Episode9 - 知り合った相手は
彼女をパーティに誘ったのには理由がある。
1つ目は、彼女が私よりもこの遺跡に詳しい事。1人で見るからにだだっ広い遺跡を探索するよりも、先にある程度の探索を終えている者と共に行動した方が色々と楽だろうから。
2つ目として、彼女はこの遺跡に出現するモンスターを知っていた。つまりは、それに遭遇して倒せる実力、もしくは隠れてやり過ごす為のスキルを持っているという事。連携には少しばかり時間が必要になるとは思うが、それでも支援などを期待出来るのは有難い。恐らく、【聞き耳】を持っている筈の私が彼女の接近に気が付かなかったのは、彼女の持つスキルが影響しているのだろう。
そして最後に3つ目。それは、
「私、モンスターアバターのプレイヤーに会うのは初めてだからさ。良かったら親睦を深めておきたいなって思ってさ」
「成程成程……確かに私も初めてです!」
そう、単純な話。モンスターアバターのプレイヤーと友好関係を築いておきたかったのだ。
人間アバターのプレイヤーには既に悪印象を与えた後ではあるが、遅かれ早かれモンスターだとバレればそうなったであろう事は想像に難くない。
だが、モンスターアバターは違う。共に手を取り合っていけるだろうし……何より、彼女の種族が良い。
……流石に土は食べる方法を知らないからね、私も。いやまぁ南米の方では食べられてるらしいけどさ。
食欲が湧かないと言うと失礼なのかもしれないが、それでも私にとっては重要な事なのだ。
モンスターであろうと、食べたいものを食べる。その為にこのゲームをやっていて今に至るのだから。
フレデリカは少しばかり考えるような素振りを取った後、2回ほど頷いてから、
「分かりました!一緒に攻略しましょうね、イヴさん!」
「うん、ありがとう。ってことで、歩きながら色々話そうか。最低限戦いになった時とかの為に教えておいた方がいいスキルとかあるだろうし、お互いに」
「そうですねそうですね、じゃあ私が探索出来た最奥まで案内しますね」
彼女が巨大な遺跡の中を先導し奥へと進んでいく。
その背に付いていく形にはなるが、それでも耳は澄ませて【聞き耳】による索敵紛いの事はする事にした。
「じゃあじゃあ私から色々話していきますね?といっても、あんまり突飛なモノは持っていないんですけど」
遺跡を進んでいくと、フレデリカが言ったように虫が生息しているであろう痕跡を多々見つける事が出来た。
巨大な虫の糞らしきモノや、遺跡の壁に掘ったらしい虫の巣穴らしき丸い穴。
他にも、何かが産まれた後であろう卵の殻なんかも放置されている。
「いや、フレデリカちゃんはもう結構突飛というか……そもそも君の種族って何なんだい?身体の形が安定してないけど……スライムって訳じゃないでしょ?」
「あぁあぁ、そうでした!私の種族はノームです!多分、正しくはノーミードとかになるとは思うんですが、分かりやすさを優先したのかと」
「ノーム……っていうと、あの?」
「はいはい、四大精霊とか、大地を司るって言われてるあのノームです」
ノーム。
かつて存在した、錬金術師であり医者のパラケルススが提唱したという精霊だ。
その姿は小さな小人、それも鉱夫のようないでたちで年齢を重ねた男性の様である、とも言われている……のだが。
「どう見ても君の姿的に……」
「分かります分かります。全然『ぽく』ないですよね!」
「ないっていうか、私はスライムの変異種とかそっち系なのかなぁって思ってたくらいだよ?!」
「ふふふふ、これにも立派な理由がありまして。私が持ってるスキルが原因じゃないかってチュートリアルを担当してくれたAIさんが言ってました!」
そう言うとフレデリカは私に1枚のウィンドウを寄越してくる。
そこに書かれていたのは、1つのスキルの詳細だ。
「えぇっと?……【形状変化】、【軟体化】……凄いな、形を変える類のスキルと身体を文字通り柔らかくするスキル……成程?それで君の身体って」
「はいはい!スライムっぽく流動的になっちゃったというか!でも便利なんですよ、この身体!移動する時に音が全然鳴りませんし……ほら!」
フレデリカは自らの手をこちらへと広げた状態で見せてくると同時、両刃剣、槍、ハルバード、槌などの武器に始まり、ハリセン、フライパン、果てはただの網と様々な形状に変え続けてくれる。
【形状変化】は文字通り、対象物を想像した通りに変化させるスキル。
一応、自身の身体も変化対象ではあるが……私の様な元からしっかりと身体が作られているモノが使うと、深刻なダメージを身体に残す可能性が高い。
しかしながら、彼女はそれを【軟体化】によってクリアしているのだ。
無理に変化させたとしても、身体が柔らかく変化させやすいからこそ傷付かない。理屈としては分かると言いたいが、それを実行するかと言われると確実に首を横に振る。そんなビルドなのだ。
「すっごいね、それでしっかりダメージも出せる訳だ」
「出せます出せます。ただ、そのまま刺すとかは出来ないので、身体の中に入り込んで窒息が主になりますね」
「おぉう、思ったよりもしっかりモンスターしてる戦い方だ」
これまでの話し方や雰囲気からあまり感じていなかったが、彼女もしっかりとモンスターだったらしい。





