表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第3章 ステップアップへの一歩編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/60

Episode7 - 探索をしてみて


 この村は、既に捨てられている。

 ある程度の探索をこなした私が抱いた感想はそれだった。

 一見すれば今でも使えそうな家屋や建物も、所々が倒壊していたり、建材である木材が腐っていたりと住んだり施設として使用するのはもう難しいはずだ。


「……んー……」


 そして出てくるモンスターもモンスターだ。

 最初の戦闘から数えて、既に4回。一番最初に戦った動く人間の死体と蛆から始まり、動く家畜の死体やスケルトン。果ては、それらを食らう為に外から入ってきたのだろうネズミとも戦った。

 だが、未だ外へと繋がる出口も手掛かりも見つかっては……否。

 それらしい場所自体は見つけているものの、探索はまだ行っていないだけだ。


「やっぱりそれらしいのはあそこしかない、か。出来れば行きたくないなぁ……」


 テンションは低い。

 この遺跡に入ってから私が口にしたのは、たまたま戦う事が出来たネズミ1体のみ。

 それ以外は全て配下に食わせているし、【捕食】によって得られるバフも【バフチェイン】によって配下に付与されたものにタダ乗りしている状態でしかない。

 ただただ私が食べたくないという理由だけで縛りプレイの様な状況に陥っているが……誰に何と言われようと、蛆が湧いているモノを食べたいとは私は思えないのだから仕方がないだろう。


「さて、早めに攻略するかデスペナするかして外に出よう。今ならゴブリンでも御馳走だよマジで……」


 足を向け、歩き出した先にあるのは……1つの、村に住んでいた人間達が使っていたであろう広い墓地。

 木を組み合わせる事で作られた十字架が大量に植えられているそこには、薄っすらと白い霧がかかっており、ちょっとしたホラーゲームの様な雰囲気が漂っていた。

 気温も少しだけ低くなったように感じながら、墓地の目の前まで辿り着いた私は一つ息を吐く。

……もし、ここにボスが居たら……相当に面倒臭いだろうなぁ。

 遺跡の内部に出現するモンスターは、特殊な例を除き基本的にはボスと同じ種族、もしくはその下位種族となる。

 マーテルの居た遺跡ならば、ゴブリンやオーガが。

 クナトの居た遺跡ならば、巨大なムカデなどが。

 ならば、この遺跡……村に出現しているモンスター達から読み取れる、ボスの種族や特徴は?


「アンデッド。もしくは蛆の方で寄生系……かな。スケルトンが居たからアンデッドの方があり得るだろうけど」


  私のアバターの元の種族でもある屍人喰い、それと同じアンデッド系。

 その可能性が最も高いだろう。だが、それが出てこられた時の問題点が1つある。

……有効打、全く持ってないんだよね。というかモンスターアバター自体にあるのかな、アンデッドへの対抗手段。

 そう、特に有効打になるようなスキルもアイテムも何も持っていない事だ。

 アンデッドと言えば、人間ならば聖水や神職などといった神に仕える者達が前に出て対処を行う事だろう。

 しかしながら、モンスターはそもそもが人間の敵としてデザインされており、神に祈った所で浄化の力が使える訳ではない。

 故に、真正面からどちらかが力尽きるまで戦うしかない……のだが。


「……ま、とりあえず蓋を開けてみて考えますか。どうせ死体系なんだろうけどさぁ……」


 私はぼやきながらも、一歩前へ。墓地の中へと侵入した。

 空気は特に変わらない。何者かが私を見ている様な視線を感じる事も、何処かから殺意を向けられている様な感覚も特には無い。

 だからこそ、故にこそ不気味だった。

……ここしかない、んだけどなぁ。怪しい所。

 村の中や周囲にはボスが居そうな場所は特には無かった。

 家屋を1つ倒壊させてでも探したのだ、間違いはないだろう。

 もし、ボスなんて存在せず……何かしらのギミックを攻略しない限り出られないなんてモノだったのならば、ここまでの行動が全て無駄にはなってしまうのだが。


 「えぇー……ここからギミック探すの?それだったら一旦配下に食べられて死んだ方が……ッ」


 自ら死ぬ方法を考え始めた時、それは起きた。

 突如、地面の下……私の左足首を掴むようにして、1本の手が飛び出してきたのだ。

 音もなく、そしてその手の力は凄まじく。足首が握られているだけだというのに、骨の軋むような音と皮膚が浅く裂け血が滲み始める。


「なん……道中の奴らじゃあないな!?」


 このままでは機動力を潰される。

 そう考え……私は思いっきり右腕を地面へと向かって振り下ろす。【筋力増加】、そして【ヒットボックス拡張】によって私の身体からすれば不釣り合いな巨大な腕。それが地面に触れる瞬間、何かを察知したのか、手が足首を離してまたも地面へと潜っていった。

……【聞き耳】が機能してない……訳じゃなく、単純にフレデリカちゃんみたいに音がほぼしない類か!

 瞬間、私は【多産】によって配下を産み出した。

 私に聞こえていなくとも、配下は指示によって周囲の中で一番近い敵対者へと向かい戦い始める。一種の索敵システムとしても機能するのだ。

 故に、と配下が進む方向へと向かおうと様子を見れば……配下の視線は、私の足元へと固定されており、その場から動こうとはしていなかった。


「……ん、この音……まさか」


 そこでやっと、私の耳にも音が聞こえた。

 地面の下、何かが私の元へと迫るように土を掘り進める音が。

 慌ててその場から跳ねるように跳び退けば、


『生者生者生者ァアアアア!』

「うぉおおおお?!」


 1体の、巨大なモンスターが地面の下から這い出るようにして出現した。

 その身体は人型の上半身のみ。しかしながら、私よりも……下手をすればクナトと同等、それ以上の大きさがあるかもしれない。

 腕の部分には所々肉が残っているものの、大部分が白骨化しており……頭蓋骨の眼窩の部分と、胴体部の中心、肋骨の内側には青白い色をした火の球が浮いている。


『『死生骸 ソウマ』との戦闘を開始します:参加プレイヤー数1』


 通知が流れると共に、私の視界の下部にはソウマと呼ばれた巨大なスケルトンのHPが表示されていく。

 だが、それを悠長に見ている余裕はなかった。

 何故ならば……今こうしている間にも、ソウマは私へと向かって両手を使って迫って来ていたからだ。


「思った以上にパニックホラーじゃあないかコレ?!」


 静かだった道中からは一転。

 騒がしいボス戦が始まったようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ