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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第5章 兵どもを喰らい征く編

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Episode15 - トーナメント2回戦2


 右腕には口は生成しない。

 ロートからすれば、私の骨の甲冑を突破出来る得物を手放す事は出来ない。だが、私がそれを喰らってしまえば話は別だ。彼女の持つ武器の中にはこのゲーム内で初めて出会った時に使っていた弓や、それに準ずる遠距離武器もある。

 刀という武器に拘らせなければ、私はそれらの武器を使われて近付く前に何も出来ずに死んでしまう。

 故に、多少怪しまれようとも刀は喰らわない。どうせ減ったHPは【光合成】によって徐々に回復出来るのだ。必要経費として捉えた方が良い。


「ほらほら、良いの?私の刀、別に食べたって良いんだよ?数打ちだしね、それ」

「食べたら食べたで離れるでしょ、君ならさァ!」

「ふふ、正解」


 触れれば一気に形成逆転が出来る。しかし触れられない。

 口を2つ、手のひらと甲に生成した左手で何度も何度も触れようとして、避けられる。

 時には手にもった煙管で手を叩き落とされ、顎を打たれ、身体を打たれ。

 徐々に回復が間に合わない程のダメージが蓄積されていく。

……クッソ、数打ちとか嘘じゃんか……!

 骨の甲冑を生成すればある程度のダメージは抑える事が出来ただろう。

 しかし、出来ない。しないのではない、出来ないのだ(・・・・・・)

 理由は分かっている。先程から【骨鎧生成】を使おうとする度に、視界の隅に流れるログ。


『!ATTENTION!現在該当スキルは『封印』状態にある為、使用できません:【骨鎧生成】!ATTENTION!』


 こんな警告文はこれまで一度だって見た事はない。

 何せ、『封印』というデバフを一度も喰らった事がないのだから。

 それの出元くらいは私でも分かる。骨の甲冑と右腕に突き刺さったロートの刀だ。

 彼女は数打ちだと言っていたが、確実に一点物。私のスキルを1つ封じる為の武器。

 私が近接距離に拘るのを知っていて、その上でその距離で戦う上での強みを1つ明確に潰す為の武器。

……ムカつくのは、別に私じゃなくても有効なんだよなぁソレ!

 考えを巡らす時間はない。

 こうしている今も、私の身体は煙管によって打たれダメージが積み重なっていくのだから。


「仕方、ないッ」

「おぉ、それは流石に予想外。いや聞いてはいたんだけどね?」


 私は左手で喰らう。

 ロートを?否、こちらの動き全てが読まれているのか避けられる。

 刀を?否、今更喰らう事にするならば最初から喰らっていればいい話。

 では何を?答えは1つ。――自分の右肩を。


「変に刀を喰らって『封印』されるよりもッ!もっと簡単な答えなんだよコレが!」

『【捕食】が発動しました。『狂気耐性強化』を付与しました』


 右肩を喰らい尽くすのは早かった。

 左手で喰らっている為に、味はしっかりとは分からない。とは言え、直近で喰らったスオウ達よりも美味いかと言われれば……そうではない。肉の味は感じられたが、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

 そして、今は味に浸っている暇はない。

 右肩を喰らい、右腕を無理矢理に喰らい離す(・・・・・)事で身体を自由に動けるようにして。

 刀が既に身体の一部にも突き刺さっていないからか、使えるようになった【骨鎧生成】を全身に発動させる事で無理矢理に止血をしつつ、【背水の陣】によって強化されたステータスで蹂躙しようとロートを見れば、


「煙?……いやッ!?」

「イヴは確かリアルでも吸わないからあんまり馴染みはないっけね」


 紫煙だ。

 いつの間にか少し離れた位置に居るロートが、手に持っていた煙管を吸い周囲へと紫煙を漂わせているのだ。

 それだけならばただのロールプレイ用の小道具にしか過ぎない。

 しかしながら、私の身体は何かに掴まれたように動かなくなってしまう。


これ(・・)については、また後で教えるから期待しといて」

「ぐ、ぎぎ……」


 御丁寧に、というか。

 恐らくは私の【捕食】や【魂喰い】を警戒してか、口を開けられない様に顎を紫煙が締め付け、尚且つ左手も紫煙に触れない様に拘束されている。

 【背水の陣】によって片腕のHP消費分の強化がされている私の身体をだ。

 ロートは私が満足に動けないのを確認すると、嬉しそうに笑みを浮かべた後。

 指を指揮棒のように軽く振る。

 その瞬間、彼女の周囲に漂っていた紫煙全てが何本もの手斧へと形を変えた。

……うへぇ……何だあのスキル……。

 骨の甲冑は展開してあるものの、こうして身動きが取れなくなっている以上、私にそれらを防御する手段は一切ない。

 甲冑自体の防御力を信じるしかないが……もしも耐え切ったとしても、その後が続かないだろう。

 故に、私は思考操作でメニューを開き、降参を宣言した。


『そこまで!イヴ選手が降参を宣言されました!よって、勝者ロート選手!』

「「「――!」」」

「じゃまた後でね〜、イヴ」


 光の粒子となって身体が消えていく中、ロートはこちらへと向かって満面の笑みで手を振っていたのだった。


『トーナメントにて敗退しました』

『3位決定戦へと出場する事が出来ますがどうされますか?』

「うん、とりあえずしなくて良いや」

『欠場の意思を確認。順位を4位で確定します』

『参加報酬及び順位報酬をお送りします』


 そうして、私は選手控室……ではなく。

 イベントが始まる前に居た、遺跡の元ボス部屋へと転移する形で戻された。

 そこには手元に何やらウィンドウを表示させたフレデリカが待っており、


「あ、イヴさん!お疲れ様でした」

「お疲れ様。もしかして観てた?」

「観てました観てました。まさかロートさんと当たるとは思ってなかったので、どっちを応援しようか迷いましたよ」

「あは、流石に相性悪すぎたねぇ。隠し弾多すぎだよあの子」

「あはは……」


 何にせよ、得るものが多かった戦いの数々だった。そう言える筈だ。

 そして、その得るものはまだこれからもある。

 未だイベントは始まったばかりなのだから。

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