Episode9 - VS 『死生骸 ソウマ』2
強化されたステータスにモノを言わせ、私の頭上の骨の手を押しのけると同時。
私は足に一気に力を入れ地面を蹴る事で、一気にソウマの胴体部へと近付いて……更に跳ぶ。
骨は食べる事が出来る。しかしながらそのままでは味気ない。ただの骨を食べた所でそこにあるのは淡泊な骨の味だけだ。
だからこそ、何かしらのアクセントは欲しい。
「こういう時に調味料とか欲しくなるよ!イタダキマスッ!」
跳んだ先、今も頭蓋を喰らう配下の元へと辿り着いた私は先客に倣って頭蓋を喰らう。
巨体である存在の、分かりやすい弱点として。ある程度の素早い相手には動きで付いていく事が出来ない点が上げられる。
特殊な技能を持ち得ないソウマも、その例に漏れる事はない。
私に押しのけられた手は未だに宙で虚空を掻いている。故に、今が一番の攻撃のタイミング。
……うん、骨。柔らかくもないし、何かしらの味が付いてる訳でもない。不味いって訳じゃあないけど……これだけだったら飽きちゃうな。
今まで食べてきたボス2種の味がそれなりに良かったが為に、少しばかりの残念さが混じりながら。
しかしながら私は喰う口を止める事は無い。
配下を狙っていたもう片方の手が私達を頭上から襲ってくるものの、
「ん、申し訳ないけど喰らわないかな」
頭蓋を喰らうと言う事は、そこに穴が開くと言う事。
先に喰らっていた配下と共に、私は自らが喰らっていた頭蓋の中へと入り込む。
中は空洞だ。だが、中へと入り込んだ私達を青白く照らす1つの巨大な火の球がそこには在った。
……そう言えば……これ、何なんだろう。
頭蓋や手を喰らう事でソウマのHPは減っている。
それはソウマの身体が骨、または骨の周りに付いている肉体であるという証明であり……私達の目の前に在る火の球とは全く関係のないモノだ。
しかしながら、それはここに在る。
フレーバー的な、アンデッドであるが故のテクスチャの様なもの、と言われてしまえばそこまでだが、
「気になるものは気になる、よねぇ」
気になる点はそれだけではない。
先程から、私と共に中に入ってきた筈の配下が周囲の頭蓋の内側を食べようとせず……その火の球へと視線を向けているのだ。
まるで、そこに敵対者が居るかのように。食べられるモノがあるかのように。
しかしながら、動かない。私の指示を待っているという風でもなく、ただ単純にそこに在るモノを眺めているが故に動かない。
スキルで敵対者を襲う様にと命令している筈なのに、だ。
「こういうの、私が触るのってどうかと思うんだけどなぁ」
安全マージンを取るならば、配下に先に触らせるのが良いだろう。何かあってもHPを消費すれば戻ってこれる配下と違い、私はリスポーンすると言ってもペナルティを喰らってしまう。
だが、配下が動かないのならば……仕方ない。
私はゆっくりとその火の球へと近付き……少しだけ自分よりも高い位置にあるソレを、『骨折』が付与されていない左手で触れようとして、
「あ、あれ?」
触れない。
熱さもなく、かと言って何かを感じる訳でもなく。ただただ左手は火の球をすり抜けた。
「……えぇー……こんな意味有り気なのに本当にフレーバーなの?」
がっかりした気持ちとまぁそうだよな、という気持ち。そして、配下が動かなかったのは……敵対者の中に居るからこそ、指示が上手く機能していないのだろうと考えて。
私は何気なく、頭の後ろで手を組もうと右腕を軽く上げた。
「ッ!?……えっと?」
瞬間、私の右腕……正確には、【ヒットボックス拡張】によって大きくなっている範囲に火の球が触れ、軽く私にダメージが入ったのを確認できた。
先程、生身の手で触れても何も反応がなかったのにも関わらず、だ。
……どういう原理?生身じゃ触れられないとか……いや、それだったら一応生身ではあると思うんだけどな、ヒットボックス関係も。もしかしてその考え自体が間違ってる?
最初期から使っている【噛みつき】などとは違い、【ヒットボックス拡張】はつい最近、それも半ばノリで獲得したスキルだ。
ある程度扱いに慣れたと言っても、未だに仕様自体を理解し切っている訳ではない。
思えば、【口腔生成】によって生成される口が不可視となる仕様に関しても正直納得はしていないのだ。
「もしかして、配下ちゃんが見てるのってそういう事だったりする?……え、食べられるのアレ」
配下は私以上に食欲に忠実だ。
指示さえなければ、私にすら襲い掛かり食べようとするのだから。
その配下がじっと、火の球だけを見つめている……と言う事は。そこまで考え、突拍子もない事を試そうとしていると自分の行動を鼻で笑いながらも。
「試してみる価値は、ある……か」
【口腔生成】によって、見えない拡張された腕に1つの口を生成して。
何があっても良いようにと足裏にもう1つ口を生成する事で、いつでも頭蓋を食べ【大食漢】を発動出来るようにしておいて。
私は距離感を間違えないように火の球をしっかりと見据えた後。
「……イタダキマス?」
生成した見えない口をゆっくりと、青白い火の球へと近付けた。





