Episode4 - そもそもとして私は
『……命知らずかと思いきや、阿呆の類じゃったか……』
「あれぇー?」
「言ったじゃないですか、言ったじゃないですかぁ……!」
ダキニの居る遺跡の中を進んでいく事暫し。
少し前に探索した時とは違い、遺跡の中全体が和風の……それこそ木造建築の様に変化し、出現するモンスターも銀狐の様なモンスターに変わっていた事を除けば別段特に問題は起きず。
そうして辿り着いた、ボス部屋へと繋がっているであろう巨大な襖を開けると。
何処から調達したのか、巨大な紅い盃に酒らしきものを注ぎ寛いでいるダキニの姿があった。
追い返した筈の私達が現れた事で一瞬殺気が漏れたダキニに対し、私はすぐさま訪れた理由と手土産を渡すと……何故か呆れた表情を浮かべられてしまったのだ。
「でもそっちにとっても損はないんじゃないかな?」
『ほう、言うではないか。何故、と問うた方が良いか?』
「あは。単純に、ここに居る私達はそれなりの強さを持ってるモンスター……それに、人間とも繋がりがある訳だ」
『……ふむ、続けろ』
勿論。私も手土産だけでダキニが私達を相手してくれるとは3ミリも思ってない。
だからこそ、こちらが切れる手札は切っていく。
そう、プレイヤーだからこそ切れる手札を、だ。
「人間の情報、それも多くの人間が集まってる場所の情報とか……どう?欲しくない?」
「ちょ、ちょっと!イヴさん!?」
「黙っててフレデリカちゃん。私達はモンスター、別に人間の街や国が最終的にどうなろうと関係無いんだよ、元々」
そう、私達はモンスター。
今は封印されているモンスターを討伐、もしくは再封印する為の準備を共に進めているものの、それが終われば人間達とは敵対するのがKFOという世界。
下手に人間達の国を歩く事は出来ず、かと言って巨大な集まりもない個々人の力にのみ生き死にを左右されるのが私達だ。
だからこそ、力が欲しい。後ろ盾となる存在も欲しい。
『興味深いのぅ。して、汝らはこの遺跡の主である妾に何を求める?先程言うた汝らの鍛錬を手伝ってほしい……だけじゃあなかろう?だったら適当に貢物を用意して、取れるかどうかも分からない妾の機嫌を伺い続けていればよかろうて』
「うん、違うね。……国興しとか、興味あったりする?」
『ほう』
「!?!?」
フレデリカが凄い表情を向けてきているが無視をして。
「人間の国があるとモンスター的には邪魔でさ。人間の料理とか優れたモノはあるけれど……正直、それだけだったら私達も設備があれば作れる。だったら」
『力有る妾が今ある国の1つを堕とし、その後そこを拠点にしたいと?』
「そうだね。もしも欲しかったら忠誠とか誓おうか?あぁ、でもフレデリカちゃんは一旦保留で。彼女は私の考えを今ちゃんと初めて聞いたからね。もし彼女が一緒に、って話にならなかったらその分だけ私が頑張らせてもらうよ」
改めて私の、この『Kaleidoscope Frontier Online』での至上命題を明確にしておこう。
それは……食べる事。様々なモノを喰らい、そして味わう事が私のこのゲームをやる意味であり目的であり続けている理由だ。
そしてそれに国の所属は問わないからこそ、人間ではなくモンスターに。
人間の生死など関係がないからこそ、今ここでダキニに提案をしている。
封印されているモンスターをどうこうするのだって、私の活動圏に近いから対処しようとしているだけの事。そこに人間の事情など一切合切関係ない。最初から最後まで私情たっぷりなのだ。
……さて、どうでてくれるかなダキニは。
そして、そんな考えにフレデリカが乗らなくてもいいと私は考えている。
どう考えたって、私の考え方の方がおかしいのだ。
人間の国を堕とす、と言う事は数多くの……モンスターアバターよりも多い人間アバターのプレイヤー達を将来的に相手取る必要が出てくると言う事。
下手な事は出来ず、失敗したら……この湿地という場所すら追われかねない。
故に、賛同しなくても良いようにと付け加えた。彼女がこれで私との縁を切って良い様に。
『呵呵、面白い。良いじゃろ良いじゃろ。元よりここだけで満足するつもりもなかったからのぅ。暇潰しに人の棲む場所にでも向かおうかと思っていた所じゃ。情報があるのとないとでは色々と違うからな、汝の誘いに乗ってやろう』
「あは、良かった――」
『――だが、その軟体の小娘も共に、じゃ。これは譲れん。下手に妾と汝の関係を知る者が外様に居ると何が起こるか分からんからな。毒は喰らわば皿まで、と言えばお主には伝わるじゃろう?』
「……!」
とまぁ、ここも予想は出来ていた。
ダキニが面白そうな事に乗ってくるであろうことも、そしてフレデリカも共にその流れに飲み込もうとしてくる事も。
だからこそ、
「ちょっと話が」
「大丈夫、大丈夫ですイヴさん」
「……フレデリカちゃん?」
更なる交渉をしようとした所で、私の言葉はフレデリカによって遮られる。
彼女の方へと視線を向けると……何かを決めた目をこちらに向け、軽く微笑んだ後。
「良いですよ良いですよ。私もその話に乗らせてください」
そう言った。
「……良いの?」
「勝手に話を進めて何を言ってるんですか」
「いや、だからフレデリカちゃんだけでも話から除外しようとしてた訳なんだけど……」
「いえいえ。私だってモンスターですし、そもそも私だって目的があります。物を食べる事がイヴさんの目的なんだったら……私は巨大な植物園を作りたい。その為には巨大な土地が必要なんです。だったら……国堕としからの国興し。それに乗っからない選択はありませんよ」
「……君も大概な目的あるねぇ」
「あれぇ!?イヴさんがそんな顔する程ですかね?!」
知らなかった彼女の目的が知れて。
尚且つ、その為に大きな土地……邪魔のされない土地が必要である事を打ち明けられて。
そして、私とダキニの企みに乗ってくれる。それだけで笑みを浮かべるには十分だった。
『話は終わったようじゃのぅ。……して、これからは汝らと呼ぶよりも、名を知っておいた方が良いじゃろ。汝らの名は何と言う?改めて、汝ら自身の口で聞かせてくれぃ』
「私はイヴ。魂喰いのイヴ」
「私は私は、フレデリカです。ドライアドのフレデリカ」
『呵呵、イヴにフレデリカ。これからは妾の為に働いてもらうぞ、覚悟するように』
こうして、元々の目的であるダキニと交流を持ち鍛錬を付けてもらう、という話から派生し脱線しまくった結果……私達は共通の上司を得て。
封印されているモンスターとの戦い後がこれまで以上に忙しくなる事が確定したのだった。





