Episode7 - 逃げて、改めて
みじかめ
「はぁー……いやなんだアレ」
「生きれた……生きれた……」
その後、私とフレデリカはダキニの居た遺跡の場所をしっかりと確認しロートへと報告。
ロートも知らない強者、それも会話の出来るモンスターボスと言う事で恐らくは国から監視が付くのではないか?と話していた。
正直、相対した側からすれば監視もあまりしない方が良いとは思うのだが……その辺りはリアルでは人である為に監視したい気持ちも理解出来てしまう。
とは言え、だ。
「経験値自体は集まったよねぇ……」
「意外と集まってますね。レッドキャップ自体はそこまで狩ってない筈なんですけど」
「んー……ダキニが狩った分も入ってる?」
今の私達の懐はかなり潤っていた。
元より、レッドキャップを狩ろうとしていた理由は2つ。
1つは確実に逃げきれない為。レッドキャップの習性的にもこれは仕方がないだろう。
そして2つ目は単純に経験値の為。数多くのレッドキャップを狩る事で得れる経験値は馬鹿に出来ないのだから。
その2つの内、経験値に関してはダキニが現れた時点である程度諦めていたのだが……どうやらそうはならなかったようで。
……えぇっと、一応運営に報告……あぁ、仕様ね。はいはい。
すぐさま経験値に関して運営へと確認をとってみれば。
メッセージ形式で仕様であると1分も掛からずに返ってきた。
どうやらあのダキニとの遭遇は……ある種のイベント措置的な何かだったらしい。
「あのあのイヴさん」
「何だい?」
「あのダキニってモンスター、多分石板使ってました……よね?」
「恐らくね。遺跡内に居たモンスター的に……っていう状況証拠しかないから確定じゃないけど、割と確定寄りだとは私は考えてるかな」
その上で、気になるのはダキニの存在だ。
何故居るのか等の疑問ではなく、どういう存在なのか。以前出会い打倒したニドリーと違い、明確に自分の意志を持って行動している様に見えたのだから……疑問に思うのは当然だ。
それに話が出来るという点でも中々に興味深い。
今の所、私が出会ったボスの中で会話が出来たのはこれで3体目。その中でも……自身の領域内での面倒事の対処の仕方を見るに、こちらが最低限の礼儀を弁えていれば交渉も出来るかもしれない。
……交渉が出来るなら、結構気になる事があるから聞きたいんだよね。
まぁそれをするにしても、もう少し実力を付けてからにはなるだろうが。
流石に軽いジャブの様な一撃で骨の甲冑を破壊してくる相手の前に立つのは怖すぎる。
せめて反応する事が出来る程度までは自身の実力を付けなければ……次は首が飛ぶ事だろう。
「ま、今回ゲット出来た経験値でスキルゲット出来るし、レベルも上げられるからね」
「そうですねそうですね。……そう言えば、人間側からはまだ特に?」
「無かったねぇ。私が今回のイベントで接触したのは討伐派。封印関係の情報を握ってそうなのが……多分だけど保守派と妨害派なんだよ」
「あちゃちゃ」
そして、ワールドボスに対する情報もまだ足りていない。
今回のイベントで出来るだけロート以外から見たワールドボスに関する情報を得たかったのだが……どうにも上手くは行かなかった。
私がテンション上げてスオウや他のプレイヤー達を喰らい過ぎて引かれた、というのもあるが。
しかしながら、その中でも得られたものはある。
「……お、フレンド登録してくれてるね」
「誰です誰です?」
「んー……簡単に言うと、討伐派に入り込んでた妨害派のスパイくん、かな?」
「わーぉ。結構良いポジションの……いえ、入り込んでた、ですか?」
「うん。一緒にご飯食べてる時にちょっとカマかけたらボロ出しちゃってさ。流石に討伐派としてはそのまま仲間として扱うのは無理なんじゃないかなぁ」
「イヴさん……」
何やらフレデリカは何処か遠い所を憐みの目で見つめているが、放っておいて。
今回のイベント中にフレンド登録してくれた1人……サラシナへとメッセージを手早く打って送っておく。
「これで良し、と」
「なんて送ったんです?」
「んー?いやまぁ、簡単だよ」
彼はかなり甘い。甘すぎると言って良いくらいに甘い。甘ちゃんだ。
何で妨害派なんてモノに属しているのかが理解出来ない程に。
だからこそ、私が送った内容には喰いついてくる事だろう。
なんせ、
「『元居た場所に戻る為の手伝いをしてあげよう、その代わりに持っている情報をある程度で良いからくれないかな』ってね」
「……えっとえっと……それで本当に乗ってくるんです?」
「言いたい事は分かるよ、フレデリカちゃん。でもね、世の中にはこういう分かりやすく罠でしかない甘ぁーい言葉に引っ掛かっちゃう状態の子も居るんだぜ」
そう言った瞬間、メッセージの返信がやってくる。
その内容は。
「あはッ」
正しく、私が言った通り。
私に協力をする旨を記した、サラシナからの返信だった。





