Episode14 - トーナメント2回戦1
正直に言おう。
最後はかなり自分勝手に愉しめたが、辛勝ではあったと。
今まで、私の戦闘スタイルの弱点は遠距離攻撃によるポーク戦術だと考えていたが……それだけでは無かった。これが分かっただけでもスオウとの試合は良い機会だった。
「にしても、やっぱり強いね【背水の陣】」
動けず、尚且つ碌な強化も出来ていなかった試合を覆したのは試合前に獲得した【背水の陣】あってこそだ。
ダメージを受け、HPが削られる程にステータスへの強化を得るスキルであり、その強化率は自分の残存HPに比例する。
当然、最大強化を得るにはHPの残りが1%以下……先程の試合で言うならば、首に短刀を突き立てられ急速に死へと向かったあの瞬間。
そうだったからこそ、鎖鎌の鎖を引き千切る事が出来たし、その後のスオウの攻撃も受けてはいたが【大食漢】や【光合成】によって許容出来る範囲に落ち着いていた。
「でも博打。狙って発動させるのはやめた方が良い」
とは言え、弱点の根本的な解決にはならない。
動きを止められ、強化も行えず、尚且つ遠距離から攻撃されてしまえば、折角強化出来たとしても近付く前に死ぬのは変わらないのだから。
故に、私が考えるべきは……移動能力の確保。これだろう。
……って言っても……流石に次の試合には間に合わないよねぇ。
スキルを得る事は出来る。だが、どのスキルが自分に合っているのかを吟味するには時間がまるで足りていない。
今後、それこそ試合が終わり交流エリアに移動してから考えるべき案件だろう。
故に、私は軽く息を吐き、
「で、次の試合はいつぐらい?」
「もう少し、時間で言うなら1分後となります」
「おっけ、ありがとう」
次の試合に備える事にしたのだった。
―――――
『さぁ、トーナメント2回戦!準決勝1試合目となりました!出場者、グループC勝者イヴ!』
転移してすぐ。
佐渡によるアナウンスと共に、私に対するブーイング混じりの歓声が四方から聞こえてくる。
観客の前であんなモンスター然とした最後を見せたのだ、ここでの評価は甘んじて受け入れよう。
しかし、私は目の前に居る対戦相手を見て……思わず顔を顰めてしまった。
『対するは、グループH勝者ロート!』
「奇遇じゃんイヴ」
「私としては全く会いたくなかったけどね?」
「ふふ、そんな事言わないでよ。お祭りだよ?楽しもう!」
身内であり、私にこんなコスプレ紛いの装備を渡した下手人であり……私の戦闘スタイルどころかその他色々な部分を知り得ているロートがそこには立っていた。
彼女の姿は、イベントが始まる前に見た時とは少し違い。赤ずきんの様な見た目なのは変わらないものの、所々に煙と狼の様な刺繍が施されたモノに変わっている。
手には2つ。見た目には似合わない青みがかった刀身を持つ刀と、1本の煙管。
そして、スオウにも匹敵する程の魂の大きさ。イベント前に視た時よりも大きく、何かしらの強化をしたのだろうと私には理解出来た。
……こっちは装備の内容まで知られてるのに向こうは知らない装備で固めてるんだもんなぁ。
勝ち目は薄い。断言できる。
とは言え、彼女の得物を見る限りはこちらとそんなに大差ない距離で戦うと判断も出来る。
そこに何とか【捕食】を挟み込めれば……勝機が生まれる、筈だ。
『ではでは!両者準備も整っている様ですので!――試合開始!』
「「ッ!」」
開始の合図と共に、互いが距離を詰める。
だが、先に攻撃の間合いへと入るのは……私の右腕よりも刃渡りの長い刀を持つロートの方。
彼女は勢いを殺さず、そのまま加速の力も利用して一直線に私の右腕へと刀を突き入れようとする。
当然、彼女は私の【口腔生成】の存在も、【捕食】の対象が生物に限らない事も知っている。知った上で、【ヒットボックス拡張】によって攻撃が当たりやすくなってしまっている右腕を狙ってきているのだ。
何かある。
だが、その何かは分からない。故に、私はダメージを受ける事を前提に右腕だけを骨で覆う。
「わぉ!それちゃんとは知らないスキルだけど結構便利じゃん?」
刃の切っ先が骨の鎧へと届き、そのままの勢いでその下の皮膚へと到達。肉を断ち、私本来の骨へと届く。そのまま刀は地面へと突き立てられ、私の身体はその場で固定された。
右腕は捨てる。この1秒もしない間に私が考えたのは、たったそれだけで。
その先の事は全て思考の外。ただの反射で身体が動き始めていた。
……あぁっもう!さっきまでのゆっくりした戦いはなんだったのさ!?
刀が肉に到達したと言う事は、それ程近付いたと言う事。
近付いたと言う事は、私の手が届くと言う事。
そして手が届くならば、
「イタダキマスッ!」
「おっとっと。まだ食事の時間には早いよイヴ」
左手に生成した口で、ロートの身体に触れようとして……身体を半身にして避けられてしまう。
一度でも触れればいいのだ。そう、一度でも触れればバフが得られるのだから。





