Episode5 - 次から次へと
「タダでやられっかよ!」
「むっ」
と、ここでヒルマがスキルを使ったのか彼の身体が一瞬ブレると共に、私の左右に彼と全く同じ格好の人間が現れ私へと襲いかかってきた。
忍者の様な見た目から考えるに……恐らくは分身かそれに近い物だろう。
しかしながら、
「うん、我が弱すぎるかな」
「おいおいおい……マジかよ……」
本体である彼の胴体を右手で掴み、甲冑の形状を変えて拘束しつつ自身の右側へ。
左側から襲いかかってきている分身に蹴りを入れる。体重すら乗っていない、本当にただの蹴り。
だが、分身はそれすら避けようとはせず、そのまま突っ込むようにして足に当たり……吹き飛びながら光の粒子となって消えていく。
右側の分身はと言えば、私という目標の間に本体が置かれてしまったからか動けずその場で立ち止まってしまっていた。
……【多産】みたいに自己意識がない。配下系なんだろうけど……指示しなくて良い分、その場での攻撃に特化したスキルかな。
細かい分析は後ほどロートに確認するとして。
私は軸足を回転させる事で身体を横に回し、そのまま右側にいた分身も足で薙ぐ様に攻撃する。
これもただ勢いがついただけの一撃。しかしながら、それが当たると共に分身は消えてしまう。一撃だけ防げると考えると良いかもしれないが……弱すぎる。
「さてさて。まだ何かある?」
「……ねぇな。クソ、モンスターのプレイヤーなんて警戒してなかった俺のミスだ」
「あは、多分他にも居るだろうから今後は人みたいな見た目でも気を付けてね」
「おう。それじゃあトドメを……ん?待て。なんで顔を近付けて……ってお前待て待て待て!」
「ごめんねぇ、暫く付き合って?遅延行為とかじゃなくて、これも立派な私の戦い方だからさぁ」
喰らう。
自分の攻撃が一切効かないと悟り、諦めてくれたヒルマには悪いが……生憎と、私の目的は食事をする事なのだ。
それに私はモンスター。
人間である彼にはあまり馴染みのない事かもしれないが……負けた者は勝った者の腹に納められるのが野生の常識なのだから。
―――――
「くっそ……やっとHPが0になりやがった……」
「あはは、まぁ試合が全部終わったら交流エリアに行くつもりだから、恨み言はそっちで聞くよ」
「覚えてろよ……」
と、胴体を半分以上喰らったところでヒルマのHPと魂の残量が無くなり消えていく。
時間にして約3分。バトロワ中という事もあり、早めに食べていたのだが……それなりに時間が掛かってしまった。
だが、おかげで【魂喰い】、【カニバリズム】のバフをある程度重ねられ、試合中は切れる事は無いだろう。
代わりに。
……うん、集まってきた。
私がヒルマを喰らっている間に見つかってしまったのだろう。
既に荒れ地の方からは2人、森の中から1人がこちらへと近付いて来ているのが音で分かっている。
一番近いのは……恐らく荒れ地の中の1人だろう。とは言え、私に今から出来る事は少ない。
「どうしようかなぁーっと」
故に、繰り返しの多いコンテンツで申し訳ないが。
「今度は多めに投げるから許してねッ!」
両手。左手も右手も使い、近場に在った木々をを根っこから引き抜いて。
まだ魂の感知範囲外に居る荒れ地の2人のプレイヤーへと向かって全力で投げ始める。結局の所、消費アイテムや遠距離攻撃手段がない私が取れる手はこれくらいなのだ。
罠を作成するスキルも無く、かと言って配下を出した所で私の様な相手からバフを得る類のプレイヤーが居たら逆効果。それに……配下にやられてしまい、私と戦える筈だったプレイヤーが減ってしまうのは頂けない。二重の意味で。
「さぁ、こっちは残弾だけは大量にあるよ!よろしくぅ!」
【捕食】、【カニバリズム】、そして【魂喰い】。3つのステータス強化スキルに、元々私が持っている【筋力増加】。
魂喰いという種族に成った事も相まって、木を引っこ抜く速度はヒルマに行った時よりも早く、射出速度もそれなりに上がっている。
……お、片方にはヒット。もう片方には……当たったけど防がれたね。音的に。
投げる数が10本を超えたタイミングだろう。荒れ地側から迫って来ていた2人は動きを止め、私の出方を伺うような動きに変わる。
それと共に、
「覚悟ォ!」
「あはッ!待ってたぜッ!」
私の背後から、一直線に迫ってきた鉄の刃。
それを甲冑を纏った左腕で弾きながら下手人の姿を見る。剣士風の、革を基調とした装備を着けた軽装の男。
弾かれたのは両刃剣で……と、まぁ。ここまで見れば、もう相手が誰かは私にも分かる。
「やっぱりプレイヤーだったじゃねぇかテメェ……!」
「おやおや勝てる気でいるのかな?一度負けたのに?」
「上等だ!成長してるのがテメェだけだと思うなよモンスターがッ!」
ケント。私がこのKFOにおいて一番最初に出会ったプレイヤーの内の1人であり……私がこのゲームにおいて、最初に殺したプレイヤー。
そんな彼が、今このタイミングで仕掛けてきたのだった。





