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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第7章 初めてのワールドボス編

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Episode9 - VS『拷掠審獣 メントゥム』2

本日5話更新。

こちら2話目。


 既にメントゥムは目の前。

 私は足の速度を落とさず、一瞬片足に力を溜め、


「ハーイジャーン、プッ!」


 跳んだ。

 別にフレデリカが作り出した道が悪かった訳でも、メントゥムが何かを行った訳でもない。

 単純に、私が戦うのであれば駆けながらではなく……出来る限り相手の身体に近い方が良いだけの事。

 私が得意で、尚且つ一番火力が出せるのは相手とほぼ零距離で密着している状況で。尚且つ、一方的に攻撃出来るタイミングが望ましい。

 ならばこそ、跳ぶ。

 近くに来ていた何者かが跳んだのに気が付いたのか、メントゥムが無数の小さな腕をまるで触手の様にこちらへと振るってくるものの、


「させませんよぉ!」

『ッ!』

「ナーイスッ!」


 そのどれもが私に届く前に不自然に止まり痙攣し始めたかと思えば、内側から大量の草花が成長しながら飛び出してきた。

 フレデリカが酒場の中で撒いていた、目を凝らさねば見えない程に小さい種子。

 当然ここに来るまでの間も撒き続けていたそれが、今メントゥムの身体に根を張って生気を吸いながら彼女の力で強制的に成長させられているのだ。

 そして、植物であるならば……操る事が出来る。

 動きを止められ、草花に侵食された小さな腕だったモノ達は私の目の前に階段の様に連なって道を作り出す。

 メントゥムへと近付いていた私の身体を、一度そこへと着地させ、再び駆けだして。

 放たれた黒い銛を、刃の様に変えた腕甲で薙ぎ払い。

 眼下の湖の中から飛んできた蛙の舌らしきものを、フレデリカが侵食する事で捕らえ草花の養分にする事で吸い殺して。

 足を止めず。私を止めようとフレデリカが対応出来ない位置から絡みついてきた、かつてのニドリーを思い出す細い無数の触手を強化されている膂力で引き千切り。

 私は辿り着く。


「良い眺め。ほら見てごらんよフレデリカちゃん。夜なのもあって街の灯りが凄く綺麗だぜ?」

「分かります分かります。気持ちはすっごい分かりますけど今は戦闘中ですイヴさん!」

「あは、ごめんごめん。そうだったねぇ」


 メントゥムの正面を越えて、背中。

 ぶよぶよとした肌の上に私は降り立って。足裏と両手。そして口周りの甲冑の形状を変える事で肌を露出させ……一息。


「――イタダキマス」

『【捕食】が発動しました。バフ『全ステータス強化』が付与されました』

『【魂喰い】が発動しました。全ステータスを一時的に強化しました』

『装備『狂気回数壱番』が破損しました』

『デバフ『狂気耐性低下』が付与されました』


 それぞれの部位に生成した口と、自らの元々持っている口を大きく開き……喰らい付いた。

 それと同時、ログが流れ私のステータスが強化され。

 次いで、アバターの腹の奥……現実の身体で言うならば胃袋の位置が熱を帯びたような感覚を覚えた。

……ゼリーみたいな食感の中に、ドロッとした濃い味の血。蛙の肉は鳥肉に近いって話をよく聞くけど……メントゥムの肉は形容し難いな。

 美味いか美味くないかでいえば、勿論美味い。正直、このゲーム内で喰らった何者よりも一番美味いと言って良いだろう。そして、味の良さは……その者がどれ程強いかにも直結する。

 食感はゼリーに近く、多少の硬さもありながら私自身の口であれば十分噛み切れる程度のもの。

 現実の料理で言えば、煮凝りが一番近いだろうか。こちらには具材の代わりに濃い血が混ざっているが。だが、味は良い。鳥肉と魚を煮込んだスープの様な香りと味が口の中いっぱいに広がり、体温で溶け飲み込む事が出来てしまう。


『~~~ッ!?!?』

「んぐ、やっぱり痛覚とかちゃんとある系だ。しかも……私の本来の口以外は歯が入りにくいな。フレデリカちゃん、サラダ」

「さらだ……?あぁ、成程!分かりましたっ」


 理解すると同時、フレデリカは私が立っている周囲の足場……メントゥムの背中上に草花を根付かせ一気に成長させていく。

 肉を喰らうというのに野菜を喰らうというのは、人によっては異を唱えるかもしれない。

 しかしながら、ここは私の食卓(せんじょう)だ。その上での食事のマナー(たたかいかた)は私が決める。決めさせてもらう。


「おっ、やっぱり。フレデリカちゃんの草とかの上から食べればある程度食べやすい……多分これ、メントゥム自身が物理耐性持ってるね」

「私レベルです?」

「いんや、フレデリカちゃん以下。スライム系以下そこらへんの岩以上かな。共有頼める?」

「もうしてます」

「仕事はやぁい。いいね」


 とは言え、私にとっては柔らかいモノだ。

 フレデリカが草花を侵食させた場所を、手足に生成した4つの口で喰らい。

 目の前の侵食出来ていない場所を自らの口と、その内側……舌の上にも生成した口で更に喰らう。

 喰らう度に強くなり、喰らう度にメントゥムの悲鳴かも分からない鳴き声が周囲に響く。HPはと言えば、私の食事のペースとメントゥムの自己回復速度に合わせて増減を繰り返し……結果として、増えてはいないが減ってもいないという状況を作り出していた。

……文字通り数が足りてないな。かと言って、フレデリカちゃんにも攻撃してもらう訳にはいかない訳で。

 フレデリカは今も周囲の緑化、背中に居る私達を引き剥がそうとする触手などの侵食無力化、そして湖の上を私達や他の飛ぶ事が出来ないプレイヤー向けの足場の生成と、既に忙しいという領域を超えている。

 その上で彼女がまだこちらに応対出来るのは……事前に撒いた種子を媒介に、ある程度自動で成長、繁殖するようにスキルで処理を補っているからに過ぎない。

 そこに私の援護……攻撃という役割まで与えては確実に何処かに綻びが生じてしまう。


「――なら文字通り数を増やそうじゃん。【多産】解除、【主従共有】設定変更。スキル構成の【聞き耳】を【筋力増加】に。では……出ておいで、皆」

「ぁーう!」

「うぁ」

「あァ!」


 数が足りていないのであれば、単純に増やせばいい。

 今更草原で狩りを続けていても意味は薄く、共有されるバフも少ない。ならばと一度配下達の召喚を解除した上で、メントゥムの物理耐性を何とか抜けるようにスキルの構成も変え。

 そうして私の身体から再度産み出された配下の魂喰い達は……目の前の巨大な御馳走にすぐさま跳び付いた。

……これで良し。さて、次の問題はっと。

 喰らいつつも頭を働かせ。

 どうすればメントゥムという存在を討伐し切れるかを考える。

 HPは減っていない。現状で約2割程度は減っているが、回復速度にダメージ量が追いつかずにそれ以上を越えられない。

 掲示板を横目に表示させて見れば、徐々に参戦プレイヤー数は多くなっている様だが……この分だと、後1時間は同じような状況が続いてしまうだろう。


「イヴさん!」

「だいふぉーぶだいふぉーぶ」


 私達を襲ってくる触手の他に、侵食されにくいと気が付かれたのか小さい黒い銛が混ざり出す。

 だが、効かない。本格的な戦闘に入る前、ロートと共に駆けていた時ならば避けるか対処をするかしなければならなかったかもしれないが……今のステータスが強化された私にとって、既に黒い銛は対処しなくても良い攻撃と化していた。

 さて、思考を戻そう。

 1時間も同じ状況を続けるというのは……私達プレイヤーはそれでもいいかもしれないが、ロレリアという国がその状況を許すとは到底思えない。

 幾らメントゥムが居る場所が自国最大の利益を産む場所であろうと、脅威を長時間も放っておく事は無い筈だ。確実に何処かで介入し……結果によっては最悪の事態を産みかねない。

 私とフレデリカは別にロレリアという国を助ける義理は一切ない。寧ろ、今後は簒奪する方に舵を切る予定のモンスターだ。別に国内がどうなろうと構わないと言えば構わない。

……でもなぁ。ロレリア側がどんな対策を持ってきてるかにも依るけど……私達は国の形はそのままで欲しいんだよ。

 だが、私達にもしっかりと事情がある。

 私で言えば、まだこの湖から獲れるであろう魚介類をしっかりと味わえていない。それを心ゆくまで味わうまではこの国がこの国である形を保っていてもらわないと困る。

 フレデリカはフレデリカで、巨大な土地は欲しいだろうが……この湖という場所も、水草などの水生植物を育てるのに適していると考えれば、出来る限り荒らさずに済ませたい筈だ。

 そして、私達の上司であるダキニ。

 彼女は国がどうなっていようが気にはしないだろうが、ある程度の闘争を求めている節があった。故に、出来れば兵力がある状態のロレリアと事を起こしたいだろう。


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