Episode10 - 一息
そこから先の展開に、物語の様な起伏のある展開など一切なかった。
順当に強化された私が、活動可能エリアの収縮と共に移動して。その移動先に居たプレイヤーを喰らい、そしてまた移動する。
これの繰り返し。
残された人数によって収縮時間が早まったりと、本来であれば慌てる様なルールもあったものの……それすらも強化を重ねた私からすればただ足を少しだけ早く動かせば間に合う範囲だった。
「いいね、もうちょっと太刀筋を縦に。押し込むようにじゃなく、引くように……そう、力は入れるんじゃなく、引き抜く感覚で自分の後ろに向かって……あちゃタイムリミットか、また次回だね」
「くっゥ……!」
そうして、最後の1人。
片手剣を扱うプレイヤーと1対1を行いながら、その剣の振るい方を指導するように口を出し続けていれば。
とうとう活動可能エリアが無くなってしまい、HP回復用のスキルもなにも無いそのプレイヤーがスリップダメージで光の粒子と化していく。
試合終了だ。
『グループC試合終了。勝者:イヴ』
『転送を開始します』
機械的なアナウンスが流れると同時、私の視界は一瞬で切り替わり……試合前に集められた闘技場と似た場所に転移させられた。
試合前と違う点は1つ。私ともう1人……何やらスーツを着た黒髪の女性だけしかこの場には居ない点だ。
「……えぇーっと……君は?」
「私は今イベントのサポートAIとなります。この場にて、イヴ様のサポートを行うよう運営側より指示されています。どうぞ、何なりと」
「ふむ……大体分かった。じゃあまず聞きたいのだけれど……ここは?」
「この場は所謂、選手控室となります。私に御命令して下されば、ある程度の嗜好品などを提供する事が可能です」
「選手、控室……」
大体話が見えてきた。
つまるところ、
「やっぱりバトロワやっただけで終わりじゃないんだね?」
「質問の意図を理解。回答します。……そうなります。今しがた行ったバトルロイヤル形式の試合にて決定された勝者達8名のトーナメント形式での試合がこの後から始まります。イヴ様はその出場選手の1人、という事です」
「ちなみにこれって説明は?」
「バトルロイヤル形式の試合が始まる前に運営の佐渡がしていた筈ですが」
「おーぅ……」
私が聞いていなかっただけの、既定路線。
てっきり、あのまま試合が終わったら今回のイベントの目玉は終わり!かと思っていたのだが……どうやら違ったらしい。
まぁ今更ながらしっかりと考えてみれば。
ただバトロワをやって参加、観戦して楽しかったね、で大型ゲームの初イベントを終わらせる筈もない。
……ま、最近は多いからある程度想像出来る範疇だったよね。トーナメントが後にあるの。
最近の世に出るVRMMOというのは、大抵バトロワだったりトーナメントだったり、果てはプレイヤー達を2つに分けて戦争の様にしたりとPvPを一番初めの大型イベントでやりがちだ。
盛り上がる事は間違いないし、上位陣からすれば自分が今どの程度強いのかを、他からすれば現状の上位陣の戦いやスキル構成などを見る事で今後の参考に出来る。
そして、運営がどの程度までプレイヤー達が自分らの想定した育成ルートを通っているか、想像しなかったルートを通ってしまっているのかの確認も出来る。
どちらの立場からしても、齎される影響が良いモノが大きいのだから……まぁやるだろう。
「おっけ、理解した。とりあえず次の試合までの時間を教えてもらっても良い?」
「承知しました。……次の試合まで、残り10分です」
「了解。HPは……回復してる。これって試合が始まった瞬間に自分のステータスとかHPって元に戻る?」
「バフデバフを含め、全てがデフォルトの状態に戻ります」
「ふむふむ。ここでスキルの獲得は?」
「可能です」
そこまで聞いて、私は少しだけ考えて。
スキルの獲得用のウィンドウを表示した。
サポートAIに聞いて分かったのは、私にとって不利なモノ。【捕食】や【魂食い】、【カニバリズム】の強化を持続出来ないのは中々に私にとっては辛く、どうしても試合が開始されたら無理を通して喰らいに行くしかなくなってしまう。
バトロワでは【骨鎧生成】と何重にも重なった強化によってほぼノーダメージで過ごせていたが……よーいドンの戦いであるトーナメントではそれも難しいだろう。
故に、1つ。前からスキルの一覧で見かけてはいたが獲得していなかったスキルを獲得しようと思う。
……経験値は……うん、足りてる足りてる。魂喰いになってからちょっと狩りをしてたおかげで1つくらいなら取れそうだ。
検索機能を使い、目当てのスキルを探し出し。
すぐさまそれを獲得する。
『経験値1500を消費して【背水の陣】を獲得しました』
「よし」
普通の、それこそ【捕食】などを獲得した時よりも経験値が多少多めに掛かったものの。
試合が始まる前に新しいスキルを得る事には成功した。
そうして、しっかりと。私の記憶と相違がない事をスキルの詳細ウィンドウを表示させて読み込んでいれば、
「時間となりました。試合会場の方へと転移します。御武運を」
「お、はーい。行ってきます」
私の視界は再度一変した。





