Episode4 - 得た力、得た感情
迫ってくる華を咲かせた狼達を、ある程度まで引き付けて。引き付けて、引き付けて……彼我の距離がほぼ零となった瞬間に。
私は全身に白の甲冑の様なモノを生成した。
……ふぃー、やっぱ便利だコレ!
狼達の攻撃は甲冑に弾かれ、中へとは届かない。
鋭い牙も、これまで沢山の敵を切り裂いたであろう爪も、その全てが阻まれている。
当然、コレも私の力であり……最近手に入れた、便利な力だ。
「いやぁ、本当にソウマには頭が上がらないよ。【魂喰い】だけじゃあなくこんなのもくれるなんて」
スキル【骨鎧生成】。
【口腔生成】に続く、2つ目の生成系スキルでありソウマのMVP特典を使い獲得したスキルだ。
効果は簡単。全身の、好きな場所に骨で出来た鎧を生成する事が出来る。それだけだ。
しかしながら……これが使ってみると意外と強い。
頑丈で、尚且つ瞬時に全身どこでも生成出来る鎧が弱い訳が無いだろう。ちなみに消したい時も一瞬で崩れていく為、そういう点でも便利なスキルだ。
「っくし。ぁー……いや、でも結構楽にはなるな。やっぱりそのまま吸引してるよりは良いよね」
そして、【ヒットボックス拡張】によって拡張された右腕にもしっかり骨の腕甲を生成してくれる。
それが意味する所と言えば……巨大で頑丈な打撃武器が生成出来る、という事。鎧という形から大きく逸脱したモノは生成できないが、それでも一部だけ皮膚を露出させる事も出来るのだ。
つまるところ、
「私に都合がいい、防御用のスキルって訳だ」
諦めず攻撃を続ける狼達へと、鎧の下で笑みを浮かべ。
普通の野生動物系のモンスターならば、この時点で警戒するか逃げ出すのにも関わらず、機械的に行動し続ける狼の内、近くに居た1匹に対して……右腕全体に生成した腕甲を使って掴み上げ。
手のひらの部分だけを露出させ、瞬間。
「イタダキマス。どうか糧になっておくれよ?」
喰らう。
【口腔生成】によって右手に生成された口が、掴んだ狼の胴体から毛を、皮を、肉を、骨を、魂を喰らっていく。
『【捕食】が発動しました。バフ『寄生耐性強化』が付与されました』
『【魂喰い】が発動しました。全ステータスを一時的に強化しました』
瞬時に発動する2種類のバフスタック系のスキルと、ログが出ないもののHPを増やしてくれる【大食漢】。
一度喰らえばそれだけで私はその場の誰よりも優位に立てる。
「ぁあー……いいねいいね。バフとしても良いし、魂の味は……まだ分からないけれど。肉を食べてるって感じだ。血の味、繊維を断ち斬る音。味付けなんてしていない、野生本来の肉の味。……でも」
手の口の、その中に更に口を生成する事で喰らうペースを早めつつ。
私は存在昇華の条件達成の為に仕方なくその狼を全て喰らう。他の、それこそ今も機械的に身体を鎧に打ち付け続けている狼達も、1匹1匹丁寧に、魂の取り零しが無いように喰らっていき、
「不味い。本当に。寄生してる奴の味が本当に酷い。ゴブリン以下。これなら吐瀉物の方がマシ」
反射で吐きそうになるのを必死に抑える。
魂ごと喰らっているからか、狼の身体に寄生し動かしていたモンスター……パラサイトシードという、植物型のモンスターは私を寄生する事は無い。
しかしながら、その味は本当に酷いのだ。
臭みは無い。変な辛味や苦みも一切無い。しかしながら、感じる味が……この世のモノとは思えない程に酷い。それが肉全体に満遍なく広がっているのだから……最悪だ。
……魂稼ぎってだけで見るなら、まだ生きてる子も居るし1体で2個分の魂を稼げるからここは良いダンジョンだ。でも。
私的に、これは許せない。
狼の肉だけではない。他の、寄生されているモンスター達全ての肉が、味が、全てが全て酷い味になっているのだ。
ゴブリンの様に、ただただ種として不味いというのならばまだ許せた。しかしながら、このパラサイトシードは他のモンスターに寄生する。種族も関係なく、寄生出来るなら寄生するし、そこから更に広がっていく。故に、
「許しておけないよねぇ……?私の食生活、湿地の食糧をダメにするかもしれないなんてさァ……?」
今回は食欲だけではなく、怒りも伴って前へと進む。
世界の為に!平和の為に!なんて事を言うつもりは一切ない。なんせ、私はモンスターなのだから。
だからこそ、ここで何かを掲げるならば。この意志を言葉にするならば。
「私の楽しみを、食への冒涜を許す訳にはいかないんだよッ!」
目についた全てを喰らう。
植物型のモンスターも、音に寄ってきたのか寄生されているモンスターも。
その全てを、ここで終わらせる為だけに喰らい、前へと進んでいく。
怒りと、悲しみと、吐き気と、そして……延々と重ねられていくバフとステータス強化。
「ふぅー……ふぅー……」
『花粉症』はいつの間にか消えていた。恐らく、それの元となる花粉を噴出するモンスターを喰らい尽くしたのだろう。
明らかに華の生えたモンスター達が減ってきた。ダンジョンの性質上、何処かのタイミングでスポーンするだろうが……それでも減ってくれるのは有難い。
どんどん奥へと進んでいき、やがて。
「見つけたッ、元凶!」
私はボス部屋へと繋がる巨大な鉄の扉を見つけたのだった。





