それは見覚えのある形へと変わっていった。


「ゲッゲッゲッ……」

「ォォォォォ……」

「まぁそういう感じだよね。問題はここでの戦いがどれくらい外にも影響するか、なんだけど」


 頭部から生えるピンクの触手。無数の小さな腕から出来た両手。

 黒い銛を両手に持ち、灰色のぶよぶよとした肌に覆われた蛙の様なモンスター。

 小さくなったメントゥムと言っても良いモンスターが2体、私の目の前に現れ襲い掛かってきた。

……動きは並。外で見た量産型の蛙よりはマシくらいかな。

 だが、別段強くはない。

 攻撃は単調、自我が強いわけでも無い。特殊な攻撃をしてくる訳でも、見た事がない攻撃をしてくる訳でもない。

 離れず、そして距離を取られない様に歩き、ステップを踏みながら。隙が見えたタイミングで膂力に任せた貫手を放ち、手を捻る様に捻りながら内側から喰らってやれば。


「はい、おしまい」


 然程時間も掛からずに2体の小さなメントゥムは光の粒子となって消えていく。

 喰い出が無いわけではないが、かと言って今の時間がどれだけあるのか分からない状況で味わって喰らう程でもない。


「これで終わりなら腹側から喰い破って出るだけなんだけど……っと」


 どうやらそうはいかないらしく。


「あは」


 広場の中心。

 私の程近くの地面から新たに1つの肉塊が盛り上がり形を成していく。

 それはここまで見たどれよりも人に近い形をしていて。

 それは黒い銛を2本、槍の様に両手に持っていて。

 長く、銀色の髪を揺らし、目元には灰色の皮で出来た目隠しを着けて。

 身体には、まるで現実の神社で見る様な巫女の様な服を着て。

 全身から、私へと向かって殺気を放ちながら、突然現れた女は襲い掛かってきた。


「良いじゃん良いじゃん!居るんじゃんこういうの!」


 青白いオーラを纏った銛をこちらの急所、首元と心臓へと向けて放ってくるのに対し、私は半身になる事で紙一重で避ける。

 流石に相手の詳細が分からない今、攻撃をまともに受ける程私は頭は悪くない。

 伸び切った身体。銛を戻し、再度構えると言う動作の間の僅かな隙に、片手……左手側の銛を掴み引き寄せようと思いっきり引っ張った。

……強いな力。

 今も外では配下達が背中を荒らす様な形で喰らい続けている。

 そうして強化が行われている筈の私と、女は膂力だけで対抗し、


「おぉっと!?」

『……』


 力負けした。

 逆に懐へと引き寄せられる様に近付いてしまった私を待っていたのは……巫女服の隙間から顔を見せた無数の触手。

 今度は避けられない様にする為だろう。

 それらは私の事を攻撃するのではなく、あくまで拘束する為に四肢に、そして首に巻き付き身体を固定する。

 絶体絶命。そう言うべき状況ではあるが……私は別の所に思考が、視線が向いてしまっていた。

 それは、その女の胸元。

 【魂視】によって視える魂。別段大きくも無く、そこらの住人と然程変わらないソレ。

 しかしながら……今まで見た魂のどれよりもソレは異質だった。

……何かが纏わりついてる?

 ただの魂の上から、まるで鎖で雁字搦めにしているかの様に。

 幾度と無く見た触手に近い形をした何かが纏わりついているのだ。


「ッ!ととっ!流石に見てるだけはやっばい!」


 思考している間にも、私の急所には黒い銛が迫っており。

 拘束自体は力尽くで解除出来るものの、ダメージを食らってしまう程に近い。

 故に、【霊体化】を発動して女の身体を通り抜ける様に避けてみると、


「『ッ!?』」


 一瞬、脳裏に様々な情景が映し出された。

 それは湖の畔の景色であり、誰かの視点。目の前には先程見たメントゥムよりも幾分か小さいそれが居て。その視点の主は何か悲観的な感情と、安堵した様な感情を持ち合わせていて。

 その次には、水中の景色が。

 ロートの言った、湖の底にあるという祭壇の目の前に視点は移り、また切り替わる。

……これ、は……!?

 見え、感じた情景。

 そして、魂を何らかに縛られた女という存在。

 そこから導き出される答えは……ある意味で私の妄想の類だと信じたいモノ。


「……君は、もしかしてメントゥムを封印したっていうロレリアの巫女、なのかな?」

『……』


 【霊体化】の解けた身体で前転して距離を取りつつも問えば、返ってくるのは無言のみ。

 しかしながら、そうであるならば……少しだけ、メントゥムという存在を倒す為の鍵になり得るかもしれない。

 荒唐無稽。机上の空論。現実味の無い妄想。

 だが、ここはゲームの世界。人が現実には無い法則を夢見て作り上げた仮想の世界だ。

 故に、そんな考えも……この世界では現実味のある考えになり得る。


「私には解呪だとか、洗脳の解除とかそう言う小手先の技術は一切無いんだけどさ」


 ならば、私が今ここで出来るのは1つ。

 魂喰いという存在が、魂に干渉されている存在を目の前にした時に出来る唯一で、私向きの解決法。

 つまりは、


「喰らおう、喰らってあげようじゃあないか。君のその魂を捕らえた何かを、さッ!」

『!?』


 喰らう。

 結局はそれしか出来ない私が、折角私向きの相手を見つけたのだ。

 ここで、今の今まである程度自重していた食欲を解放させよう。

 左手を開き、右手を鋭く指を伸ばし。

 肉の地面を蹴り跳ねて、離れた距離を零にする。

……見えてる。見えてるよ!

 対する女は、冷静に。あくまでも無表情に銛を振るう。

 直線的な私の動きに合わせる様に、上と横から銛の先で斬り払うように。

 だが、食らわない。喰らってやらない。

 伊達にギリギリの時間までダキニという格上の存在と組手をしていたのではない。女が振るう銛の速度など、あの狐の扇子に比べれば止まってすら見えてしまう。

 故に征く。

 先程は不意を突かれ、自らの意思ではなく飛び込んでしまった懐に今度は自ら飛び込んで。

 そうして、零距離で無表情の女相手に見せるのはとっておきの笑顔だ。


「嗤おうぜ、折角の美人さんなんだから!」


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