Episode10 - VS『拷掠審獣 メントゥム』3
本日5話更新。
こちら3話目。
「よし、フレデリカちゃん。ごめんだけど……ここで耐えてもらっていい?」
「へっ?!あの……えっ?私1人で?」
「うん。ちょっと流石にこのまま戦うのは厳しくてさぁ」
「はぁ……」
「ちょっと無茶してでも急所を狙ってこようかなって」
フレデリカが何を言っているんだこいつは、という雰囲気の空気を醸し出しているがそう間違っているわけでも無い。
湖の畔にはアリアというロレリアの有名なNPCの騎士が居たのだ。
下手に時間を掛けて、彼女が大規模な破壊を伴う作戦や攻撃を選択してしまったら……それだけで、私達の今後という未来が瓦解する可能性があるのだから。
故に、
「ほら、一応口はあるみたいだし。外側から行くより中から戦った方がいいじゃん?」
「無茶は無茶でも無茶苦茶な方だった……」
「割と長い時間一緒にやってきたから結構打ち解けたねぇフレデリカちゃん」
「それほどでも!……でもでも、本当に出来ます?」
「それが出来るっぽいんだよ」
徐々に激しくなっていく私達への攻撃。
触手と黒い銛だけだったそれは、今では背中から小さな腕や蛙型の月の従獣が出現してこちらへと襲い掛かって来ている。
しかしながら私とフレデリカにはその程度だったらどうとでもなる。
正面から跳び掛かってくる3体の蛙をバックステップで距離を調整しながら躱し、私の足を掴もうとして来た小さな腕2本を甲冑の形状を変えて背中に縫い留めて。
空から落下するように飛んできた黒い銛をヒットボックスを大きくした右手で掴み、薙ぎ払う様に周囲に振るう事で死角から近付いて来ていた蛙達を吹き飛ばす。
フレデリカもフレデリカで、私が対処しにくい位置に居る蛙や腕に草花を侵食する事で苗床とし、そこから蔦を生じさせる事で更に拘束出来る範囲を広げていた。
「ほら、見てみ掲示板。私達が頑張ってるのは知られてるっぽいし、何ならそれに乗っかろうと下から上に登ろうとしてるプレイヤー達も居るっぽいんだけどさ」
「えっとえっと……?『口の中にも入れた』、『他のモンスターだったら口の中に頭が入ったらデス判定だった筈』、『巨大なボスだから体内にも入れる可能性』……え、本気で言ってます?」
「本気も本気。でも流石に私達2人とも失敗したら拙いからさ。頼むぜ」
「……はぁー……」
一度吹き飛ばした程度では蛙達の勢いは止まらない。
月の従獣特有の能力なのか、無数の蛙達がその身体から無数の触手をこちらへと向けて射出させ……私の四肢を拘束する。
1体1体の拘束力はそこまで無いだろう。しかしながら、それが10、20と重なっていけば動く事が難しくなるのは道理だ。そして当然、基本的には近距離しか攻撃手段がない私にとっては様々なスキルを強化、進化させた今でも苦手な部類の対処のされ方とも言える。
だが、それでも。今の私にはそれを打ち破る策は一応存在していた。
……足裏に全ての口を集中生成。舌の上に口を、更にその中の舌にも口を。
私は動かない。蛙の攻撃も、黒い銛も、触手も。その全てが骨の甲冑によってある程度までは耐えられるのを知っているからだ。
だからこそ、私は動かす。足の裏の5つの口を。硬く柔らかいメントゥムの背中の肉を噛み喰らい千切り飲み込み力に変えて。
待って待って待って。喰らって喰らって喰らって……会話すらも止め、意図的な静寂を作り出し。
動かない私の事を不審に思ったのか、1体の蛙が私の元へと体当たりするように突っ込んでくるのを見て……私は嗤う。
「いらっしゃーい。そして、イタダキマス」
「!?」
瞬間、私は全ての拘束を引き千切った。
私が動けなかったのは、つい先程までの事。喰らえば延々と強化される私に足元全てがその強化元という環境で時間を与えたのが悪いのだ。
突っ込んできた蛙の頭部を掴み、足に生成していた口の1つを手のひらに生成し直す事で頭から喰らって。
気分を上げて蹂躙を開始する。
「一応、私が口の中に入ると同時にロートちゃんがこっちにフォローしに来てくれるみたい。参戦人数も増えていってるし……ほら、HPも減り始めてはいるね」
「結構まだまだ掛かりそうですけどねぇ。……でも、分かりました。私としても、この後に起こりかねない展開は嫌ですし。そこらのプレイヤーに任せるよりも、イヴさんの方が信用できますからね。不服な事に」
「あれぇ?私結構フレデリカちゃんには優しくしてた筈なんだけどなぁ……?」
「ふふ、冗談ですよ冗談。――分かりました!では私が道を再びつけましょう!」
私が一度、周囲の蛙や触手達を文字通り身体全身を使って喰らうのを待ってから。
フレデリカは動き出す。
メントゥムの背中に局所的に作りだした草原を、蔦植物達を操る事で空中に再び道を作り出していく。
それが合図となったのか、下……丁度、私達が背中に跳び掛かった位置辺りから白い煙で出来た階段が作られていく。
匂いからして、紫煙。そしてそんな芸当を出来る人物はKFOの中でも1人しか私は知らない。
「やぁ、お待たせ!お姫様の護衛の交代さ!」
「ありがとロートちゃん!」
「わわッ!?」
階段から駆け上がるようにして背中へと跳び乗ったのは、赤ずきんのコスプレの様な装備に身を包んだ私達の友人であり、このゲームにおける上位陣の1人。
ロートだ。
彼女の姿を見た瞬間、私は背中側の甲冑の形状を操作して射出する様にフレデリカを投げ渡す。
しっかりとそれが受け止められたのを確認してから……私はすぐさま蔦の道へと駆け出した。
「蛙の内臓は食べた事がないからねぇ……こんな機会、しかもでっかいのを食べられるチャンスを逃す訳がないじゃんか!」
当然、私が駆ける足を止めるべく幾重にも攻撃が飛来する。
黒い銛が、触手が、走っている近くのメントゥムの身体から蛙が。変わり映えのしない攻撃。だがその密度が濃く、避けるには難しい攻撃だ。
対処をしなければダメージを喰らってしまうのが理解出来る程の物量。
しかし、私はそれを無視する事を選んだ。
足裏にも甲冑を作り出し、形状を変える事でスパイクによって蔦の道から落ちないようにして。
歩みを止めず、その先に待つメントゥムの口を目指して駆け抜ける。
……ッ、ふぅー……ダメージは……【貪食】と【大食漢】の追加HPで耐えきった!
攻撃が全身を襲い、衝撃に身体が道から落ちそうになるのをスパイクと気合で乗り切って。
砕かれ、貫かれ、剥がされた全身の骨の甲冑を再生成して更に前に進み。
見えた先。ゴールである大きく開いた口へと向かって、
「ここからがメインディッシュってねぇえええ!」
勢いをそのままに跳び込んだ。





