Episode14 - 終わった後で
「まさかまさか、本当に攻略できちゃうなんて……」
「そりゃ出来るよ、あんまりクナト自体も強くなかったみたいだしね」
「成程成程?なんでです?」
「まぁ状況証拠になっちゃうんだけどね」
私とフレデリカは、ボス戦が終わった後。
その場から離れる事はせず、適当に休憩がてら雑談をしていた。
普通に考えれば、右腕を失いHP自体もそこまで残っていないプレイヤーと、拘束や対応能力には秀でているものの、ボス戦後の疲れが残っているプレイヤーがこんな所で残っていても利は全くない。
……でも気になるよねぇ、遺跡の残骸。
私の視線はクナトが外に出てくる際に崩壊した遺跡へと向けられた。
モンスター達の死骸とは違い、何故かそのままで残っている遺跡の残骸。もしかしたら時間が経てば、遺跡としての形を取り戻すのかもしれないが……その前に目ぼしい何かを見つける事が出来るかも、と考えたのだ。
とは言え、それに確証は全くない。何かあったら良いな、程度の散策である。
「このゲームで私が遭遇したボスはクナトで2体目なんだけど、1体目と違ってギミックは一切なかった……いや、あったと言えばあったかもしれないけど、ソレをボス自体が放棄してたね」
「ふむふむ。ギミックというと……蜘蛛の巣です?」
「そうだね、蜘蛛の巣だ。クナトという巨大な蜘蛛において、蜘蛛の巣という攻撃にも防御にも使える強みを真っ先に捨てたのは……まぁ所詮蜘蛛だった、としか言いようがないんだけど」
そう、クナトはその点がまず弱かった。
ボス部屋でずっと籠っていれば良いモノを、そのまま飛び出したばかりか、自身の力が制限されるフィールドにまで獲物を追いかけてきてしまったのだから。
野生の動物だってもう少し賢いだろう。
「あとは恐らく持ってたスキルが身体依存のモノか糸依存のモノが多かったんじゃないかなぁ。フレデリカちゃんが拘束したら、毒しか吐けなくなってたのがその証拠」
「確かに確かに、変な事はほぼしてこなかったですね。大きさくらいですか?面倒だったのは」
「そうだねぇ。どの動物、昆虫、生物にも言える事だけど、やっぱり身体が大きいってそれだけで脅威になるからね。逆に言うと、それだけだったら……原始時代のマンモス宜しく狩られるだけって事さ」
事実、クナトは抵抗らしい抵抗も出来ずに狩られてしまった。
MVPは取れなかったが……まぁ仕方ないだろう。フレデリカがボスを拘束し続けた事は、戦いにおいて大きくこちらを有利にしたのだから。
それに私はこの戦いを通じて2つの新しいスキルを獲得する事が出来ている。
それだけでも十二分に儲けだ。
「さて、と。そろそろ確かめてみるかい」
「探索探索!遺跡の残骸ですね!」
「そうだねぇ。……やっぱり中は大きさが弄られてたんだろうなぁ。実際の瓦礫の量と私達が探索した大きさが合ってない」
ある程度休憩が終わった後。
私達は遺跡の残骸が散らばる、元々入り口があったであろう場所の近くへと近付いた。
元はネズミが集まっていたが、配下が狩りに狩り続けた結果、もうその姿は一切どこにも見えない。
……そう言えばあの子は……げ、HP瀕死じゃん。何やってるのさ……って死んだ。
遺跡の探索から今この時まで一切姿を見せず、何処かで狩りを続けていた配下。
丁度様子を確認しようと、ウィンドウを開くと同時に死亡ログが私の視界の隅に流れた。
自由な子供を持つと色々と考える事が増えるな、と少しだけ息を吐いた後。
「私は適当に瓦礫を退かしながら何かないか探すから、フレデリカちゃんは自由に」
「了解了解です!」
こうして廃墟探索ならぬ、残骸探索が始まったのだった。
―――――
暫くして。
ほぼ瓦礫しか見つからない残骸探索に飽きてきた頃、それは見つかった。
「イヴさんイヴさん!」
「んー?何か見つかったかーい?」
「ちょ、ちょっとこっちに来てくださーい!」
フレデリカが慌てた様に叫ぶ。
その様子に、やっと面白いモノでも見つかったかと嬉々として近付いてみれば。
そこには……地下へと降りる事が出来る階段があった。
「……ふむ、階段。階段ねぇ……下には?」
「降りてません降りてません。私よりも【聞き耳】を持ってるイヴさんの方が探索能力高いので」
「うん、賢い。……降りてみよっか」
階段は遺跡と同じ石造りで出来ており、灯りらしいものは見当たらない。
滑って落ちたとしてもダメージを全く受けないフレデリカと違い、私にとってはかなり危険だ。
故に、私は音を聞きながらフレデリカに先頭を任せ降りていくと。
「……わお」
「すっごいすっごいですねぇ……」
淡く青白い光を放つ祭壇のような物が中央に設置された、小さな部屋が存在していた。
祭壇と、その上に置かれた1枚の石板以外には何もなく。ただそれを安置する場所としてこの部屋が在るのだと察する事が出来る。
……これKFOのストーリーネタとかかぁ?
どう見ても不自然。それも遺跡の下にあるというのがまた不自然だ。
恐る恐る石板を見てみれば……そこにはリアルで私の知るどの文字にも該当しないモノが刻まれている。
アバターにデフォルトで備わっている筈の鑑定機能も、この石板に対しては何の詳細も表示してくれなかった。
「読めるかい?フレデリカちゃん」
「読めません読めません。何でしょうこれ」
「あっ、こういうのに触ったら……!」
「えっ?」
私の制止よりも僅かに早く、フレデリカが石板をよく見ようとして手で触れてしまい、
「あ、あのあの!なんか存在昇華が出来るんですけど!?」
「は、はいぃ……?」
何かのフラグを無事に踏んだ様だった。





