Episode2 - 試合前の観察を
『時間となりました。事前に申請を出していたプレイヤーをイベント用エリアへと転送します』
「おっ、来た来た」
「よし、じゃあフレデリカちゃんとは一旦お別れだねぇ。負けたらすぐ戻ってくるよ」
「あはは、絶対とは言いませんけど頑張って勝ってくださいね!」
「「善処する」」
私とロートの身体が軽く浮くと共に、すぐさま視界内の景色が切り替わる。
先程まで居た遺跡とは違い、渇いた空気と天から降り注ぐ陽の光。
円形の闘技場の様な場所の、中心辺りに転移させられた私は少しだけ周囲を見渡して浅く息を吐く。
……おぉ、すっごいカラフル。
周囲には私と同じ様に何人ものプレイヤーが転移してきている。
観客はまだ居ないものの、プレイヤー同士の話し声で賑やかになっていく中……私の目には様々な色が視えていた。
戦士の様な姿をしたプレイヤーには赤の。魔術師の様な姿のプレイヤーは青。狩人風は緑と、それぞれのプレイヤーとその恰好によって魂の色が違って視えているのだ。
それに大きさもプレイヤー毎に異なっている。例えば……明らかに初心者感のあるプレイヤーは凡そ握り拳大の大きさで。それなりに腕が立ちそうだな、という印象のプレイヤーであるならばその大きさはサッカーボール以上に大きくなる。
ロートやフレデリカの魂しか見た事がなかったが……彼女ら2人の魂の色は白で、共にバスケットボール程度の大きさをしていた為、他のプレイヤーとの差異がここで分かったのは良い事だろう。
「……食いでがありそうで助かるなぁ」
口の中に涎が溜まっていく中。私の姿を見て女性プレイヤー達が少しだけ注目してくる中。
上空に何個かの号砲花火が打ちあがった。そちらへと視線を向けてみれば、
『はい~!プレイヤーの皆さん、お疲れ様ですおはようございますこんにちはこんばんは!運営兼今回のイベント進行を務めます佐渡です!よろしく!』
元気に話す、何故か着物の上に白衣を着た女性が宙に浮いていた。
この手のゲームの運営にはキャラが濃い人が多い印象があるし、何なら知り合いにもその手の人間が多いが……服装だけでここまで濃い人を見るのは久方ぶりだ。
『今回初めての大型イベントと言う事で!様々な催しを用意しています!既にゲーム内のエリアには今回のイベント限定のモンスターがスポーンし始めているので、これを観てくれてるプレイヤーさん達は狩りに行ってみてね!』
「あとでフレデリカちゃんには味を聞いておこうかな。流石に気になるし……自分でも食べには行くけど」
時間自体はかなり余る筈だ。
私が参加するバトロワイベントの拘束時間を加味したとしても、今回のイベントの開催期間は1週間。最初の大型イベントにしては他のゲームと比べると期間が短いが、リアルの日時基準で1週間もやろうと踏み切っただけ新作にしては凄いとは思う。
『……と言う事で!前置きはここまでに!メインイベントを早速やっていきましょう!』
佐渡が手を叩くと共に。
彼女の周囲には複数の蓮の花の蕾が出現した。
『メインイベント、プレイヤー同士のバトルロイヤル!今回参加申請してくれたプレイヤー数は……なんとなんと合計3521人!え、うちのゲームってそんなに継続プレイしてくれてたんだ……と運営陣全員で驚いております!』
プレイ人数自体はそれなりに多い方ではあると思う。
サービス開始からそこまで時間も経っておらず、尚且つ全体的にクオリティが高水準。ストーリーに関してはこれから掘り下げが始まっていくのでまだまだだが、モンスターのアバターでプレイ出来るという点だけでも結構な人数がプレイしているとは聞いている。
……まぁ、私ほぼプレイヤーと会った事なかったんだけど。
湿地という場所が悪いのか、それとも私がフレデリカ達とは違い気が付かずに食べてしまっているのか。
プレイヤーという存在に出会ったのは……記憶している限り、ほぼ無い。
今後は人間の住む街にも行ってみたいとは考えている為、きっと色々と見る事が出来そうだが。
『流石にその全員を1か所に集めて試合開始!なんて事はしませんしません!100人よりちょっと少ないのグループに分かれてもらいまーす!と言う事で、既に振り分けは終わっておりまして……今周囲に居るのが貴方達がこれから戦うプレイヤーさん達となります!』
その言葉に、周囲の弛緩していた空気が一気に張り詰める。
殺気の様なモノが漂うと共に、それらが一切私に向けられていない事に少しだけ頬を緩めてしまう。
パッと見ではモンスターアバターの姿は無い。私の様に人間に近い容姿やほぼ同じ容姿のモンスターならば紛れている可能性はあるが……ちらとモンスターアバター用の掲示板を見るに、今回のバトロワにはほぼほぼモンスターアバターのプレイヤーは参加していないらしい。
故に、人間アバターの有名プレイヤーやよく話題になるプレイヤーを見つけてはどう倒すかを考えているのだろう。
……警戒されていないってのは……良いね。やりやすい。
勝つというよりは、どれだけこの場に居るプレイヤーを喰らう事が出来るのか。
それが私の目的であり目標なのだ。
故に、ここで警戒されていないというのは……試合が始まってから自由に動く事が出来る事を意味している。
『――さてさて!そろそろ待ち切れないでしょう!早速試合を開始していきましょうか!』
佐渡のしている細かい説明を聞き流しながら考えていると。
どうやら試合が始まるようで。
『では、皆さん!グッドラック!』
その言葉と共に、私の視界は再度切り替わり。
次の瞬間には、身体に強い浮遊感を感じると共に、
「うっそでしょ!?」
私は空から落ちていた。





