Episode2 - しょくじをしよう!
「なんだよぉ……俺はもう喰った後だろってぇ……」
「別に戦闘中でもないし、仕掛けられない限りはあんな事しないよ。それにここは交流エリアだぜ?」
「それはそうなんだが……流石にな?」
ちなみにではあるが、交流エリア内ではスキルの使用自体は禁じられていないものの、戦闘行動に準ずるモノは運営からペナルティが課せられる旨が事前に通達されている。
検証系のプレイヤー達が試した結果が既に掲示板の方に載っていたが……どうやら懲罰用のNPCがその場で両者、或いはその戦闘に関与した全員の首をノーモーションで刎ねるそうだ。
流石の私も、そんなことが分かっている状況でヒルマを取って食おうとは考えない。
「で、それなら結局なんで俺は捕まえられたんだよ?」
「私がモンスターアバターだって知ってるじゃん?人間の国の料理とかよく分からなくてさ。その辺の案内を頼もうかなって思って」
「あー……」
ここでヒルマも私が彼を捕まえた理由に思い当たったらしい。
見た目が人間、そしてコスプレ紛いの格好をしている所為で他から分かりにくいが、私は結局人間社会からは弾き出されているモンスター。
先程から様々な料理の匂いが鼻をくすぐろうとも、私にはそれが何を使ったどういう料理なのか分からないのだ。
故に、その手の事をある程度は知っていそうな……丁度少しは会話を行ったヒルマが居た為に捕獲した。
「理解はした。それなら良い場所がある……が、すまん。俺この後、この先の決闘エリアで試合があるんだわ」
「おや、それはごめん」
「いやいい。だから少しここで待っててくれ。共通の知り合いを呼んどくから」
「へぇ?」
そう言われ、待つ事約5分。
現れたのは、
「……ヒルマの奴……」
私の事を視認して天を見上げたスオウだった。
「やぁ、スオウくん。君が私の案内役かな?」
「……生憎とそういう事らしい。話は聞いてるが、何でも良いから多くの種類の料理が食べたいんだろう」
「話が早くて助かる!」
「……まぁよく確認しなかった俺のミスでもある。案内しよう」
危険人物扱いされている雰囲気はあるが、それにはあまり意識は割かず。
案内されるがままに進んでいくと、
「おぉ……何この和風と洋風と中華を合わせて2で割った感じの建物」
「……知らん。だが、俺やその周りが確認した中では全ての国の料理を扱っているのがこの店だ」
「そう?ならいいや」
そう言ってスオウと共に中へと入る。
正直、案内をしてくれたら後は解散しても良かったのだが……まぁ彼にも彼で何かしらの理由があるのだろう。
中も中で、天井からはシャンデリアが吊るされ、座敷や中華風の装飾など文化や使われている建築技術がごちゃ混ぜになっていた。
とは言え、問題はここで出してくれる料理だろう。そう考え、スオウと共に適当な空いている席へと移動しようとしたタイミングで、
「いやぁ、すまない。こっちの毒が決まった時はやったと思ったんだが――」
「?どうしたケント。店の入り口で立ち止まられたら困る――」
「おや?」
背後からまたも知った声が聞こえ振り向けば。
そこには私を見て固まった2人の顔見知り……私に毒を盛ったケントと、完全には喰い切れなかった射手の姿がそこにはあった。
スオウは何かを察したのか深く溜息を吐く。
「やぁやぁケントくん達。ここで会ったのも何かの縁、同じ釜の飯を喰らおうじゃあないか」
「――いや、俺らは別の店に行くんで」
「――また今度」
「あは、年上のお姉さんのお誘いを断るもんじゃあないぜ?」
「「?!」」
すぐさま踵を返し店を出ようとした2人に接近し、それぞれの肩を逃げられないように掴む。
「おっと、気を抜いたら食べてしまうかもしれないな。丁度ここは食事処だし……私は元々人が主食のモンスターだから、もしかしたら……これも戦闘行動には取られないかも?」
「……分かった!分かったから離してくれ!」
「うぅ……運が無い……」
2人してすぐに諦めたようで。
呆れた雰囲気を醸し出しているスオウと合流し、4人で席へと座る事になった。
そうして、時系列は今へと戻る。
―――――
封印されているモンスターについて。
正直に言えば、私が持っている情報は本当に少ない。何せ、調べようと思えば今では掲示板を漁れば幾らでも出てくるだろうものばかり。
その上で、私に何かを聞き出そうとしているのならば、
「まず初めに、なんで私に聞こうと思ったのかを聞いていいかな?正直言えば、私と君達ってついさっき顔見知りになったくらいの関係値じゃん?」
「……ケント、俺には腹芸なんて出来ないぞ」
「俺もだよ。まぁ……良いか。まず、人間側のスタンスというか……今その手の問題に関わってるプレイヤー達を説明するぞ」
スオウが困ったようにケントを見て、苦笑しつつケントが私の話し相手を引き継いだ。
未だ名前の分からない射手はと言えば……自分に話が振られないようになのか、スキルまでもを使って出来る限りの気配を消しているようだ。魂が視えている為に関係ないが。
「まずまずとして、封印されているモンスターを討伐しようと人を集めてるグループ。これが一番大きい勢力で、俺やスオウさんもここに属してる。ゲームだからな、ボスっぽいのは倒してなんぼだろ」
「うんうん、道理だね」
「次に大きい勢力として、封印を維持させられるなら維持してモンスターを討伐せずに済ませようってグループ。これは単純に、封印を解いたらNPCの人死にが出るんじゃないかって危惧してる人達がここに属してる感じだ」
「まぁ私達プレイヤーは復活するにしても、NPCはそうじゃないからね。それも分かる」
「そして……」
ケントはここで本当に言いにくそうに。
少しの嫌悪感と共に口を開く。
「最後に、そのどっちにも属さず封印の解除、維持のどちらの準備や作戦、その他諸々に至るまでを邪魔する事を目的にしてるグループだ。人のプレイにケチ付ける訳じゃねぇけど、正直こいつらはクズだな」
「……あっちゃー……」
明確に面倒臭そうな話題の予感がした。





