Episode6 - また出会い、また喰らう
ケントは一足跳びの様に一気に私との距離を詰める。
手には2本の両刃剣。先程弾いたのも合わせると3本もの剣を持ちこんでいる事になるが……恐らくはヒルマと同じ様な生成系のスキルだろう。
見る限りはただの剣。先程甲冑で弾いた時にも観察したが、特に何か変な材料を使って作られている訳でもない、ただの鉄製だ。
だが、両手で……それも以前敗れた相手に使ってくるのだから、何か策があるのだろう。
……それに、良いね。魂の大きさがヒルマくんより大きい。
サッカーボール程度だったヒルマと違い、ケントの魂の大きさは2回りほど大きい。
それだけでも、彼の成長具合を伺える。
私に敗れてから経験値を貯め、スキルを習得し、今に至ったのだろう。正しくMMOをしていると言える。だからこそ。
「収穫の時、ってね!」
「!?」
私の甲冑に剣が当たる瞬間。淡く光り輝いた2本の剣は甲冑を、身体をすり抜ける。
大きく振られた剣はその勢いのまま地面へと突き刺さると共に、私は笑みを浮かべながらケントをすり抜け、背後に回ると共に。
その首を左手で掴み上げた。
【霊体化】。切り札の1つではあるが、別に切れない訳ではない私のスキルの1つ。
ここから30分は使えなくなるものの……クールタイムが明ける時には既に試合が終わっている。
……別に、私は日頃からPvPをやる訳じゃあないからね。出せる手札は出しちゃって良い。
今現在もこの場面が観戦しているプレイヤー達から見られているのかもしれない。その点を考えると、情報的な意味では私は不利になるのだろう。
しかしながら、今回の大型イベントが終わったら待っているのはワールドボスとの戦いだ。
ここで変に情報を隠すよりも。今後に繋がる様に情報を公開した方が、後々の得になる。
「味は変わったかな?君達、薄かったんだよあの時さ」
「今日はやけに喋るじゃねぇか」
「あの時は勝手が分かってなかったってのもあってさ。それに、あんまり人間プレイヤーと話しても得が無さそうだったからね」
「今はあるとでも言いたげだなぁおい……」
ケントは首を掴まれているというのに暴れたりはしない。
かと言って、諦めているわけでも無いようで。私と話しながらも……視線を私ではない何処かへ……ケント自身が来た森の中へと向け、
「ッ、そういう感じか!」
「おいおいマジか。コレ避けるのかよ」
一瞬聞き取れた風切り音と共に、私はケントを離しその場から横へと全力で跳ぶ。
次の瞬間。私が先程まで居た位置に何かが飛来すると共に……盛大に爆発した。
……あっぶなぁ!?
ケント自体はあくまで囮。本命は今飛んできた何かだったのだろう。
とは言え、この試合はバトロワ形式。元より味方、というよりは……恐らく、試合内である程度敵の数が減るまで共闘しようという一種のチーミングでもしているのではないだろうか。それについて不満を抱く事はない。
自身らを有利に試合を進める為に使える手は使う。立派に人間していて良いではないか。
「なら、こっちもこっちで、しっかりモンスターやらせてもらおうかなッ!」
食事を楽しみたい、なんて言っている場合ではない。そも、生きていなければ食事も行えないのだから。
私の身体から3体の半透明な人型のモンスター……私が存在昇華を行ったが故に、【多産】によって産まれてくる種族も魂喰いとなった配下3体が、それぞれ何かが飛んできた方向へと駆けていく。
今回のスキルセットは【聞き耳】、【バフチェイン】、【捕食】に【魂喰い】。【バフチェイン】によって、私の持っているバフの一部が配下達に共有されると共に、【聞き耳】によって索敵を行い下手人へと辿り着くという寸法だ。
問題は、そこに辿り着くまでに配下達がやられないかだが……まぁ、そこは運だ。1体でも射手へと辿り着ければ、こちらへと妨害を行う暇が無くなるのだから。
故に、
「君に構ってる暇があんまり無いんだ、生きてるんでしょ?」
「……チッ、見逃してくれねぇのか」
「そんなそんな。折角目の前に獲物が居るってのにそんな事する筈ないっしょ」
「精神的にもモンスターかっての」
私からじりじりと距離を取り逃げようとしていたケントへと向かって駆けだした。
先程の爆発の中心に居たにしては怪我が少ない。多少の掠り傷は付いているものの、それ以外はノーダメージだ。私の【霊体化】の様なスキルを持っている可能性が高いと見た方が良いだろう。
だからと言って、私が取れる方法には特に変わりはない。
……動き出してるな、荒れ地の方。……いや、動いてるってよりは移動してきてる?
ケント以外にも気を配らねばならない。
先程も考えたが、この試合はバトロワ形式。時間経過によって活動可能範囲が狭まっていくルールがある以上、いつまでも同じエリアで戦闘を行う事は出来ない。
そして、荒れ地のプレイヤー達が森へと移動を始めたと言う事は。
活動可能範囲ギリギリ、もしくは不可エリアにこの森の中が含まれている可能性が高い、と言う事だ。
「どっちも近接、やれるだけやってみようか」
剣を持った相手との戦闘経験はこのゲームでは……無い。一度目のケントとの戦いは戦いにすらなっていなかった為にカウントすらしていない。
【スラッシュ】というスキルがあるのを知っているだけで、それ以外は初見だ。
何を警戒するべきか、何が出来るのかすら分かっていない。だが、だからといって……私が前に進むのだけは変わらない。
真っすぐいって殴り喰らう。私が出来るのはこれだけなのだから。





