Episode9 - 邪魔したらいけない
私にそこらのプレイヤーによる攻撃は、ほぼ効かない。
ヒルマとケント、2人のプレイヤーによる攻撃を骨の甲冑で弾けた時点で薄っすらそう考えていた。
しかしながら、確証はない。検証数が少ないというのもあるし、そもそも私が使っている【骨鎧生成】というスキルはまだレベル1。これが初期段階であるのだ。
……まさかここまで堅いとは……ステータス強化も影響してるんかな。
私のステータスの変化がそのまま堅さに現れているのであれば、ある程度納得がいく。
とは言え、
「さーすがにこれは……私も引いちゃうな」
「だぁあああ!どういう防御してんだ!?ウチのタンクよりも堅いじゃねぇかよ!?」
「もっと!もっと弾幕張れ!あいつが喰われてる間に!」
「なんでバトロワでレイドボスとの戦いみたいになってんだよ!?」
今も、周囲に攻撃され続けながら私を狙い続けたプレイヤーを喰らう事が出来るとは思わなかった。
私の身体には今も様々な攻撃が当たっては弾かれていく。
大量の矢を始め、生成したのであろう武具の類。それ以外にも様々な現象系……電撃や水、風の塊などが私のHPを削る事が出来ずに消えていく。
たまに一点を狙われ続け甲冑に罅が入るものの……元よりこの甲冑は幾らでも作れるモノ。
「ま、これがオーバーパワーかは運営が決める事って事で。気分はどうだい?」
「……最、悪だけど?」
「あは、ごめんねぇ。君を守り切る事は流石に出来なくてさ」
私に組み敷かれ、既に所々を喰われている射手の女性プレイヤー。
喰うのに邪魔なローブを剥いだ先、やっと見えた顔は非常に整っており。耳は長く尖った所謂エルフ耳。
弓矢を扱う技術も相まって、本当にエルフにしか見えなかった。
……ヒルマくんやケントくんよりも味が淡泊。でも……なんか野菜?っぽい後味があるな。
その肉は不味くはない。寧ろ美味いと言って良いだろう。
ここまで試合内で累計3人のプレイヤーを喰らってきたが、その中の誰よりも私の好みの味だ。
「ま、何かあったら試合の後、交流エリアに居るから尋ねてきてよ」
「……何かあったら、ね」
「うん、何かあったら」
そうして再度喰らおうとした瞬間。
私の甲冑に弾かれたナイフが1本、彼女の額へと落ちていき……そのまま突き刺さりHPが急速に減っていく。
お互いに気まずい雰囲気になりつつ、彼女は光の粒子となって消えていった。
彼女が居た場所には2つのアイテムが遺されており、1つはルービックキューブの様なもの。
もう1つは懐中時計の様なものだ。
「あっちゃー……これ私のキルって事になるのかな……」
素早くそれらを拾い、インベントリ内に収めると。
私は食事用に露出させていた顔を甲冑で覆うと共に、周囲へと視線を向ける。
今も何事か騒ぎながらこちらへと攻撃を放ち続けているプレイヤー達。自分達が何をしたのかも分かっていないのだろう。
……邪魔されちゃったなぁ。邪魔したねぇ君達なぁ。
両手の、骨の手甲に当たる部位の形状を変化させていく。
今まではデフォルトの、私の身体に沿う形で生成されていたソレを少しずつ刺々しく……猫の舌の様な引っ掛かりを生成して掴んだ時に逃げられないように。逃げれたとしても少なからずダメージを受ける様に変えて。
私は声色から笑みを消して、言う。
「私が対処、というか。食事の場を整えられなかったのがまず一番悪いんだけどさァ……」
攻撃は止まない。
私の雰囲気が変わった事にも気が付かず、それどころか獲物が私だけになった事で更に攻撃の密度が増していく。
「でも人の時間を奪った罪は償ってもらわないといけないよなァ!」
「「「!?」」」
跳ぶ。一番近い場所に居たプレイヤーへと。
私を狙っていたのは、魂と音からして遠近合わせて10人程度。その中でも武具の生成系スキルを使って投擲攻撃をしてきていた男のプレイヤーへと跳び付いて、その顔を左手で掴み持ち上げる。
たったそれだけ。しかしながら手に作った引っ掛かりと、握力による締め付けによるダメージがじわじわとプレイヤーを襲っていく。
「君は鼻から食われる感覚を味わった事はあるかな?」
相手の顔の前、手のひらを露出させ鼻、顔面の肉を喰らいつつ。
そのまま周囲のプレイヤーへと向かってその身体を投げつけた。
……魂の大きさ的に、ヒルマくんよりも弱いプレイヤーしか居ないかな。
流石に何度も何度も魂の大きさを見ていれば、それが何に影響されて大きさが変化しているのかは理解出来る。
実力と、スキルの数。
実力があったとしても、このKFOという世界ではスキルによる補正によって幾らでも覆される。
そしてスキルを大量に持っていたとしても、実力がなければ圧倒される。
そのバランスがある程度釣り合っている者の魂が、ある程度の大きさを持つようになるのだ。
「だからケントくんは今の所戦った相手の中で一番大きいし……君達は一回りも二回りも小さい訳だよ」
「何の話してやがる!」
「分からなくても大丈夫だよ、多分私の視てるモノを視ないと理解出来ないからさ!」
ヒルマ、ケント、そして射手。3人よりも魂が小さいプレイヤー達が、私の甲冑の護りを抜ける訳もない。
飛んでくる武具を掴み、逆に投げ返し。
甲冑の隙間を狙う様にして放たれた矢を、上から腕を振り下ろす事で叩き落とし。
現象系の攻撃は、そもそもが私の身体に当たった瞬間に周囲に弾かれ近くに居るプレイヤーが被弾する。
私のHPは減らず、つまむようにプレイヤー達を喰らう事で『毒』の継続消費よりも【大食漢】による一時的なHPの増加の方が上回る。
負ける要素は……今の所無い。そう断言出来た。





