Episode2 - 申請と準備を
■遠野 葵
公式大型イベント『万華鏡義宴・始』。
イベント期間中、全てのフィールドでカレイドスコープと銘打たれたモンスター達が出現し、それらを倒す事で得られる限定ドロップ品を様々なアイテムと交換することが出来る。
また、人間、モンスター関係なくプレイヤーならば転移することが出来る交流用特別エリアも設置される。
そちらではプレイヤーが自由に出店を構える事も出来るそうだ。
「で、目玉というか。今回のメインイベントは……申請をしたプレイヤー全員でのバトロワと。うんうん、事前情報通り」
無論、私は参加する。
プレイヤーを後腐れ無く喰らうことが出来るし、私の知らない戦い方などを見る事が出来るからだ。
今の自分の戦闘力がどこまで通じるのかを知れるのも良い。
「さてと、丁度今日から申請開始だったっけ。忘れる前にしておこう」
何処からすればいいのだろうと手元の端末で調べてみれば、どうやらいつも通りにログインすれば運営のAIが参加するかどうかを聞いてくれるらしい。
それなら楽だ、と私はいつも通りにKFOへとログインする事にした。
―――――
「イヴ様!大型イベントについてのお知らせで御座います!」
「お、今日も元気だねぇバスト」
ゲームを起動し、いつも通りに元ボス部屋へと降り立った……と思いきや。
視界に映ったのは、私がチュートリアルを行った森の中だった。
「イヴ様は今回開催されるイベント……『万華鏡義宴・始』について御存知でしょうか?」
「うん、とりあえず公式サイトのお知らせに載ってた内容は全部読んだよ。何か変更点とかってある?」
「いえ、いえ!それならば問題は御座いません!では、話も先に。イヴ様は今回開催されるPvPイベントに御参加されますか?」
「そうだね、参加するつもり」
調べた通りバストが意思確認をしてくれた為、それに応えると。
バストは元々人懐っこい顔をにんまりと笑みの形に変え、
「ありがとうございます!ではイベント開催当日、集合時間に遅れないようにだけ宜しくお願い致します!」
「おっけおっけーぃ」
「では、お時間を取って頂きありがとうございました!KFOをお楽しみくださいませ!」
言うと共に、私の身体全体が一瞬ふわりと浮いた様な感覚を覚え。
次の瞬間には前回ログアウトした場所に私は立っていた。
「これで申請は完了っと。……集合時間は……あぁ、ゲーム内のメッセージに来るのね。ゲーム内に居れば自動で準備エリアに転移と。楽で良いねぇ」
運営から届いていたメッセージを確認した後。
私は大型イベントに向けた準備を開始する事にした。
と言っても、私は消費アイテムを使うような戦い方をする訳でもないし、そもそもとして元より準備をしなければ戦えないわけでも無い。
では何をするのか?
「ロートちゃんが言ってた存在昇華の条件、ついに出てきちゃったからね。どうせならやるっしょ」
2回目の存在昇華。それを行う為の準備を行うのだ。
「それにしても、まだ2回目だぜ私。それだけ特殊なプレイをしてるって事かなぁ……いや、割と居そうなプレイスタイルだと思うのだけれど」
ぼやきつつ、私は改めて存在昇華の条件を確認する為にシステムメニューから、赤くハイライトされている『存在昇華』をタッチしてウィンドウを出現させてみれば。
『一部条件を達成した為、特殊存在昇華を解放しました』
『存在昇華の条件を満たしていない為、存在昇華を行う事が出来ません』
『条件:合計スキルレベル40以上(0/1)、戦闘カテゴリレベル20以上(1/1)、スキル【捕食】所持(1/1)、スキル【魂喰い】所持(1/1)、取り込んだ魂数(126/666)』
以前、今の私……人喰いとなった時には存在しなかった条件。スキルレベルの合計を一定の数値……前回で言えば10にすれば良かったのとは違い、今回は5個もの条件を提示されていた。
とは言え、既に達成しているモノも3つある。
「【魂喰い】、取れたは良いけど……正直使い道よく分からなくて困ってたから助かるよ本当に」
達成したモノ、そして未だ未達成のモノを見てみれば異質なモノが2つある。
【魂喰い】と、取り込んだ魂の数という項目だ。
ついこの間……ソウマを倒す際、ソウマの核らしき青白い炎を喰らった時に手に入ったスキルであり、その詳細としては『喰らった相手の魂の一部を取り込む事で一時的にステータスの強化を行う』というモノ。
【捕食】と共に相手を喰らえば喰らうだけ自身に強化を重ねる事が出来る私に相性の良いスキルだ。
「もうある程度溜まってるけど……多分、これ私が戦闘中とか探索中に色々食事として食べてたからだね?」
とは言え、だ。
これはただ相手の一部を喰らっただけでは条件のカウントは溜まらない。
一部ではなく、全て……全身を喰らわねばカウントしてくれないのだ。故に、残り540個の魂を喰らう必要がある。当然、そんな数を1人で喰らうのは難しい。難しいというより、そもそもとしてイベントに絶対に間に合わないだろう。
だが、既にそれについては解決法を見つけている……のだが。
それを行うには、何個かのスキルのレベルを上げる必要がある。しかしながら、
「……【ヒットボックス拡張】取ったから経験値が無くてスキルレベルが上げられない……!」
そう、あれほど余っていた経験値は今やほぼ空。
レアスキルの獲得と、スキルレベルの上昇に使ってしまった後、ソウマ程度しかまともに経験値を得る機会が無かった為だ。
これに関しては、死ぬ気で攻略していない遺跡を探し延々とモンスターを狩り続けるしか解決する方法はない。
「よし……よし!行こう!稼いでいくぞ頑張って!」
元はと言えば自分の所為ではあるが……それに目を瞑り。
私は意気揚々と元ボス部屋を後にしたのだった。





