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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第3章 ステップアップへの一歩編

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Episode6 - 流石にそれは


「さぁーってと、久々のソロ攻略だ。張り切っていこう」


 私は今、自身の棲家から少し離れた位置に発見した遺跡の前に立っている。

 異様な雰囲気を放つソレ。周囲にはネズミが居るものの……何故だかこの遺跡の近くには寄ろうとはしていなかった。

……うん、多分だけど……ここの遺跡が原因だよね。

 それだけではない。

 遺跡の入り口まで近づいたからだろう。何故かは分からないが、遺跡の中からは異様に冷たい空気が外へと流れ出ていた。

 それに、


「死臭、かな?鼻は人並みの筈なんだけど……結構キツいね」


 何かが死んでいる、そんな臭い。

 それが遺跡の周辺でだけ漂っているのだ。

 何に気を付ければいいか、なんて事は分からない。しかしながら……強烈な死臭が漂うような場所に今から挑戦するのだ。気を引き締めていくべきだろう。


「では、お邪魔します……ッ!?」


 一歩、入り口から中へと入ってみれば。


「遺跡イコールダンジョンじゃあないのはこれまで石板を集めて分かってきた事だけど……これはすっごいね。ちゃんとダンジョンしてるじゃん」


 私の知っている遺跡の内装……ではなく。

 そこには、夜の村が存在した。

 見上げれば星の瞬く夜空が。周囲を見渡せば等間隔に建てられた木造の家屋が。

 ファンタジー作品に出てきそうな、片田舎の村がそこには在った。

……中心、かな。ここ。私が入ってきた所は……もう分からないや。

 罠、もしくは一度侵入したら攻略するか死ななければ出られないダンジョンなのだろう。

 軽く息を吐いた所で……微かな音を耳が捉えた。

 何かを掘るような、硬い物を削るような音。それと共に、地震の様な揺れが発生し、


「「「「ヴァッ!」」」」

「ッ、そういう感じのダンジョンかここ!?」


 私の周囲の地面から、数体の人型の死体が飛び出してきた。

 その時点で入り口に漂っていた死臭の原因を理解し舌打ちする。考えれば単純だったのだ。

 私の様な、というよりは。私の最初のアバターを屍人喰い。死体を喰らう怪物が居るのだから……動く死体も居て然るべきだろう。


「とは言え……ッ」


 跳び出してきた死体達は私へと向かって、その汚れた手を伸ばして迫ってくる。

 武器の様なものは持っているようには見えない。だが、それでも十二分に脅威だろう。

……どうするかな、本当に!

 対処は容易だ。

 人型とは言え死体は死体。私を認識しているとは言え、襲う為の術は少ない。

 それが例え周囲から……前後左右全てから襲い掛かられているとしても、だ。


「はい、薙ぎ払い!」


 【ヒットボックス拡張】によって大きくなった右腕の当たり判定。

 それを、身体を軸に横に伸ばして雑に振り回せば……死体達の手は私に触れる事なく薙ぎ払われていく。

 だがこれは、あくまでも周囲から敵を遠ざける為の動き。ダメージを与えるのを目的にしたものではない為、薙ぎ払われた死体達はすぐに起き上がってこちらへと再度近寄ろうとしていた。

 正直、死体達はそこまで強くはない。

 ゴブリンやネズミよりは強いのかもしれないが、虫ほどではない。何ならロートよりも弱いだろう。

 だが、問題が1つある。


「……流石に蛆が湧いてるのは……話が違うじゃんか……ッ!」


 死体達の身体には、白い蛆が湧いているのが見えていた。

 死体程度ならばまだ食べられる。そもそも、私がこのゲームにて最初に食べたのは人間の死体なのだから。

 しかしながら……流石に蛆が湧いているモノを食べたいと思う程、私はまだ食欲に溺れていない。

……ん?

 そこで気が付いた。

 死体達の身体の各所……個体によって異なる部位が時折淡く光るのだ。

 全体ではなくぽつぽつと。まるで皮膚の下に何かがいるかの様に。


「……ッ、君もモンスターか!」


 死体をあしらいながら観察してみれば……光っているモノの正体に気が付いた。

 蛆だ。

 白い蛆が、死体達の身体を喰うと同時に淡く光っているのだ。

 少し前までそういうテクスチャの、フレーバー的な存在と思っていたソレ。しかしながら、そうでは無いと……私に敵対するモノであると理解したならば話は早い。


「私は嫌だけど、忌避感無く食べに行ける奴は居るんだよ!【多産】!」

「ぁ、あぁ!!」


 もう一度、死体達を吹き飛ばした後。

 私は自らのHPを削り、配下である人喰いを産み出して。


「ほら、御馳走だ。腹一杯食べな」


 食べさせる。

 配下は私の様な人間の感覚は持ち合わせていない。故に、蛆が湧いていようが関係なく、忌避感無く喰らいつき糧にする。

 死体の肉が、その内に潜む蛆が飛び出す様に襲い掛かった配下の口の中へと入り……飲み込まれ、


『【バフチェイン】によりバフが共有されます。バフ『筋力増加』、『寄生力強化』が付与されました』


 バフが乗る。

 そこからは一方的な蹂躙の開始だ。

 1体の死体へと向かい、バフによって上がった身体能力によって更にその身を蛆ごと喰らう配下と、バフを共有されたことによって強化された私によって蹂躙される残り3体の死体。

 【大食漢】や【捕食】、【噛みつき】はアクティブにならないものの、ただ肉体に則った動きをするだけの死体に今更遅れを取ることはない。

 近付いてきた死体を、上から右腕全体で叩き潰し。

 拘束しようとしてきた死体を、脛に思い切り体重を乗せた蹴りを入れることで足を折り止め。

 背後から忍び寄ってきた死体に、動けなくなった個体を掴み投げつける事で諸共行動不能にして。


「よし、食べて良いよ」

「ぁー!」


 配下に餌をやる感覚で喰わせてやれば、戦闘終了だ。

 とは言え、周囲は未だ静かな夜の村のまま。

 乱暴で熱烈な歓迎を受けてしまったが……ここからが探索の始まりだろう。


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