表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/61

Episode4 - 追いかけっこ


 森の中は逃げるのは易く、追うには難がある場所だ。……通常ならば。

 木々があり、適度に薄暗く、そして移動中に自身の身体に当たる様々な植物によって音も掻き消えてしまう。

 確かに【聞き耳】だけであったならば、ヒルマは私の追跡から逃れる事が出来ていただろう。

 だがしかし。


「見ぃーつけたッ!」

「ッ!どういうスキル使ってんだお前ッ!?」

「言う訳ないでしょ」


 私ならば追いつける。

 木々に激突する事も厭わずに、骨の甲冑を生成する事でダメージを抑え。全速力でヒルマの居る方向へと走り抜けるだけなのだから。

 当然、激突した木は瞬間的に甲冑の形状を変え、肌を露出させる事で【口腔生成】を使いきっちり喰らっておく。

 不味くはあるが、これだけでも『防御力上昇』などのバフを得られる為やっておいて損はない。

……うん、怪我はほぼ無い。『骨折』とか『流血』とか付与されてる様子もないから……本当に何かのスキルを使って逃げてたね。

 ヒルマの身体、というよりは。その身に纏う忍装束には所々掠り傷があるものの。

 私の拳を喰らい、木々が何本も折れるほどの弾き飛び方をしたにしてはダメージが少ないように見える。

 だが、それについては良い。問題なのは……あの一瞬、ただ私が一撃殴っただけで即逃げに徹する事が出来る判断の早さの方だ。


「もっと遊ぼうぜ、ヒルマくん!」

「っるっせぇ!お前確実にモンスターアバターかなんかだろ!?しかも確実に存在昇華してやがるじゃねぇか!相手にしてられっかよそんな奴!」

「あは、良いじゃん良いじゃん。私君らの実力がどんなもんなのか知りたいだけなんだよォ」

「くっそ、話聞いてくれねぇタイプじゃねぇか……!」


 こちらは障害物毎破壊しながら。

 向こうは、しっかりと避けつつもトップスピードを維持して森の中を駆けていく。

 途中、こちらへと何本かの短刀が投げられるものの……骨の甲冑に弾かれ意味はない。

……この短刀、私の口や甲冑みたいな生成系のスキルの奴だね?

 装備と思っていたモノはそうではなかったらしく。

 ヒルマの手のひらから突如として何本もの短刀が出現するのを確認できた。武器の生成を行えるスキルは私も何個か知っているが……今回のイベントの様な消費アイテムが使えない類のルールでは使い勝手がやはり良いのだろう。

 武器の消耗を気にせずに使えるというのはそれだけでもアドバンテージになるのだから。


「!」


 と、いつ襲い掛かろうかと隙を伺っていると。

 ヒルマが何を目指し走っていたかを理解する。森の出口だ。

 どうやら森の先にあるのは荒れ地のエリアらしく。私の【聞き耳】の範囲内に何ヵ所かで戦闘をしているような音も聞こえ始めている。

 彼の身のこなしならばそんなエリアへと移動しても問題無く生き残る事が出来るのだろう。だが、私は流石に違う。周りを囲まれてしまえば【大食漢】などでHPを増やせてもすぐに削り切られてしまう筈だ。

 故に、


「イタダキマスッ!」

「うぉお!?」


 全力で跳ぶ。

 右腕を前に……今も駆ける事で私から離れようとするヒルマへと伸ばして。

 そんな私の様子を見て、彼は何とか逃れようとしてスピードを上げ……私の右手は彼に微かに届かずに。


「よしッ……ぁ?」


 一瞬の気の緩み。出口に辿り着き、逃げ切れそうだと考えたヒルマの油断。

 それは身体に走る衝撃によって掻き消された。

 微かに届かなかった右手、そこから甲冑の形状を変える事で伸ばされた返しの付いた釣り針の様な白い針。それが、彼の右肩付近へと突き刺さったのだ。

……よぉーし、やっぱりこういう事出来るよねぇ!

 釣り上げるように。巻き戻すように。

 私は着地すると同時、ヒルマに突き刺さった針を甲冑へと形状を戻しながら引き寄せて。

 逃げようと藻掻き続ける彼の肩に優しく手を置いた。


「やぁ、ヒルマくん」

「……ハハッ、ここから入れる保険って?」

「ある訳なくない?」

「だよなぁ!クッソ!」

「おっとっと」


 と、ここで。往生際が悪いのか、それとも最後まで諦めない様にしているのか。

 自身の身体に突き刺さっている針も物ともせず。ヒルマは大量の短刀を周囲に生成すると共に、その全てが独りでに動き出す。

 その内の1つを彼自身も手に取って私の顔面へと向かって突き刺そうとしてくるものの。


「効かないんだよね」


 短刀がバフによって強化もされている骨の甲冑を砕ける程のダメージを出す事は出来ない。

 それがヒルマ自身によって扱われたとしても、だ。

 私の眉間へと本来ならば突き刺さっていたであろう短刀は、その堅さに震え弾かれる。

 だが、ここで顔を露出させて喰らいつきに行くほど、私は不用心ではない。

……忍者って汚いモノだからね。汚れ的な意味じゃなくて腹黒い的な意味で。

 形状を変えた瞬間に毒を仕込まれる可能性だってあるし、再度顔を狙って短刀を突き刺そうとしてくるかもしれない。

 ここまで使っていない鎖鎌も使う可能性だってある。

 故に、私は肩に置いた手……その手のひらの部分だけを露出させ。口を生成して喰らう。


「ぐっぅ……お前吸血鬼か人喰いのどっちかか……!」

「さてどっちかな?」


 まぁ、どちらでもないのだが。

 ヒルマの装束ごと肩の肉を喰らうと共に……私に見えている彼の魂が凡そ1割ほど喰らい取られたように消えていく。

 味は……前に喰らった時よりも味が濃い。

 どの肉に似ているかと言われると答えられないが、苦みと旨味が程々にある肉、といった感じだろうか。手放しに美味いと言い切れないものの、それでも以前食べた時よりは確実に美味い。


『【捕食】が発動しました。バフ『攻撃力強化』が付与されました』

『【カニバリズム】が発動しました。一定時間『全ステータス強化』並びに『視野狭窄』が付与されました』

『【魂喰い】が発動しました。全ステータスを一時的に強化しました』


 一気に発動した、3つの対象を喰らう事で効果を発揮する私のスキル。

 思ったよりも一度に喰らえる魂の量が少なかったものの……それでも十分だ。

 何故ならばここから私の強化は連続して重なっていくのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
みんな美味しくいただきます~
フフフ境目を超えて荒野に出たと気ィ抜いたら命取りよ! さてバフが掛かったらこちらのモノだがバトロワなにが起こるか分からんからなぁ〜
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ