Episode3 - 触れた事実
「ちょっと、大丈夫?存在昇華とかのアレが出てきたりしてない?」
「……ん、いや?特には問題ないよ?ただ2つのスキルの解放条件を達成したみたい?」
「あぁ……それが【旧共通語】……いや、2つ?」
「うん、【狂気耐性】だね!もしかして2人は出てない?」
ロートの言葉に、私とフレデリカはお互いの顔を見つめ合った後。
2人してスキルの獲得ウィンドウを開き確認した。
「うわ、私の方は出てる。フレデリカちゃんは?」
「出てます出てます……!何で気が付かなかったんだろう……」
「いやまぁ……私達の場合は存在昇華やらボス戦後だったりで色々と注意が逸れてた可能性も……いや?」
自分で言った言葉に、少しだけ疑問を持つ。
本当にそうだろうか?それならば、何故私は【旧共通語】を得れると分かったタイミングで【狂気耐性】なるスキルについても獲得出来ると分からなかったのか。
ロートと私達の違いは何か。
そこまで考え……答えは分からずに項垂れる。
「分からないなぁ……ロートちゃんは何かしらの理由があると思う?」
「んー……いやまぁ、多分だけど石板の数じゃない?1枚だけだったら読めるように【旧共通語】を、何枚からかは分からないけれど、【狂気耐性】は石板を複数集めた場合のボーナスとして、とか」
「理由、理由は?そんな段階的にする理由って何かあるんでしょうか?」
「……それなら分かるかな。あくまでロートちゃんの仮説を元に立てた考えだけど」
そう、段階的にスキルが獲得出来るようになる、というのはしっかりと理由がある……と思われる。
状況的な証拠しかない為にあくまでも仮説。妄想と言われても仕方のない、根拠のない考えだ。
しかしながら、それでもこちらが一度納得する為の理由付けをするのであれば、
「1枚目の石板は、この地……ロレリアという国に封印されているモンスターが居る、というのを見つけた人に伝える為のモノ。だからこそ、その文章を読めるようにするための【旧共通語】が必要だった」
1枚目はこの地の状況を伝える為の、そしてこの先に進む為のモノ。
「1枚目を見つけた人、モンスターは2つの選択肢があるね。分かるかい?」
「えっとえっと……そのまま見なかった事にするか、封印されたモンスターをどうにかするか、ですか?」
「そうだね。見なかった事にしたヤツはこれ以上の情報は要らないから、石板を探そうともしないだろうさ。でも良くも悪くも、封印されたモンスターをどうにかしたいヤツは今の私達みたいに石板を集めて情報を更に得ようとする」
「そこで、私が考えた様に集めた枚数、もしくは見つけた枚数で段階的に必要なスキルが獲得出来るようにすれば……ってここまで言って気が付いたけど、え?【狂気耐性】が必要になるの?」
ロートが何かに気が付いたようで、顎に指を添え考え込み始めた。
私もフレデリカもあまりこのスキルの意味は分かっていない。何なら、私が初期に獲得した【恐怖耐性】についてもあまり効果を実感していないのだ。怖いものは怖いままだし。『恐怖』なんてデバフを使ってくる相手もいないし。
考えがまとまったのか、ロートは少しだけ息を吐き、
「2人は『狂気』についてどれくらい知ってる?……あぁ、このゲーム内のやつね?」
「何か知ってるかい、フレデリカちゃん?」
「えぇ?!私に振るんですか?!」
「あぁー……うん、大体その反応で分かったから良いや大丈夫。とりあえず2人が何も知らないってのは分かったよ」
仕方がないだろう。
こんな湿地に棲んでて、狂気とは無縁のサバイバル生活をしてきているのだから。
フレデリカが何かを言いたそうな表情でこちらを見てきているが、私は何も知らない。
「簡単に説明すると、ね。各国家には要注意とされてるデバフが何個かあるんだ。中には、国内でそれに纏わるスキルやアイテムを使ったら良くて国外追放されるくらいの奴が」
「……もしかしてもしかして、その中には『狂気』もあったり?」
「正解!ロレリアでは『狂気』を与えるアイテム、スキルは完全にアウト。NPCだったら死刑、プレイヤーは……ついこの間、検証班が1人国外追放からの、他の国にも支援しない様に、って通達を送られてたかな?」
「わぁお、結構重いねペナルティ」
「検証班の人は『これはこれで別の検証ができる!』って喜んでたけどね?」
モンスターアバターにはない、人間アバター故の、国家という巨大な組織の庇護下にあるが故のデメリットという奴だろう。
そして、ロートの話が本当ならば気になる事がある。
「ちなみに、その要注意ってデバフは何個あるんだい?私の予想だと……多分4つだと思うんだけど」
「あ、その表情だとイヴは大体分かった感じかな。そうだね、4つ。『狂気』に始まって、『恐怖』、『麻痺』、そして『萎縮』だよ」
「な、なんでなんで4つなんです?もっと数があっても……あ」
「フレデリカちゃんも気が付いたかな。要注意な4つのデバフと同じ数のモノがあるよね」
そう4つ。
このゲームのプレイヤーならば、避けては通れないモノの数と同じ。
それは、
「国の数。……ってことはさぁ……」
「うん、私もイヴが思いついたのと同じ考え。多分だけど、この石板みたいなのが各国のフィールドにあるんだろうね。そして」
「それぞれ、そのデバフに対応する封印された何か……ワールドボスがいる、と」
「……えっとえっと……このゲーム、中々に世紀末では?」
フレデリカのその言葉に私達は揃って頷いた。
どうやら、このゲームの世界はかなりの薄氷の上に成り立っている様だった。





