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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第6章 嵐の前の静けさ編

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Episode3 - 話はするけれど


「とは言え、今言ったように人数は3つのグループの内で一番少ない。……けど」

「……少ないが故に、誰がそこに属してるか分からない。もしかしたら俺達のグループにも潜り込んでいる可能性だってある」

「そう。そこでうちのグループのトップ……さっきお前と試合してたロートさんが、お前なら何かしらのモンスターの情報を持ってるかもしれないから頼りなさいって言ってたんだよ」

「おのれロートちゃん……面倒事を押し付けたな……」


 事情は分かった。そして、彼らが情報を求めている理由も分かった。

 要するに、彼らは出し抜きたいのだ。他の2つのグループを。

 それぞれ3つのグループを言い換えるならば、討伐派、保守派、そして妨害派に分けられる。恐らく、多くのNPC……このゲームにおいてモンスターという存在が悪だと、討伐する対象であると教えられ育ってきた者達は討伐派に属するだろう。だからこそ、彼らの勢力が一番人数が多くなっているのだ。

……危険、と言えば危険だね。

 確かに、妨害派の存在を知っていると時間を掛け過ぎるのは良くないのは理解出来る。

 逆に、もしも時間を掛けたとしても保守派が封印を維持出来るだけのリソースを確保出来るとも限らない。

 故に討伐出来るならばすぐにでもしてしまいたいのだろう。


「ふーむ……まぁロートちゃんが私に聞けって言ったって事は、大体何を話せばいいのかは理解したよ」

「本当か!」

「あー、ステイステイ。先に言うと、私……というか、私と身内はまだ封印を弄る方法は知らない。見つけてない」


 私がそう言うとケントはあからさまに落ち込んだように肩を落とす。

 その様子に少しだけ面白くなりながらも、


「ただ、君達が知らない事が無い訳でもない」

「……先程、自分で抽象的な言葉はやめようと言っていなかったか?」

「言ったね。ごめんごめん。――君達は、『月の従獣』について知ってるのかな?」

「月の、従獣……」


 私の言葉に、彼らの反応は2つに分かれた。

 ケントとスオウは聞いた事も無かったかのように。

 そして、もう1人。射手はと言えば、


「ッ」

「あはッ、逃がすかよ」


 その言葉を聞いた瞬間、気配を極限まで薄くしてその場から逃げ出そうとした。

 だが、それは意識を割かれていなかったらの事。

 咄嗟に食事をしていた右手を伸ばし、しっかりと射手の肩を上から抑え付け座らせる。


「何をっ」

「……待てケント。話していれば分かるだろう。彼女は戦闘中でもないのに突然襲ってきたりはしない」

「うんうん、普通はね。それにここは交流エリアだぜ?襲えないってのは会った時に言った通りだよ?」

「じゃあ何で……」

「うん、多分この子妨害派の子だからさ」

「「は?」」


 私は射手から視線を外さず、右手と射手の肩を骨の甲冑によって拘束。逃げたくても逃げられないようにして。

……うん、ここまでだったら警告とかは飛んでこない訳ね。

 交流エリアでのスキルの使用、及びプレイヤーの拘束についての仕様をある程度理解する。

 要するに、ダメージを与えなければ良いのだ。

 骨の甲冑によって強く締め付けてしまえばダメージになってしまうが、ちょっと身動きがとれない……動き辛い程度の拘束ならば、運営も見て見ぬふりをしてくれる。

 それが分かった上で、


「で、どうなの?射手ちゃん……じゃないね。君、男の子か」

「おい、サラシナ……本当なのか?」

「……」


 射手……サラシナと呼ばれたプレイヤーは、苦々しい表情を浮かべながらも、渋々といった風に席へと座る。

 それだけである程度察したのだろう。

 ケントとスオウの2人は難しい表情を浮かべつつ、お互いに視線を交わした上でスオウが誰かと連絡をとり始めた。


「まぁ私もそこまで確証があった訳じゃないんだけどね?さっき出した名前は石板やらを少なからず集めてないと反応出来ない名前。ケントくん達が知らないのは……君らの中にモンスターアバターのプレイヤーって居ないでしょ」

「居ないな……あくまでも俺らはロレリアで集まった、人間のみの集まりだ。だから今回、モンスターであるアンタを頼ろうと……」

「そう、そうなる。普通なら。でも、さっきの名前を知ってる、もしくはそれに反応するのは、少なからずモンスターの関係者が居る場合に限る。……で、ここで妨害派の考えをある程度再確認してみると」


 妨害派はあらゆる手段を持って、他2つの派閥の準備をある程度邪魔出来れば良い。

 その上で、現状一番やりやすい妨害と言えば……やはり、過去の出来事や封印されているモンスターに関係するスキルを獲得可能になる石板を集め、隠す事だろう。

 私のその考えを話してみれば、2人は納得した様に頷き、サラシナは項垂れていく。

……どう考えてもこの子、妨害派に向かない性格っぽいんだけどなぁ。

 ここで開き直らない辺り、ある程度の良心はあるのかもしれない。

 それか、そもそもとしてワールドボスに分類される様な存在に今の段階…….まだサービスを開始して間もない現状で手を出すのは時期尚早と考えている可能性だってある。


「どちらにせよ、私も私であんまり早く挑むのはやめておいた方がいいと思う側だからね」

「なっ……いや、アンタに負けた以上そう考えられるのもおかしくはない、よな」

「あは、そういう事」


 討伐派のプレイヤーも、実力が低すぎる訳ではないのだろう。

 それこそ、持ちうる攻撃手段が相性が悪かっただけでスオウは強い。ケントだって、バフを重ねた私と一定時間戦闘を行えるくらいには実力を付けている。

 だが、彼らの様なプレイヤーが多い訳ではないと私は今回のイベントで知ってしまった。

 だからこそ、挑む云々よりも先にプレイヤー達の実力の底上げを行った方が良い、と考えているのだ。


「ま、その辺りの面倒事やらまとめとかは人間側の君達に任せるよ」

「……イヴ……さんはこれからどうするんだ?」

「呼び捨てで良いよ。私は……まぁ今回のイベントで自分自身の課題も改めて把握出来たし……」


 ちらとケント達の方を見る。


「当初の目的も達成出来たしね。あぁ、ケントくんは知ってると思うけど、私に会いたかったら湿地の方に来てね。お腹が減ってなかったらきちんとお話する場を作ってあげるからさ」


 そう言って、丁度机の上にあった料理を食べ終えて。

 私は代金代わりの何個かのモンスター素材をスオウへと手渡した後、席を立つ。サラシナの拘束に関しても、もう必要ない為に離しておく。後の話は彼ら当人同士でするべきだろう。

 人間側の動向、というよりは。彼らがどう考えどう動こうとしているのかは理解した。


「よし、フレデリカちゃんと作戦会議だっ。……ってやべ、結局私からは何も話してないのと同じだな」


 その上で、私とフレデリカがどう動くかは……石板の集まり方次第にはなる筈だ。

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