Episode4 - 終わって、感じて、考えて
食事の場、という名の情報収集を終えた私は交流エリアから見慣れた元ボス部屋へと戻ってきていた。
「んー、私自身の実力もそうだけど……そもそもとして封印されてるモンスターがどれくらいの強さなのかが分かってないのが辛い所かなぁ」
現状分かっている事は、封印が緩くなってきている事と当時のロレリアにおいて災厄とまで言われるほどの被害を齎したという事。ついでに言うならば、恐らくは『狂気』関係のデバフを使ってくる事くらいだろうか。
つまりはほぼほぼ何も分かっていないに等しい。
……実力、実力ねぇ。
私自身の強化をするのは実は簡単だ。
機動力と、【捕食】を十全に発動出来る環境を整えられるようにすれば良いだけ。
アイテムを使っても良いし、現在の装備をその手のモノに組み替える事が出来れば……それなりに戦えるようにはなるだろう。
「他の問題点としては……」
「拘束に対する手段の無さじゃないかな?」
「ロートちゃん」
と、ここで。
トーナメントへの出場が終わったらしいロートが転移してきながらも私の話に参加してくる。
「試合の方は?」
「もっちろん優勝!まぁ私が使いやすいようにスキルとか構築してたからね~。ここまで誰にも見せてない手札とか色々あったし?」
「流石だねぇ……」
私を下した友人が優勝する、というのは少しばかりの悔しさもあるものの喜ばしいモノだ。
そしてロートが指摘した私の問題点。そこに関しては……少しだけ対策という名の机上の空論が既に頭の中に出来ている。
試しに出来るかどうかを置いておいて、私の考えを話してみれば、
「……確かに、それが出来れば拘束とか関係は無くなるね。イヴの強みもそのまま乗せられるし一石二鳥かな」
「ちなみにその手のスキルって?」
「あるよ。勿論レアスキルだし、獲得するのに結構な経験値が掛かるけどさ」
「まぁーた経験値集めか……ままならないなぁ」
どうやら、ロートが知っているスキルの中にそれを実現出来るものが在ったらしい。
その情報だけでも十分、私の未来は明るくなってくれた。
「で、イヴは討伐派の人達と食事してたんだっけ?」
「何で知って……ってあぁ、掲示板か」
「そうそう。ある意味有名人だよ、イヴ。……で、ぶっちゃけどう思った?」
「んー……多分挑んだら負けるんじゃない?悪くてロレリア滅亡とか?」
「あっちゃー」
当然、話はワールドボス、そしてそれに挑もうとしているプレイヤーの話へと移り変わる。
ロート自身も実力不足自体は分かっていたのか、困った様なリアクションを取りながらも苦笑を隠してはいなかった。
……ロートちゃんがどれくらいの隠し玉を持ってるかは分からないけど……それでも足りないんだろうなぁ。
彼女自身、今すぐではないものの。プレイヤー達の実力がほぼ現状と実力が変わらない状態で挑むのはあまり好ましいとは思っていない様だ。
トーナメントに出場していた私を含めた8人は兎も角として、それ以外の……それこそ私1人に蹂躙された様なプレイヤー達が集まってもどうしようもないからだろう。
「底上げというか……そこら辺の強化計画とかそういうのって動いてるの?」
「一応イヴが知ってるプレイヤーで言うなら……ケントやスオウ辺りが討伐派の何人かと協力して、一定水準までは引き上げようとはしてるみたい?掲示板の方にさっきコメントしてた」
「ふぅん……」
「あとは……プロゲーミングチームも動いてるっぽいよ?」
「へぇ?どこ?」
「フラワーダンスだね」
「あぁー」
フラワーダンス。
名前のほんわかさとは裏腹に、FPSジャンルをメインに活動するプロゲーミングチームだ。
最近ではVRゲーム部門も発足し、VRMMOをプレイしているメンバーも居るとは聞いていたが……KFOにも居たらしい。
「あそこ、どっから引っ張ってきてるのか知らないけど色んな選手も居るし知名度もあるからね。討伐派、保守派の両方に力を貸してるみたい」
「二足の草鞋って奴?思想的には同じチーム内で対立してないそれ?」
「良いんじゃなーい?そこも楽しんでなんぼなのがゲームでしょ」
「まぁそれもそっか」
聞けば、フラワーダンスのメンバー達が行っているのはプレイヤー達の実力の底上げの為の素材の融通……だけでなく。
ゲーム内での連携の取り方や、それこそ各所での状況判断の考え方など今後の為にもなる事柄をほぼ無償に等しい状態で行っているらしい。
プロゲーマーから教えを乞える、となればリアルのお金を払う人も出そうなものだが……彼ら曰く。
『今後、このゲームの新コンテンツに触れられるのが一番の報酬』と言って僅かなモンスターの素材だけを貰って活動しているとの事。聖人かなにかなのだろうか。
「おっけおっけ、それならロートちゃんも活動すれば人間側はある程度実力揃いそうだね」
「あれ?私なんか働く事になってる?あれれ?」
「じゃあ私は多分周辺の探索してるフレデリカちゃんに合流するから、ロートちゃんも良い所でロレリアに帰りなね」
「おーい?私その話聞いてなかったんだけど!?何その活動すればって!?」
何やら騒いでいるロートを元ボス部屋に残し、私はフレデリカにチャットを送って合流する事にした。
プロゲーマーがボランティアの様な活動をしているのに、現状のプレイヤーの中でもトップクラスであるロートが実力の引き上げに参加しない訳にはいかないだろう。
願わくば、私達がワールドボスに関する何かしらの新しい情報を得るまでの間、他のプレイヤー達にこき使われてほしい。





