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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第6章 嵐の前の静けさ編

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Episode8 - 知り得てしまった

6章終わり


 交流エリア。

 スオウ達と食事をした場所とは違い、交流エリアの中心部からは外れた位置にある静かなカフェの様な場所。

 そこで、私は元々着ていた初期の服を。そしてフレデリカは有り合わせの素材で作った仮面を被りつつ、私が着ていたアリス風の装備を付けて相手を待っていた。

 本来ならば1人で待つ予定だったのだが……相手が相手。私だけの察知、感知能力では心許ないと考え、半ば無理を通す形でフレデリカについてきてもらっていた。


「お、来たね」

「来ましたね来ましたね」


 と、ここで。

 1人のローブを目深に被った、注意深く観察しなければ見失ってしまうほどに気配の薄いプレイヤーが店の中へと入ってきて……私達に気がついた。

 彼は気まずそうにしながらも、そのまま私達の対面へと静かに座り、


「メッセージの件、本当?」

「あぁ、私達に出来る限りのサポートはしてあげるよ」


 そう言った。

 先の食事会にて、不用意に反応してしまったが故に自身の所属が透けてしまったプレイヤー……サラシナだ。


「さて、交流といこうじゃないか」


 未だ緊張が解けていない様子のサラシナに対し、にっこりと笑いかけてやると……どうしてか身体が更に強張ったような気がする。

 隣に座るフレデリカからは呆れた様な視線をこちらに向けられているが仕方がない。

 これが私なのだから。


「ま、変な腹の探り合いなんてやめておこう。改めての前提条件の確認さ」

「……自分が持つ情報を渡す代わりに、妨害派ではなく討伐派に席を用意してくれる」

「そうだね、それで合ってる」

「良いのか?君は……会話の内容的に討伐には乗り気じゃないんだろ?」


 その問い掛けに、浮かべていた笑顔が少しだけ崩れる。

 確かにそうだ。私は別に今すぐにでもワールドボスを討伐したいとは考えていない。

 だが、それ以上に。


「情報が欲しくてね。何分、私は仲間が少ない。それこそ、ちゃんと仲間だって言えるのは……横に居るこの子と、ロートちゃんくらいなもので、君らや討伐派の子達と比べると圧倒的な数の差があるのさ」

「……理解した。要は人海戦術によって得られた情報が自分達の知るモノとどれ程違っているのか、もしくは知らないものがあるのかを知りたいのか」

「話が早くて助かるよ」


 そう、結局の所はそこなのだ。

 私達は基本的には2人で動いている少数も少数派。故に、取りこぼしてしまう情報も多いし、情報を得る速度もそこまで早くはない。

 ロートに言えばある程度の情報は貰えるだろうが、それにしたって討伐派や保守派の持つ情報と大差は無いだろう。

 だからこそ、妨害派というどちらにも不利益を齎そうと動き続けている者達の持つ情報が欲しいのだ。


「じゃあ……」

「あ、色々話してくれる前に。1つ質問良い?」

「……何だろうか?」


 早速話始めようとしたサラシナを遮って、私は1つ確認しなければならない事があったのを思い出した。

 それは、彼が妨害派だと露見してしまった原因の話題であり、私……否、モンスターアバターであるが故に知っておかねばならない事柄。


「『月の従獣』、君はこの名前を知っていたね。あの時も言ったけど、多分仲間内でそれに成ったプレイヤーが居たんだろう。……そのプレイヤーはどうなった?」


 『月の従獣』。

 未だ詳細は分からないものの、ニドリーと相対しつい先程ダキニという例外らしき存在にも邂逅した。

 その上で気になるのは……フレデリカの様に、それがどの様な存在か知らない者が成ってしまった時に起こる顛末だ。

 ニドリーは明らかに自由意志が無く、石板を守るように……私を排除する様に動いていた。

 ダキニも見方を変えれば、石板が有る自身の家から侵入者達を追い出す為の行動だったと言える。

 ならば、基本的に自由意志を尊重されるはずのプレイヤーは?


「……まず、『月の従獣』という種族はモンスターではあるものの、モンスターじゃない」

「と言うと?」

「アレは名前の通り、アレの上に居る者へ従属する種族であって、モンスターというよりは機械に近い何かになるんだ。命令権をもった絶対的上位者が居て、それには逆らえない様に出来ている」


 語られる内容は……ある意味予想出来ていた内容だ。

 従獣、という単語が付いているのだ。成った先の彼らが従う相手が居なければ成り立たない。

 その上で、


「そして、その絶対的上位者は……各国の土地に封印されている」

「……あぁ、成程。やっぱりそういう類か。じゃあロレリア以外でも暗躍してる妨害派が居るわけだね?」

「そうなるな」


 予想通りの内容を話してくれた。

 ワールドボスの為の兵隊。従い、機械の様に戦い続けるボスの取り巻き。

 それが『月の従獣』の役割であり、使命なのだ。


「で、知りたいのは……プレイヤーがどうなったか、だったな」

「そうだね。どうなった?ある程度予想は付くけど」

「そうだな……有り体に言えば、キャラロスト。アバターの制御権を手放すかの選択肢が出現。拒否を選択後、意識だけが別の特殊なフィールドへと転移して、定期的にボス並みの個体と戦う事でアバターの制御権を徐々に取り返していく……らしい」

「おっとっと、思ってたよりも厳しかったな」


 正しく言えば、キャラロストの前段階、だろうか。

 サラシナは明言していないが、この言い方的に意識が転移した後の肉体はニドリーの様に暴れ出すのだろう。

 救いのない話としては、それがプレイヤーのアバター故にスポーン位置にて復活してしまう所。

 それに……人によっては、意識だけで戦うらしいボス個体もまともに倒せない可能性だってあるはずだ。


「あぁ、だがそう成る前にしっかりと運営側から誓約書にサインする旨を求められたらしい」

「制御出来れば何にもないけど、出来ないならキャラロストと同じだしねぇ……ちなみに成ったっていうプレイヤーは?」

「今は別のアカウントを作って活動中だ。流石にログインする度に肉体だけが周囲を無差別に破壊しようとするのは……中々なものらしい。意識の方の戦いもそれなりにキツかったみたいでな」

「ふむ、まぁ道理だね」


 なお、私とサラシナの会話については、フレデリカがロートに対して周囲の声を拾う様に通話を掛けている為、しっかりと身内内で共有出来ている。

 何かあれば、ロートからチャット経由で聞いて欲しい内容が飛んでくるだろう。


『イヴ、そのプレイヤーの名前も聞いておいて。こっちで締め上げる』


 ほら来た。


「ちなみにその人の名前は?流石に妨害派って分かってて対処しないのも……うん、出来ないし?」

「名前はスゥーリヤ。ロレリアにある教会で、神父RPしながら働いてるはずだ。幻覚系のスキルを何個か取ってた記憶がある」

『……うん、確認取れた。確かに居るね。捕まえとく』

「ありがと。気を付ける」


 早速ロートが動き出した様だが、私達はこのまま話を続ける。

 向こうも向こうで進展があれば何かしらの情報を投げてくれるだろうから。


「さて、じゃあ色々君が知ってる事を話してくれるかな?まぁ結構もう聞いた気もするんだけどさ」

「あぁ。知ってる限りの事を伝えよう」


 サラシナからの情報提供は約1時間程掛かった。

 私達が知る、石板に書かれてたロレリアという国の建国や封印されたモンスターにまつわる話から、私達の知る由もない、スゥーリヤというプレイヤーの様に国の中へと入り込み得た情報。

 それらを話を聞いているロートとチャットを用いながら精査し……ある程度それがまとまって。


「はぁ〜……マジかぁ……」

「そ、そんな反応をする程だったのか?」

「こんな反応をしたくもなる情報だったよ、本当に。だってさ――」


 得られた、確度が高いとされる情報は。


「――もう、封印が解けかけてるなんてさぁ」


 早くとも、イベント終了後。

 封印されているモンスターが復活してしまう、という情報だったのだから。



――――――――――

プレイヤー:イヴ

合計スキルレベル:43

 戦闘カテゴリレベル:17

  保有スキル:【噛みつき】Lv3、【捕食】Lv3、【カニバリズム】Lv2、【部位破壊】Lv2、【大食漢】Lv3、【ヒットボックス拡張:右腕】Lv1、【魂喰い】Lv2、【背水の陣】Lv1


 探索カテゴリレベル:3

  保有スキル:【聞き耳】Lv2、【隠密】Lv1


 その他カテゴリレベル:23

  保有スキル:【筋力増加】Lv2、【恐怖耐性】Lv2、【口腔生成】Lv2、【多産】Lv3、【配下指示】Lv2、【主従共有】Lv4、【バフチェイン】Lv1、【旧共通語】Lv1、【狂気耐性】Lv2、【骨鎧生成】Lv1、【光合成】Lv1、【霊体化】Lv1、【魂視】Lv1

――――――――――

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