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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第2章 出会いと始まり編

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Episode8 - 戻ってきてデジャブ


 駆ける。

 背後から迫って来ているソレから距離を取る為に。

 駆ける。

 背負ったモノを逃がす為に。

 駆ける。

 自分が戦い易い場所へと辿り着く為に。


「~~~ッ!私は遺跡に入ったら毎度こうならないといけないのか!?」

「本当に本当に、走れなくてごめんなさい……」

「君に言ったわけじゃないから気にしないで!自分の運を呪ってるだけだからさ!」


 薄暗い、私の持つダンジョンとほぼ同じ景色が続く遺跡の通路の中。

 ゴブリンから逃げていた時とは違い、私はただ1体から逃げていた。

 ちらとその姿を再度確認する。

 巨大な8本の足。身体中にまばらに生えた毛。こちらをはっきりと捉えた赤い4つの目。そして、人程度ならば頭から喰らえるであろう、巨大な口。

 規格外と言っても良い程の大きさの蜘蛛が、私と同行人を喰らう為に凄まじい勢いで迫って来ていた。

……これなら草原探索してた方がまだマシだったかもしれないなぁ……!

 少しばかり前……この遺跡の前へと戻ってきた時の私に会えるならば、その呑気な考えをした頭を一発ぶん殴ってから再度引き返す様に言うだろう。

 何故ならば、


「あそこまで大きいと食欲よりも恐怖が勝るって……!」


 時は私が遺跡の前へと帰ってきた所まで遡る。



―――――



「ふぃー到着。ネズミは……うんうん、居るは居るけどやっぱり遺跡からは出てきてないね」


 草原の入り口から引き返し、私がプレイヤー2人を倒した場所……遺跡の前まで戻ってきた。

 今回は以前の様な警備役が居ない為、侵入する事自体は容易だろう。

……問題は、中がダンジョンだった場合、かな。

 私はまだ、自分自身が持つダンジョン……元『悪鬼の胎巣』以外の遺跡の事を知らない。

 今回見つけたコレがダンジョンなのかも、ただの放棄されただけの建造物かも見分けがつかないのだ。

 油断はしない。前回はある程度やれる所までといって、調子に乗って大量のゴブリンに襲われたのだから。


「ネズミは……よろしく」

「ぁ!」


 配下に入り口近くのネズミの対処を任せ、私は遺跡の中へと軽い足取りで侵入する。

 瞬間、私を取り巻く空気が……雰囲気が変わった事に気が付いた。

 背筋から冷たい刃物を突き付けられているかのような、今すぐにでも何かが襲い掛かってきそうな、そんな感覚。殺意、という奴だろう。


「……うん、ダンジョンだねこれは。私の持ってるダンジョンと内装が全く同じだけど」


 遺跡自体の根本的な造りは何処も同じなのか、見知った通路が奥へと続いている。

 但し、違う所も当然存在していた。


「でも広いな。私が横に5人並んでも余裕があるや、この通路。外から見た時はそんな大きく見えなかったのに……やっぱり空間が歪んでるとかそういう類の設定なんだろうなぁ」


 兎に角、あるもの全てが巨大なのだ。

 通路だけでもリアルの車が通れるくらいには広く、近くに見える扉なんて私1人で開けられるか怪しい程度には巨大。

 扉が朽ちたのか、中が見える様になっている部屋に関しても、巨人が使うのかと思う程に巨大な家具が置かれており。

……嫌な予感がしてきたぞぅ。

 もしもここに棲んでいるモノによって、ダンジョンの大きさが変わるのであれば。

 そう仮定した場合……ここで待ち受けているのは、


「もしかして本当に巨じ――「あのー」――わっひゃぁ!?」


 思考中に突然声を掛けられ、変な声が出てしまう。

 ばくばくと鳴る心臓を抑えつつ、私は声の掛けられた方向へ……背後へと視線を向けてみれば。

 そこには、1人……否、1体の土で出来た人型のモンスターが居た。

 咄嗟に拳を構えたものの、ソレが声を掛けてきた事とそれが意味する事を理解して。


「……もしかしてプレイヤー?」

「そうですそうです!お姉さんもプレイヤーさんですか?」

「あぁ、うん……イヴっていうんだ。こう見えても君と同じモンスター……なんだけど」

「わぁわぁ!モンスターの方だったんだ!私はフレデリカです!よろしくお願いします~!」

「よろしくね……」


 フレデリカと名乗ったモンスター……私と同じ、モンスターアバターのプレイヤー。

 声と名前からして女性だろう。ほぼ全身が土で出来ており、肉らしい部分は見当たらない。

 辛うじて人型だと判断する要素は、私のアバターの様に長い髪と、可愛らしい顔程度のもので、それ以外は今も女性らしい身体付きを作っては流動し姿を変え続けている。

……これ種族なんだ?スライム……じゃないよね。土だし。

 友好的に声を掛けてきた、とは言え。

 一応ある程度の警戒は忘れずに、いつ彼女が攻撃を仕掛けてきても良い様に気を張った。


「えぇっと……君もここを探索してる、って事でいいのかな?」

「はいはい。それで一旦入り口側に戻ってきてみたら……」

「私が居たって訳だ」

「そうなりますそうなります!イヴさんもこれからここの探索を?」

「そうだね。一応見つけたからには探索しておこうと思ってさ」


 ある程度この遺跡を探索しているというフレデリカの話を聞く限り。

 この遺跡に出現するモンスターは、虫由来のモンスターが多いらしく。その大きさも普通の人かそれ以上あるらしい。

 そんなモンスター達が外に出てきていない理由としては、非常に簡単で。


「虫さん達、湿地の泥とかで動けなくなっちゃうみたいなんですよ」

「……あぁー……だから入り口にネズミが集まってたのか。出てきて動けなくなってる虫を食べる為に」

「恐らく恐らく!」


 何とも悲しい現実だろう。

 何にせよ、この遺跡の生息モンスターは理解した。

……話してる限りは敵意はない。んー……丁度良い、かな?

 何やら今日食べたものや、湿地の事を世間話として話しているフレデリカに対して、


「フレデリカちゃん」

「何ですか何ですか?」

「もし良かったら、私と一緒にこの遺跡を攻略してみないかい?」

「ふぇ?……えええ?!」


 パーティでの攻略を提案するのだった。

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