Episode4 - 今後の事を考えて
その後。
とりあえず、私とフレデリカはそのまま湿地の石板集めを続行しつつ、いつか来るであろうワールドボスとの戦闘に備え力を付ける事になった。
人間アバターとは違い、モンスターアバターである私達は一度存在昇華した程度ではすぐに実力が追いつかれてしまう。出来るならばもう一度、欲を出すならば更に一度存在昇華をしておいた方が良い……とは考えているのだが、
「ちなみに、人間側の存在昇華には条件が付いてるんだよねぇ」
「スキルレベルだけじゃなく?」
「だけじゃなく。多分、モンスターよりも強くなる幅が大きいからって事で付けられてるんだろうけど……じゃあモンスター側にはその手の条件が無いのかって言われると、さ」
「恐らく恐らく、ありますよねぇ……この石板で成れる奴みたいな」
何処かで現状では頭打ちになるのが分かり切っている。
故に、ロートにはそれとなくロレリアのプレイヤーに対して情報を流す事を頼んだ。
何故大々的にではなく、それとなくなのかは簡単だ。本当に封印されているモンスターが居る、なんて事が知られれば……絶対に先走って挑もうとするプレイヤーが居る。これは絶対に居るのだ。残念な事に。
そんなプレイヤー達の動きを出来る限り遅くした上で、協力者を募る為の時間を稼ぐ為に面倒ではあるが噂レベルで情報を国に流す。
「あ、この石板の話ってNPCとかには話しても良い?」
「NPC?変に憶病とか裏で何かしてそうとかじゃあないなら全然良いけれど……ちなみに誰?」
「ロレリアの騎士様。それもトップもトップ、姫騎士とか言われてるロレリア所属のプレイヤーにとってはアイドル的な存在」
「えっえっ、もしかして『疾風の騎士』のアリアさんです?」
「お、正解。モンスターなのによく知ってるねぇ」
「SNSで結構流れてくるので知ってるのですよ」
『疾風の騎士』。
ロレリアには騎士制度に近いモノがあるらしく。その中でも、アリアというNPCはプレイヤーから見ても実力はトップクラス。性格自体も難の様なものはなく、人当たりの良い女性らしい。
生憎と、私は全くその手のキャラには興味が無い為に顔すら知らないのだが。
「んー……ロートちゃんが信用出来るっていうなら全然良いけれど、多分そのまま国のトップまで情報行くよね?」
「そうだね、絶対行くとは思う。ただ、変に話さないで騎士達が調べ出してから発覚、なんてよりはずっと健全に協力関係が築けると思うけど、どう?」
「それもそうか……私達の事は?」
「……そっちは申し訳ないけどそれとなく、かな。アリアは別にモンスター全てを排斥するって考えじゃないけど、周りや上がどうか分からないから」
兎に角。
人間側の情報の取り扱いに関してはロートに一度任せる事にして。
私達はモンスターアバターのプレイヤーを見つける度に、それとなく力を貸してくれるようにと頼む事にした。
とは言え、人間に比べモンスターの人口はかなり少ない。私とフレデリカが近い位置に居た事自体も軽く奇跡レベルなのだ。今後出会えるかは……かなりの運が絡んでくる。
モンスターアバター専用の掲示板にも、人間同様に情報を流そうとは考えているが、それでも数が集まるかは賭けになるだろう。
「よし、それじゃあ封印の場所とか、封印されてるモンスターがどんなのかとか分かったらまた連絡して。私も何か分かった事があったら連絡するよ」
「おっけ、ありがとう」
「お疲れ様、お疲れ様です」
こうして、私とフレデリカ、そして人間アバターであるロートの情報共有は一度終わったのだった。
―――――
「よっし、それじゃあ強化していきますかっと」
2人が帰った後、私は1人元ボス部屋で各種ウィンドウを表示させていた。
石板探しは今まで通り続けるとしても、自分自身の強化は出来るタイミングでやっておいた方が良いからだ。
「増えたスキル2つと合わせられる方向性で考えるか」
クナト戦から時間は経ち、既にスキルの内容自体は理解している。
【部位破壊】はその名の通り、対象の部位を破壊する際にボーナスダメージを与えられるスキル。それなりに使い易く、パッシブスキルである為、意識せずとも効果を発揮してくれるのが良いところだ。
そして【大食漢】。
これは……ある意味、私にとっては革命の様な効果だった。
「食べたら食べただけHPが増えるってのは良いね、本当に。これで回復について考える必要が無くなった訳だし」
効果は単純。このスキルを持った者が何かを食べれば食べる程、時間経過で消失する余剰HPを得る事ができる。
これがあるからこそ、クナト戦で腕を失ったにも関わらず、出血死などせずに食べ切る事が出来ていた。
……これを活かすなら……単純に口の生成数を増やすとかが一番楽なんだろうけど……。
私の戦闘スタイルは、近接格闘型。
素手や足に口を生成する事で敵対者を喰らい、延々とバフをスタックして相手にマウントを取る戦い方だ。
相手も近接型だった場合の強さは言うまでもなく、ある程度近付く事が出来るならばそれだけで勝利の天秤が私に傾く……のだが。
「その近付くのが大変なんだよね。クナトみたいにデッカいと近付けたとしても潰されるし」
相手が遠距離攻撃に特化していた場合は全く役に立たず。
規格外の大きさの場合は、近付けたとしても逆に倒されてしまう。
その弱点をある程度までは補う事が出来るのが【大食漢】、ではあるのだが……それにしたって限界は存在する。
「距離を詰める為のスキルを取る?それとも……相手が大きくても無理矢理沢山食べられるようなスキルとかってあるのかな……」





