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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第7章 初めてのワールドボス編

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Episode8 - VS『拷掠審獣 メントゥム』1

なんと今日は5話連続更新です。1時間毎に更新していきます。

こちら1話目。


 駆ける。

 突然の非常事態。混乱する住民や、それを収める為に動く兵士やプレイヤー達を通り抜ける様にして、私達は街の中を湖に向かって駆けていく。


「ロートちゃん!情報!」

「ホントはもうちょいゆっくりするつもりだったんだけどね!……メントゥムはご察しの通り封印されてたモンスター!湖の底に祭壇があって、そこに特殊なアイテムを使うか時間経過で復活する……筈だった!」

「でもでも復活しちゃってますよ!」

「だね!これは私達の警戒不足だ!多分妨害派の、水中で活動出来る誰かが忍び込んでたみたい!」

「警備ざるぅ」

「言い返す言葉も無いなぁ!」


 とは言え、ロートを始めとした彼女達を責める事は出来ない。

 私やフレデリカならば、水洋系のモンスターを警戒して水場の監視を増やす事も考えられたが……良くも悪くも、ロレリアは内陸部。

 湖があるとは言え、そこも普段は聞く限りモンスターの影もない平和な場所なのだ。

 人間ならば陸から来る。その先入観だけで陸だけを警戒するのは理解できてしまうのだから。


「ロートちゃん、ここから湖まではどれくらい?」

「ここからぁ?……大体この速度なら5分以内!」

「おっけ、じゃあ……フレデリカちゃん」

「良いんです良いんです?」

「うん、やっちゃおう」


 背中のフレデリカに合図を出して。

 フレデリカが集中し始めると同時、周囲の木造建築の建物が震え出す。

 ロートを含めた、私達以外の者らが何事かと周囲を警戒すると同時、


「皆さーん!――運んで!」

「「「!?」」」

「あはッ!」


 フレデリカの声を呼び水に、建物から大量の木の枝が伸び、私達とロートを掬い上げ急速に成長していく。

 樹木の魔女、その種族的特徴である植物の成長促進。それを使った、リアルタイムで作り出し運んでくれる動く歩道だ。

 当然、無限にできるわけではない。

 今もフレデリカはHPを削りながらそれを行っているし、夜という時間である為に木々の成長速度はいつもよりも遅い。

 だが、私達が自分の足で駆けるよりはずっと速く……そして、見通せる。


「見えたッ」


 まだ遠く、しかしながら巨大であるが故に見えてしまうソレ。

 月明かりに照らされた、灰色のぶよぶよとした皮膚。

 頭部らしい頭部はなく、代わりにあるのはピンク色をした無数の触手。

 人の様な小さな腕が無数に連なり絡まる事で作り出された両手には、黒く巨大な銛のような形をした槍を持つ。

 『拷掠審獣 メントゥム』。その姿が今やっと自身の目で視認出来た。


『『拷掠審獣 メントゥム』との戦闘を開始します:参加プレイヤー数358』


 視認した事がトリガーとなったのか、参戦ログが流れ。

 そして、


「ッ、イヴ!」

「あっぶなぁ!?」


 こちらに無数の黒の銛が飛来し始める。

 出所は勿論、湖の中心に今も居るメントゥムから。

 自動攻撃の様なものなのか、眼下の街に落ちる様な軌道ではなく、木々の上にて近付き続けている私達に向かって放たれている。

……認識したからか!

 認識した者へのカウンター。

 とは言え、今も逃げ惑う住人達へと向けて放たれていないのは……恐らく、何かの制限があるのだろう。


「イヴ!」

「これくらいなら弾けるよ!」

「違う!私がなんとかするから、先に!」

「!」


 言うや否や、私の横を駆けるロートの身体から大量の白い煙……紫煙が生じ、その全てが様々な武具へと形を変える。

 そして一拍の待機時間と共に、


「征け」


 ロートの言葉によって、こちらへと向かってくる黒の銛に向かって放たれた。

 空中でぶつかり合うそれらの音を聴きながら、私はフレデリカを落とさぬ様に背負い直した後、全力でその場を駆け抜けていく。

 先のトーナメントで見たロートの遠距離攻撃。

 それ相応のコストは支払っているのだろうが、仮にもワールドボスの攻撃をも対応するとは我が友人ながら凄まじい。

……問題は……湖の方だね。

 無傷で、尚且つリソースを使う事なく進む私達と違い、湖の畔にて待機していたプレイヤー達が無事であるとは考えにくい。

 故に、速く。

 だからこそ、風の様に。

 自身の出せる全力の速度で、今も目の前に作り出される木々の道を駆けていけば……そこには。

 湖の畔で、大量の月の従獣らしきモンスター達と戦うプレイヤー達の姿があった。


「1番隊から3番隊は支援部隊に敵を近付かせるな!モンスターアバターのプレイヤー達は各自得意な距離で無理をせずに戦え!」

「斥候隊の一部を防衛に回せ!今更情報を抜きに行くな!」

「手数がある者、遠距離攻撃が得意な者はボスを狙え!!」


 普段は静かであろう畔に怒号が響く。

 鉄と硬い皮膚がぶつかり合う音。何かが溶ける音。光の粒子となって消えていくモノの断末魔。

 血が、水が、泥が、体液が辺りを汚し、そしてそれらを呼び水に新たな蛙型の月の従獣達が出現する。

 地獄の様に見える戦場がそこには在った。

 だが、悲観する様な光景ではない。

 今も指示を出すプレイヤーやNPCの中でも豪奢な鎧を着けた女性が、メントゥムを湖から出さない様に立ち回っているからだ。

……多分あれがアリアって子かな。前にロートちゃんが言ってたなんとかの騎士っていう。

 もう少し様子を見ていたいという気持ちもあるが、ロートに任されてここまで駆けてきたのだ。

 そろそろ私達も行動を起こすとしよう。


「フレデリカちゃん、道は引き続き頼むよ。余裕があったら拘束も」

「勿論勿論!任されました!」

「頼もしいねぇ。……それじゃあしっかり捕まってるんだよッ!」

「きゃっ!?」


 フレデリカが小さく悲鳴をあげながらも、私の目の前にメントゥムへ続く道を作り続けてくれる。

 その上を、全力で……木々の道が足の裏で蹴った先から崩れていくのも気にせずに駆けていく。

 地上のプレイヤー達も私達に気が付いたのか、一瞬こちらへと武器を向ける音が聞こえたものの……すぐに目の前のワールドボスへと向き直ったようだ。

 目か耳が良い誰かが居たのかもしれない。


「まずは様子見からしていこうか」


 その間にも、フレデリカを背負った私の身体はメントゥムの元へと近付いていく。

 距離はそこまで遠くは無い。メントゥム自体が巨大なのもあるが、こちらへと徐々に近付いて来ているのもあるからだ。

 私は骨の甲冑を全身に生成すると、背中側の形状を操りフレデリカを内部へと収納する。これで骨の甲冑が破壊されない限りは彼女に攻撃が命中する事はない。

……バフは……あんまり多くはないけど、十分。

 未だガスフロスの外、草原にてモンスターや妨害派のプレイヤーを狩り続けている配下達によってバフが共有され続けている。

 だが十分な強化ではない。バトロワ時や他のボスとの戦闘時と比べると天と地ほどの差があるだろう。

 しかしながら、今の私ならばそれで十分だ。

 目測で、約10秒。このままの速度で駆け抜ければメントゥムの元へはその程度で辿り着くだろう。

 だからこそ、


「もう先制攻撃とか始めの一撃とかは受けてるんだろう?だったらこれは私の挨拶代わりの一撃さッ」

『!?』


 大きく口を開き、しっかりとメントゥムの……胴体ではなく小さな腕が集まり形取られた巨大な両手の片方へと視線を向けて……喰らい千切る様な動作をすれば。

 瞬間、左手の薬指に当たる部分の根本が何かに噛み千切られたかの様な傷を生じさせ飛んでいく。

 【座標攻撃】、そして……レベルを上げた事で右腕以外、任意の部位のヒットボックスを大きく出来るようになった【ヒットボックス拡張】による狙った場所への大規模【噛みつき】攻撃。

 相手がどんなに堅くとも、【噛みつき】によって防御をある程度無視してダメージを徹す事が出来る相手によっては必殺になる一撃だ。


「おぉ!?」

「良い攻撃だ!効いてるっぽいぞ!」

「HPも結構ゴリっといったな……?」

「結構防御は脆いのかもしれない!手が空いてる奴は出来る限り高火力を叩き込め!」


 他のプレイヤー達の声が聞こえるものの。

 私は視界下部に表示されているメントゥムのHPが少しずつ回復している事に気が付いていた。

 それに伴い、千切れた左手薬指も小さな腕が集まって形を取り戻していくのも見えている。


「フレデリカちゃん、湖の上に動きやすいフィールド作れる?」

「やれますやれます。少し時間が掛かりますけど大丈夫ですか?」

「問題無いよ。降ろした方がいい?」

「いえいえ!このままで!」


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